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ビーコル2019-20シーズンを勝手に振り返るの巻 ③ ~劇的?ビフォーアフター(選手編の2)~

キヨウケンです。

Bリーグ 横浜ビー・コルセアーズの2019-20シーズンをスタッツから振り返る企画も、残すところ2編となりました(予定)。ざっくりおさらいすると、こんな感じです。

①今季はHC交代を節目にオフェンスが改善。
②サザランド、ベクトン、生原の得点数が向上。この3選手が得点源として機能したと思われる。

そして今回は

③特定選手がアフターで大きくスタッツを伸ばした秘訣は何だったのか。
上記以外の選手スタッツも踏まえ、アフターのビーコルが取った戦い方を検証することはできるのか。

を掘り下げるために、前回取り上げた4選手以外のスタッツを検証します。

【仮説】福田体制での戦い方

本論は「ウィスマン体制に比べ福田体制では戦い方の整理や個々の役割の明確化が進んだことにより、チーム状態が改善された」と仮説して綴ります。
これから取り上げる選手たちのスタッツには、先述の選手のような大きなプログレスは現れません。スタッツを落としたとの見方もあり得ますが、その変化にこそ福田ビーコルのスタイルが映し出されていると捉えています。

福田体制で進められたことは大きく挙げて3つ考えられます。

①選手個々の強みを生かしたタスクの整理
②「チームで点を取る」スタイルの構築
③タイムシェアの推進

これに伴い選手間ではスタッツの浮き沈みが生じましたが、チームとしての戦い方は明確となり、一体感の醸成や更なる成長への期待にも結び付いたのではないでしょうか。
以上の仮説をもとに、先へ進めます。まずは間違いなく今季チームを牽引した2人の選手から。

アキ・チェンバース

移籍1年目のアキ。千葉在籍時よりも出場時間を伸ばし持ち前のタフなプレーを攻守で見せてくれました。とりわけ懸案だった「3番ポジションの守備」問題の解決にチームは救われた感さえあります。そんなアキのスタッツですが、

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アフターで攻撃面の数値が下降しましたが、これこそが福田体制以降の「役割整理」の表れと考えます。ウィスマンの下では、アキへ攻守両面で大きな負荷を掛けていたと捉えます。その期待に応え2桁平均の得点を記録しましたが、同時に相手のエースを封じる仕事は非常にハードだったはずです。
HC交代以降にスタッツを下げた理由とは、攻撃面での荷を軽くしたことにあると考察します。
役割をスペーシングなどサポート的なものにシフトし、スコアリングの役割をサザランド、ベクトン、生原らに比重を預けたという見方はどうでしょうか。そんな中でもシーズン平均で2桁の得点を記録したのは流石代表候補です。アキといえばタフなシチュエーションでのシュートが印象に残りがちですが、その上でこの決定率は感服モノです。
また、平均プレータイムの減少は、よりタイムシェアが徹底された結果と評価します。アキに対するこれら一連の役割整理により、チームで代えの利かないディフェンス力がより発揮しやすい形になったのだと考えます。

田渡凌

在籍3年目にして新キャプテンに就任。橋本と並び新体制を牽引する意欲と覚悟を有言化し、体現してくれ、更にはオフコートでの様々な活躍もありBリーグMIPに選ばれました。ただし、スタッツに関しては下表の通り、おそらく本人にとっても不本意な記録が並んでいます。

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少々意地の悪い抽出になったかもしれません。しかし、それでいて実は全く悲観してません。
彼もまた今シーズンを多くの荷を背負って戦い続けました。昨季からの主力放出や「テラスハウス」出演などのチャレンジに対する彼なりの決意と責任を果たすべく努力していた姿を、今季ビーコルを追いかけていた方は理解されていると思います。そんな中で彼の矜持である「Stay Positive」を貫きチームを前向きにまとめ続けたこと、彼自身もシーズン終盤に本来のプレーを取り戻しつつあったことには、大きな価値があるはずです。
話は変わりますが、はるか昔1986年にJリーグの前身、日本サッカーリーグの日産自動車(現:横浜F・マリノス)所属の木村和司が、国産プロ選手第1号となりました。しかしそのプロ1年目は「プロ選手らしさ」を見せんとの意気込みが過ぎ、トレーニング負荷の掛け過ぎが影響し大スランプに陥りました。「心技体」のバランスを学んだであろう木村氏はその後輝きを取り戻し、やがて2年連続国内タイトルを総ナメするクラブ黄金時代の主力として活躍しました。
そんなエピソードが今シーズンの凌の姿を見てよぎりました。田渡凌にとっての2019-20シーズン、記録の面では納得していないでしょう。それでもいちアスリートとしてのキャリアを思えば、他の誰もが経験しえない貴重な糧を得たシーズンだったのではないでしょうか。彼の前途を期待するばかりです。

2ndユニットの選手たち

キャプテン田渡凌は京都とのプレシーズンマッチ後の挨拶で「今は毎日この仲間のいる体育館に行くのが楽しくて仕方ない」と発しました。
昨シーズンまでは良くも悪くも「川村卓也と海賊たち」のような図式、川村に依存したチームという印象も色濃くありました。今季、この看板選手がチームを去ったことがチームの有り様を大きく変えたのは間違いありません。「全員で戦うチーム」、時間を経るにつれそれぞれが自身の役割に自信を掴み取っていく姿を見てこれたのではと思っています。

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2ndユニットのビフォー→アフターとして全体的に当てはまるのは、プレータイムと積極性の増加だと考えます。
とりわけホール百音アレックス牧全の2選手はプレータイムを大きく伸ばしました。更にはシュートだけでなくリバウンドへの積極性もスタッツに現れています。
エドワード・モリスは「打てる場面で打たない」イメージのある選手でしたが、内外ともにシュート試投数を増やしました。ベクトン、サザランドを休ませる選手として、彼らのいない時間帯のプレーを繋ぐ働きをしてくれたはずです。シュートへの積極性という意味では、小原翼の試投数増加は嬉しい結果です。
竹田謙はスタッツに大きな変化なく、役割としては安定していたと捉えて良いでしょうか。秋山皓太はスタッツ低下が目立つ結果となりました。相手のスカウティングが浸透し洗礼を浴びた一面もあるでしょうが、課題はディフェンスだと感じます。短時間でファウルを重ね、リズムを出せないままベンチに下がることが多かったのは残念でした。彼のシュート力はチームにも大事な武器、来季のステップアップに期待したいです。
ウィリアム・マクドナルドはサザランド、ベクトンのセットが軌道がに乗るにつれて出番が減少しましたが、選手たちのメンターとしてチームの一体化に大きく寄与してくれました。ビーコルライブ(以下リンク)での選手たちの発言を聞くほどに、彼がいたからこのチームが出来たのだと思うに至りました。
そしてスタッツは掲載しませんが、ハンター・コートにも一言。昨年の大怪我から復帰途上の難しいシーズンでした。完全復活し、また元気にコートで活躍する姿を見せて欲しいと願っています。

強化指定選手

シーズン途中に関東大学リーグで活躍した2選手が強化指定選手として加入、チームの貴重な戦力としての活躍を残しました。
赤穂雷太、父親は赤穂真氏(横浜市出身、神奈川の名門・相模工業大学付属高【現:湘南工科大附】最終年度の中心選手)、地元に縁あるプレーヤーの加入は個人的にも嬉しい出来事でした。
そして、わずか9試合の出場ながらも主にアキ・チェンバースの控えとしてプレータイムを勝ち取り、強化指定選手らしからぬスタッツはもとより、大阪戦土壇場でのスティールという記憶に残る大仕事もやってのけました。

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菅原暉は無観客で行われた三河での2試合に出場。短い時間ながら存在感を示し、安定感あるPGとして以降のゲームでの活躍を期待していましたが、残念ながらシーズン終了。もっと見たかったです。

2名ともに特別指定選手の活動終了と退団のリリースが出されました。赤穂は大学4年ですが青学バスケ部は退部との情報もあり、来シーズンはBリーグの選手としてプレーするのでしょうか。

追記:退団した外国人選手

途中退団した2人の外国籍選手にも触れます。2シーズンぶり復帰のジェイソン・ウォッシュバーンと若きジョルジー・ゴロマン(GG)、残念ながら11月17日川崎戦でのプレーを最後に12月5日付で契約解除となりました。

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当時3外国籍選手の組合せはベクトン+GG 4試合/ベクトン+JW 3試合/GG+JW 8試合と流動的でした。
最大の誤算はベクトンの怪我での離脱(11月の6試合は出場ゼロ)ではなかったでしょうか。JWもGGもらしさを発揮してくれました。しかし、両者ともペイントでゴリゴリ勝負するタイプでなく、iPT(ペイント内の得点)ではベクトンに大きく見劣ります。特に彼ら2人のセットでは相手スカウティングの標的になった可能性も否めず、インサイドに軸が置けなかった結果、自ずとペイント外に味方選手が集まりスペーシングに苦慮したことも窺えます。
更にはタイムシェアの不足(敢えてこう書きます)が事態をより難しくしたと考えます。特にJWは出ずっぱりの試合が多く相当な負荷を担っていました。そんな中でJWの古傷(腰痛)が再発し、GGが調子を落とすといった負の連鎖も生じ、チームは再構築を迫られてしまったのだと思われます。
何度でも言いますが持ち味は見せてくれました。もっとチームとして戦い方を整理できていたら、と思う次第です。
その後ベクトンは復調し押しも押されぬ主軸となりました。さらに外からの得点力を持ち、かつインサイドでもタフにプレーできるサザランドと、怪我がちだったベクトンの穴を埋められるウィルが加入したのも、必然だったのかもしれません。

というわけで全選手の検証を終えます。長い内容をお目通しいただき、ありがとうございました。
次回改めて今シーズンを考察し、来るシーズンへの期待を綴って今回のシリーズを締めたいと思います。

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