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素敵な温泉宿に出合う。鉛温泉、藤三旅館。

2023年10月21日(土)の日記です。ほぼ毎日書いている日記をnoteに転載しています。他人の日記なんておもしろくはないけれど、自分の生きた足跡です。


午前

10月21日(土)、5時30分起床。夢を見た。 

国立公園のど真ん中。北アルプスの核心に道路やトンネルをつくって、斜面は法面で固めるという大規模な開発に対して立ち向かうという夢。 

なんという夢なのだろう。夢なのか現実なのか。今、南アルプスは塩見岳の直下に穴を空け、時速500キロ!?のリニアモーターカーを走らせようとしている。北アルプスにも何か計画されているのだろうか。正夢にならないことを祈りたい。 

布団が気持ち良くてごろごろ。気づいたら7時30分になってしまった。途中、眠りに落ちてしまっていたようだ。 

宿の大きな窓から見える外は曇り。せっかくなら厳美溪を歩いてみたいけれど、宿でのんびりするのも良い。 

歯を磨き、顔を洗い、朝の準備。その前に筋トレ。腕立てを50回。そして、プロテインを接種。 

8時15分、朝ごはんを食べに行く。バイキング形式。まぁまぁ良い。しつこいけれど「夏油元湯」とは比較にならない。 

8時45分、部屋に戻る。プロテインの残りを飲んだり、読書をしたり、ビオトープのことを考えたり、幸せな時間を過ごす。明日の帰りの新幹線の予約もする。相変わらず混んでいる。グリーン車しか予約とれず。 

9時30分、出発準備。10時、出発。一ノ関駅に今日から合流のメンバーを迎えに行く。そのまま現場へ。 

13時まで現場仕事。途中、大雨。寒い。気温がぐんぐん下がる。どうやら寒波がやってきているらしく、関東でも山の上は初雪が降るそうな。埼玉でも9℃とか。 

雨も激しくなってきたのでお昼にする。道の駅「厳美溪」のレストランでお昼ごはん。ここのレストランは美味しいのだ。本当に美味しいと思う。うどんを食べる。お餅もついてくる。一ノ関といえばお餅。これがまた美味しいのだ。 

午後

雨も小降りになったので14時前には現場に戻り仕事の続き。15時30分まで仕事をする。とにかく外が寒くて、仕事にならない。手先が痺れてくる寒さだ。 

15時40分、今日の宿へ出発。今日は花巻の「鉛温泉 藤三旅館」にした。初めての宿だ。一ノ関からは高速を飛ばして90分くらいだ。 

17時、宿に着く。趣がある。これぞ「趣」という言葉にふさわしい。「鉛温泉 藤三旅館」は開湯600年という歴史を持つ宿らしい。本館は総けやき造りというから圧巻だ。宮沢賢治と親類関係にあったらしく、宮沢賢治の小説に出てくる宿はこの宿なんだとか。田宮虎彦はこの宿に逗留し、小説『銀心中(しろがねしんじゅう)』を書いたという。宿にはまさに「銀の湯(しろがねのゆ)」という名前のお風呂がある。 

小説『銀心中』は映画にもなったそうな。田宮虎彦の名前だけは聞いたことがあったけどまだ読んだことはないのでこれを縁に読んでみたいと思う。 

18時までのんびり。18時「銀の湯」に入る。一言、めちゃくちゃ、気持ち良かった。ここの温泉、シャワーもすべて100%源泉かけ流しらしい。これまで入ったなかで一番気持ち良い温泉といっても過言ではないかもしれない。本当に来て良かった。 

19時、夜ごはん。食事処「灯」というのがまたなんとも良いではないか。どぶろくを飲みながらのご飯。なんとも、なんとも、幸せだった。美味しくて、美味しくて、幸せだった。 

20時30分、部屋に戻る。食べきれず部屋に持ち込んだデザートとどぶろくを楽しむ。デザートはアップルパイでこれもまた美味しかった。

読書。 

老年の師をもった若いでしなれば、いつ死に別れの日がくるか知れたものではないのだよ。そのつもりで師は教え、弟子は学ぶ。もっとも、若い弟子のほうが先へ死ぬこともあるがね。そうなりゃ尚さらのこと死に別れのつもりになって学ばねばならぬのさ。…何も、おそれいることはない。当然なのだよ。師匠が亡くなってから、あれも学びたかった、これも教えてもらいたかったと悔やむなどとは愚かの骨頂というものさ。

池波正太郎『堀部安兵衛』下巻、P296. 

10時45分、「白猿の湯」に入ってきた。往時を偲ぶ佇まいに感動する。深い。140㎝はあるだろうか。深い底からこんこんと湧き出るお湯はいったい何年の歳月を経て地上に現れたのだろうか。先人たちを思い、その変わらぬ姿を、時を、思う。 

とても、とてつもなく、良い湯であった。この先、こんなお湯に廻り逢えるだろうか。きっとまだ知らぬ良い湯があるのだろうけれど、ここ鉛温泉は最高である。 

もの書きなんかには到底なれないけれど、宮沢賢治や田宮虎彦を思うと、なんとなく何か書いてみたくなる。そんな単純な思いを抱かせる素敵な宿だ。 

部屋に戻って布団の上で池波正太郎の『堀部安兵衛』下巻を読んでいたらそのまま眠ってしまった。

1時にはなっていなかったと思う。

【おわり】

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