覚えていますか?はじめて友だちができたときのドキドキを。。。絵本『とん ことり』
『とん ことり』 福音館書店
筒井 頼子 作 / 林 明子 絵
こちらは『はじめてのおつかい』『あさえとちいさいいもうと』など、数々の名作を生み出している、林明子さんと筒井頼子さんの絵本です。この作品は初めて読んだのですが、最後のシーンで不覚にも涙が・・・。
絵本ってなんて奥が深い世界なのだろう!と改めて感動した作品です。
『とん ことり』って何?
題名の『とん ことり』。これって何だと思いますか?私がこの絵本に惹かれた一番の理由は、この題名にあります。
『とん ことり』?小鳥?表紙の絵を見ると、女の子がドアを開けているし、小鳥が逃げちゃったお話なのかな?・・・と最初は思っていましたが、読んでみてびっくり!なるほど。お話の中でも重要なキーワードとなっています。
まるで映画のような・・・
この作品のファンが多い理由のひとつは、お話の繊細さにあると思います。筒井頼子さんの文章は、どうしてこんなにも深く優しく、子どもの視点をあらわしているのでしょうか。そこに林明子さんの絵が添えられることで、お話の世界はさらにぐんと深まり、そこにひとつの世界が生まれるのです。非常に繊細な、それでいて力強く、希望に満ちた子どもの世界。
絵本をひらいてお話を進めていくと、不安な気持ちや緊張してドキドキする心臓、安心してホッとしたとき、恥ずかしいとき、嬉しいとき・・・子どもたちの表情や動きが、まるで映画を見ているかのようにいきいきと動き、感情が伝わってくるのが感じられます。絵の細かいところまで、是非じっくりと味わいながら読んでみることをおすすめします。
人は人とつながることを求めている、というシンプルなこと
お話は、主人公の女の子・かなえが見知らぬ町へ引っ越してくるところから始まります。知らない家の中はダンボールの箱ばかり。お父さんもお母さんも忙しく動いていて、なんだか落ち着かない。玄関を開ければ、知らない人が歩いている知らない町。
かなえの表情は、ずっと不安げです。
そんなある日、すてきな出会いが訪れます。。。
最後の場面、かなえとお友だちの笑顔を見ていたら、心の中で優しい涙がこぼれました。
友達をつくること、友達と遊ぶ楽しさ、友達と出会うことの素晴らしさ、心と心が触れた瞬間の、あの輝き。
子どもが主人公なので、子どもの世界のこととして読んでしまいがちですが、私は大人の心にも響くメッセージを感じました。それは、人は、ただ人とつながりたいのだということ。シンプルだけど大切な、希望のようなものを、この絵本から教えてもらえたような気がします。
読み聞かせのポイント
・読み聞かせ時間は約6分半。主人公の女の子が幼稚園児なので、読み聞かせは3歳~4歳くらいからが共感できそう。
・絵本は小さめなので、少人数を対象にした読み聞かせのほうがおすすめ。
・絵をじっくりと味わって!
・女の子が主人公だが、男の子にも響く内容。
・子育てに奮闘しているお母さんにも読んでほしい。
・入園祝いのプレゼントとしても。