なぜ、日本では左派をリベラルと呼ぶのかについて

1:はじめに 

本稿では、政治的な立場についてはできる限り中立的に、なぜそのような『ことば』が使われているかについて、純粋に説明しています。

リベラルとは、リベラリズムつまり自由主義の意味ですが、日本でリベラルというと左派、福祉国家寄りの政策をとる立場を指します。これが、本来の意味とは逆になっていて直観的には分かりにくい。それはなぜかというと、その名称の定着に政治的な要素が強く影響しているからです。

簡単にいうと、俺こそが自由主義だ、いやお前は真の自由主義者でない。我こそが真の自由主義者だ。といった争いの果てに生まれた言葉なので分かりにくいということです。

2:権力からの自由

歴史的に自由とは、『権力からの自由』を意味しました。ですから、最初の自由主義の敵は王権でした。王党派vs自由主義者。実に分かりやすい構図です。

3:アメリカ便り

フランス大革命以後、ヨーロッパでは革新勢力として、社会主義が支持されました。そこで政治的には保守派vs社会主義という構図になります。

一方で、アメリカでは共和党と民主党の二大政党制が確立していたため、互いが自由主義者を自称する状況になりました。このうち福祉国家寄りの政策(「大きな政府」)を取った民主党が掲げたのが、社会自由主義(「ソーシャル・リベラリズム)です。現在の『リベラル』とは、実際はこの社会自由主義の意味です。

民主党の立場でいえば、古典的自由主義では見捨てられる人々がいる、そういう人々には国家の支援が必要であるという「修正された自由主義」ということになりますし、共和党の立場でいえば、結局それは自由主義の否定である「反自由主義」だということになります。そういうわけで『リベラル』は反自由主義とも修正された自由主義ともいえる、分かりにくい言葉になりました。

共和党支持者は、民主党支持者もリベラリズムという用語を使うので差別化のために自分たちの立場を『ネオ・リベラリズム』(新自由主義)だとか『リバタニアニズム』と呼ぶようになりました。

とはいえ自由主義といった言葉が意味を持ったのはずっと昔のことなので、どの勢力が本来の『自由主義』に近いのかという議論はあまり意味がありません。それぞれの時代で、それぞれの問題が発生しているからです。

4:そして日本

そして、戦後の日本では資本主義vs社会主義の対立軸が中心となりました。しかし、社会主義勢力が支持を失っていくと、イデオロギー対立は魅力を失い、保守派vs高福祉派の対立へと移りました。左派である高福祉派勢力は(脱社会主義イメージ戦略のためもあってか)アメリカの民主党に倣い『リベラル』と名乗るようになります。

5:まとめ

細かい政治思想の違いなどに触れると、複雑になりますが一般の選挙民目線ではこの程度の理解でいいと思います。

こういった『言葉のズレ』ですが、そもそも時代の流れに連れて政治的対立軸の中心が変わっていく中で言葉だけがおいてけぼりになっていることがあると思います。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?