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満ちる


真夏の宵はいつもどこか霞んでいて
秋の空のソレの様に
完全には暗くならなくって


その空に浮かぶ月は
まるで皮を剥いた葡萄の様に
とろんとした甘い黄色で


それを眺める人の心も
甘く甘く滴る蜜の如く
持て余させ 惑わせる





しっかりと意識に上らせなければ
あっという間に逃げて行ってしまう
おぼろな夏は


妖しげで   切なげで




そんな宵を眺める暇などないと
はしゃいで過ぎる夏も一興だけど




暑さともどかしさの混じり合った
寝苦しい空気を身体に纏う真夜中は


月から滴る雫さえも
この身に湛え味わいたいと思う
成熟した女だけが望める 贅沢な宵





そんな 7月の満月




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