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ケルヌンノスが来る! アイルランド神話とケルト神話

ケルヌンノス

1 はじめに

画像は、女神転生シリーズのケルヌンノスを引用させていただきました。

今回、ケルヌンノスが話題になったのは、FGO(『Fate/Grand Order』TYPE-MOONによるスマートフォン向けゲーム)第2部6章妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェにおいて、ケルヌンノスが登場したからです。私自身はFGOはプレイしていません。でも、せっかく話題になっているこの機会にちょっと勉強してみましょう!

ケルヌンノスというのは自分にとって印象に残っている神様なのです。日本人の大部分が外国の神様を知るきっかけになったと言って過言ではない『女神転生』シリーズ。私も、ケルヌンノスを知ったのは、『女神転生』シリーズから。ケルヌンノスについてはケルト神話の神様とされています。幼かった私が疑問に思ったのは、このケルヌンノスと、一般的にイコールケルト神話といわれがちな『アイルランド神話』の関係です。ケルヌンノスは大陸側で信仰されてきた古い神様のようでほとんど記録が残っていなようです。『アイルランド神話』には登場しません。

『アイルランド神話』とは、キリスト教伝来以前のアイルランドで信仰されていた神々に関する伝承で、中世以降、文学という形で再構築され、現在に残るものです。ティル・ナ・ノーグ、フィン・マックール、フィアナ騎士団、クー・フーリン、トゥアハ・デ・ダナーンとある程度神話に興味がある方なら聞いたことのある言葉が並びます。

 このように文学として生き残った『アイルランド神話』も、あまり記録が残っていない大陸で信仰された神々、それらがすべて『ケルト神話』で一括りされてきました。

 結論から言うと、どうやら最近の研究で分かったことには、この『アイルランド神話』とケルト神話とは直接的なつながりが無いようなのです。幼かった私が持っていた居心地の悪さのようなものはここで解消されました。

2:ケルトとは

『アイルランド神話』が『ケルト神話』と呼ばれていることについては政治的な要素もあってややこしいようですが、ここでは価値中立的に語っていきたいと思います。つまり『ケルト』だから偉いとか『ケルト』じゃないから価値がないとか、そういうことは無しにしましょうということです(詳しくは第6項を読んでください)。

 まず、ケルトって何と言うことになりますが、厳密さを無視してふわっというと、古代ローマ人が名付けた(ケルタエと呼んだ)、ガリア地域を中心に居住していた鉄製武器を身に付け、馬に引かれた戦車に乗った民族です。ガリア人、ガラティア人などはケルト民族の一部ということになります。

3:ブリテン島のケルト人

 さて、その後古代ケルト民族は、ローマ化し、あるいはゲルマン人の大移動などを経てフランク人などに吸収され、固有性を失いました。その後、ある時期からアイルランド、スコットランド、ウェールズ、あるいはフランスのブルターニュ地方の人々は、ケルト民族の一部であるという認識が定着します。

  ケルト民族の一部が、ブリテン島に渡り定着したのがアイルランド、スコットランド、ウェールズ、あるいはフランスのブルターニュ地方のケルト人だというわけです。

4:大陸のケルトと島のケルト

 ところが、研究が進むとどうやらアイルランド、スコットランド、ウェールズ、あるいはフランスのブルターニュ地方のケルト人と、ガリア地域のケルト民族は色々と文化的に違うところがあることが分かってきました。

そこで、ガリア地域を中心としたケルト民族を大陸のケルト、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、あるいはフランスのブルターニュ地方のケルト民族を島のケルトと呼ぼうと言うことになりました。

5:さらに研究は進んで

 さらに研究が進むと、遺伝子調査の結果、大陸のケルト民族がブリテン島に大規模に渡った事実はなさそうだということが分かりました。またアイルランドやスコットランドのゲール語も、古代ケルト民族の言葉とは独立して発展したものだろうということも分かってきたみたいです。

 もちろん古代ケルト民族と、ブリテン島の人々は文化的な交流をしていましたので、互いに影響を受けていたのは間違いないようです。ただし、神話などについても直接の関連性はなさそうだということ。

 古代ケルト民族の『ドルイド』と、ブリテン島の『ドルイド』も全く別の存在を、似たようなものと考えて混同しているだけらしいとのこと

 つまり古代ケルトと関係がない、古代アイルランド人とでもいうべき人々を島のケルトと呼んでるのではなかろうか?というのが現状です。

6:でも、ケルトがいい

 古代ケルト民族とどうやら関係がなさそうだというアイルランドのケルト神話。だけど改名はなかなか難しそう。

1000年以上、俺たちはケルトの末裔だ!とやってきたのに、今さら無関係でしたってのは当事者としても納得できない。また、『ケルト』という存在の神秘性から生まれる『良イメージ』を捨てるのは勿体ない。そして、『古代ケルト民族』を引き継ぐ集団がもはや存在しないので、反対する集団もいないということもある。

ケルトの名を捨て、例えばヒベルニア(アイルランドの古名)人のヒベルニア神話だと名乗っても、何か本質が変わるわけではないのだけれど。

理屈だけで語れる話ではないので、この話をtwitterなどですると結構揉めるようです。

7:いいわけ

とはいえ私は研究者でも何でもない。ネットで調べた知識を並べただけです。間違っていたら指摘してほしい。優しく。





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