影咲シオリが創作論を語るってよ 第1回 小説とは何か、何でないのか
【1】創作論とは
創作論、私は主に小説について語るので小説の創作論といい直してもいいでしょう。まず勘違いしてほしくないのは創作論というのは創作ノウハウや創作テクニック、小説の書き方ではないということです。創作論とは、創作とは何かを考えることであり、創作にまつわる概念の整理です。
創作論でまず大事なのは概念の定義です。ただし、これもよくある間違いですが『定義自体が重要だ』という訳ではないのです。必要があれば定義などはその場で変えてしまってもいい。議論をする上で一番大事なのは、お互いの共通認識を確認することなのです。『議論の構造』については専門的な本もいくつも出ているので詳しくは触れませんが、私が創作論に拘るのは、まず議論の前提となる共通認識をキッチリ固めていきたいからだと理解してもらえると嬉しいです(なので、より良いアイデアがあれば取り入れていきたい。ここに書いていることはすべて更新されていくものだと思っていただきたいです)。
【2】小説とは何でないか
(1)小説は報告書ではない
報告書(あるいは新聞の記事)は『事実』をできるだけ正確に読み手に伝えることが目的です。では小説はどうでしょうか。物語の世界で何が起こったのか、それを正確に伝えることが目的でしょうか?違いますね。小説の目的は、作者のテーマを読者に伝えることです(そのために描写を大幅に省略することさえあります)。
小説を書いたことがない人はストーリーを作る事がイコール小説を書くことだと思いがちです。これは大きな間違いです。ストーリーとは小説を書く上の題材でしかないのです。ストーリーをただ緻密に、正確に描くだけでは小説としては未完成です。
ストーリーのどの部分を描くか、どの分量で描くか、どの順番で描くかについては『構成』論として後々語っていきます。
(2)小説はエッセイや評論ではない
エッセイや評論では、端的に作者の主張を述べ、その根拠となる理屈や関連するエピソードなどを綴ります。しかし、小説では、直接テーマが語られることはありません。作者のテーマを伝えることが目的でありながら、直接テーマを言葉にしない、これが小説の特徴です。
小説は、読者にストーリーを追体験させることで、自らテーマを感じ取ってもらう構造になっています。これを「物語の力」と呼びます(私がそう呼んでいるだけですケド)
小説や映画の世界で「言葉で説明してしまうこと」がネガティヴに取られる理由もここにあるでしょう。創作者には、自らのテーマを「物語化」することが求められているのです。そして、「物語化」によってより、テーマへの深い共感やテーマの普遍性を得ることができるのだと思います。
【3】まとめ
・小説とは、読者にストーリーを追体験させることで、作者の伝えたいテーマを感じ取ってもらうものである
・小説で大事なのは、「伝えるのではなく、感じてもらうこと」
小説のテーマについては第2回、第3回で詳しくやりまーす