Yukionna
柳田國男の「遠野物語」に突然触れたくなったのは
ある厳寒な冬の年の暮れのこと ________
私は「雪女」になりたいと思った
吹雪の中から突如として現れ
純白の着物に翠色の髪
その妖艶な色香で出逢った者を魅了する
魅入られたら最期
身も心も凍えさせ命までをも奪う
そんな女になりたいと思った
お伽話の中の雪女は
凍える息を吹きかけその相手を眠らせて
命を奪う
実際は相手と交わった淫欲の極みに
文字通り昇天させ命を奪う
私は情欲の貪りでしかない行為の顛末を
潔い程に凍りついた眼差しで見届ける雪女に
近づきたい気持ちだったのだと思う
情のしがらみの中でしか生きられない己に
苛立っていたのかもしれない
血が通う温かさが微塵も感じられない
冷酷さの中に
凛とした横顔が見えるような気がしていたから.....
そんな風に何ものにも絆されぬ奔放さが
欲しかった
しかしその一方で
雪女は夫との間に子を儲け
その子達と泣く泣く別れたという話もある
それは私が描いていた雪女とは
あまりにも対照的な赤い血の通う
いたいけなひとりの女性
決して自分にはない揺るぎない冷酷さを持つと
憧れた雪女であったのに
その溢れる母性愛は自分と何ら変わらなかったとは
皮肉なもの
そして「遠野物語」の中には
子ども達と楽しく遊び
断ち切れぬ思いの仕業からか
子どもをそのまま連れ去る雪女が描かれている
真実の雪女は
狂おしいほどの母性を満たした女であることに間違いないらしい
karmaのloopは
決して私を逃そうとはしなかったという
そんなある日のエピソード
小正月の夜または小正月ではなくとも
冬の満月の夜は、雪女が出てきて遊ぶともいふ
童子をあまた引き連れて来るといへり・・・
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