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読書メモ:実践コミュニティアプローチ

いくつかのコミュニティに参加しているんですが、そのひとつのキャリコン関係の勉強会で「実践 コミュニティアプローチ」という本をお勧めしてもらいました。人事労務にはお役立ちだと思いますのでご紹介します。


コミュニティアプローチとは


コミュニティアプローチは、端的に言うと「コミュニティ心理学的介入」ということだそうです。

言葉だけ聞くと「え、それ何?」っていう感じですが、人事労務担当から見るとおなじみの場面だと思います。

本書によるとシステムとは、「複数の要素から成り立っていて、ひとつの要素に変化が起こるとほかの要素にも影響を与え、次々と多くの要素に影響を及ぼすことにより、結局全体に影響を及ぼすような体系」ということです。コミュニティでは人と環境が相互作用し、人や環境の変化が全体に影響を与えるものであり、つまりシステムそのものである、とのこと。

たとえば会社、そのなかのひとつの部署、チームに属すること、それ自体がひとつのコミュニティに属するということですが、同時に「会社」「部署」「チーム」というシステムの一部になることでもあります。

人は環境と相互作用関係にあるので、特定の個人だけを取り上げて問題解決できるものではないし、かついち個人も生物的、心理的、社会的システムの統合体なので、それらについて理解しないといけない。

つまり、あるチームで何か人間関係トラブルが起きた場合、
「人」だけにフォーカスするのではなく、人と環境とその結びつきを俯瞰して見ることが必要だし、
「人」についても、その人のジェンダーや病気などの生物的側面、態度・信念・個性などの心理的側面、そして家族背景・社会的地位などの社会的側面の相互関係を読み取る必要がある、というものです。

人事労務にとっても介入は怖い


なにか問題があった時に人事が話を聞きに来ると、うわっ嫌だなって思う方は多いのでしょうが、人事労務担当者だって好きで介入してきてるわけじゃありません。

なぜ人間トラブルって無くならないんだろう。
人事労務って本当に対「人」の仕事だわ、と思いながらゴトゴト電車に揺られて該当サイトを訪れ、何人かの社員からヒアリングをするんだけど、どこまで立ち入っていいのかわからなかったりするんです。

人によっては何も話してくれないし、それが本当に何もないのか隠しているのか、ただ自己開示が下手なだけなのかもわからない。

全然聞けてないな・・・と思いつつ、どこまで自己開示を迫らないといけないのか、そこが腕の見せ所かもしれないけれど、人事労務担当もただのヒトの子ですしね。生まれ持ってそれが上手なわけがない。

ただ話を聞いていればいいのか。
傾聴のスキルを活かしたらいいのか。
感情をあらわす言葉を拾うって言ったって、それさえも出てこない人もいる。

そんな人事労務にお役立ちなのが、この本なのです。

実際に使ってみて


私の場合は他人のプライベートに踏みこむことができないタイプ、自分の自己開示ができないタイプのため、労務トラブルの聞き取りは苦手でした。できないわけではないけど、苦手というやつです。

今回、実際のトラブル案件に対応する必要があり、本書を読み込みました。

人と環境は相互作用しているシステムである。
また、人そのものも生物的、心理的、社会的背景が統合され影響しあっているシステムである。

そう、思うとですね。
・・・苦手意識が後退したんですよ。

個人の感想です、って言われればそうですけれども!

でもね、わたし、本当に他人のプライベートを聞けないタイプなんですけど、このヒト=システムの状況を知ろうと思うとできたって言う。

あ、これただ単に私がINTJなだけですか?

図にするとわかりやすい


ほかにもおすすめポイントがあります。
それがエコマップですね。

サービスに何らかの形で関わる、さまざまな人達(ステークホルダー)や物の関係性を図で表すためのシートです。ステークホルダーマップとも言います。

デザインのしたじき

聞き取った内容から、関係者の関係性を図解したものです。
これを作成すると、膨大な聞き取りメモを読み込まなくても関係性が理解できるので、問題解決のための情報共有がしやすくなります。

あとは因果関係の見立てのループ図を、簡単なものでいいから作ってみる。
コミュニティはシステムだと思うからこその視点ですね。

関係者との話し合いで変数について話し合うことができるので、これも有用ですね。ま、あまり凝る必要はないと思いますが、図にすることでパッとみてわかりやすい。

会社の中の人間関係トラブルにこういった方法を使えるというのも眼から鱗だったし、面白いと感じています。

活用できるのは


エコマップなどは、すでに福祉関係で使われているらしく、検索してみると地方自治体の福祉関連の書類がヒットします。
おそらく病院や地方自治体などでは、このツールそのものはすでに使われているのかもしれません。

企業内では断然人事労務向けですね。

大企業なんかだと、昔からこういった理論やツールが取り入れられ、人事トラブルに対する介入記録として、情報シェアや問題解決に使われている可能性がありますね。

そういった組織でも、今現場で働いている人にとっては、ツールは使っていても理論は知らなかったということもあるでしょうから、一度読んでみるといいと思います。

うちみたいな中小企業だと、人事トラブルに関してのスキルや理論などなく、根性で乗り越えてきたところがあります。
この本は、そういったところにこそ向いている本ではないかと思っています。理論と実践を両方、わかりやすく教えてくれて、読んだ日からすぐに役に立ちます。
人事労務必読の書ですね。

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