慢性的な頭痛からおさらばしたいなら(2)

慢性頭痛第二弾です。頸椎性要因と筋緊張性要因について話してみます。

頸椎が歪むから頸部の筋が緊張するのか、それとも筋が緊張するから頸椎に歪みが生じるのか、はたまた脳の筋に対する指令が狂うから、筋緊張にアンバランスが生じ、頸椎に歪みがでるのかとカイロプラクティック業界内でも議論があります。実際のところは、人により様々だと思ってます。足首を捻挫して、下半身に歪みが生じバランスを保つために、代償作用として頚部に彎曲ができる場合は、脳→筋→頸椎でしょうし、落下して頚部に力が加わった場合は、頸椎⇔筋→脳でしょう。ただ、言えることは、頸椎の歪みと頚部の筋のアンバランスな緊張はほぼ同時に生じるということです。統計的な話をすると、頸椎間の結合部(椎間板や椎間関節)の方が、筋より可塑性(力が加わったときに生じる歪を維持する性質、つまり形状記憶作用、粘性が高い物質は可塑性が高く、弾性が強い物質は可塑性が低い)が強いため、頸椎の歪みを減らすことが優先される場合が多くなります。では、本題にはいります。

頸椎は7個の椎骨からなり、上から順位第一頸椎~第七頸椎となり、頸椎間には神経、血管が出入りする孔があり、椎間孔と呼ばれます。第一頸椎と第二頸椎の間にある椎間孔からは第二頚神経(C2)が、第二頸椎と第三頸椎の間にある椎間孔からは第三頚神経(C3)が出ていくことになります。C2とC3は後頭部の皮膚の感覚(痛い、触った、冷たい、温かいなどの感覚)を支配するので、この神経が障害されると神経痛が起きます。ズキッとかピリピリとか表現される痛みです。後頭神経痛と称されるもので、一般的には頭痛とは言われないかもしれませんが、とにかく後頭部に走る痛みです。図は後頭部から耳の後ろあたりの皮膚を支配する頚神経の枝である、大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経です。が、この記事は、論文でも、プロ向けでもないので、後頭部の皮膚は、頸椎の隙間からでる神経に支配されているので、この神経が、脊椎から出てくるあたり(椎間孔)、あるいはその後で、筋を貫くあたり、皮膚を貫くあたりで締め付けられたりすると、痛みが走ると思っていただければ十分です。

後頭神経

上記の神経に無理がかかるということは、頸椎に歪みが出ているということであり、頸部の筋肉には無理な緊張が生じているということです。ざっくり言って、頸部の筋は三層構造です。一番深いところが、後頭下筋群で、この筋は、重い頭を第一、第二頸椎に連結させつつ、狙った動き(頭部回旋とうなずき運動)が、できるような絶妙構造になってます。中間層(頭半棘筋、頭板状筋)は、頭頚部全体の側屈、伸展を安定的に動かせることを目的としています。表層の僧帽筋は、頭頚部から肩甲骨を吊るすことで、肩甲骨の安定した動きを作り出す働きをしています。

頚部の筋


ということで、頸椎の歪みは、頭部、頭頚部、肩甲骨(上肢)の安定した動きにアンバランスをつくり、筋を痛めることの要因になります。頚部の筋を傷めると、頭部に痛みが生じることが知られており(関連痛と言って、傷めたところから離れたところに痛みを出す現象です)、後頭部、頭頂部、こめかみ、目の奥など頭部のありとあらゆるところに痛みを出す可能性があります。図は、先に挙げた3層の筋による関連痛が出やすい部位です。

頚部筋の関連痛部位

後頭下筋群関連痛

また、椎間関節に無理がかかり、炎症が起これば、椎間関節由来の関連痛が生じます。あるいは、椎間板にひずみがかかれば、椎間板の後方に脊髄が存在し、脊髄は硬膜という線維で包まれているので、その硬膜にもストレスがかかります。ですから、硬膜由来の関連痛も生じます。椎間関節や硬膜由来の関連痛は、そこを支配する神経と同レベルの脊髄から出ている神経が支配する皮膚に出現します。というわけで、第一頸椎から第三頸椎の歪みは、頭部に痛みを誘発します。つまり頭痛です。

椎間関節、硬膜支配の末梢神経

まとめ

頸椎の歪みは、頸部の筋に緊張をつくり、頭部に神経痛あるいは関連痛を発生させる。これが慢性頭痛の要因となるわけです。こういう場合は、頸椎の歪みを減らし、必要に応じて筋の緊張あるいは傷害を減少させることで頭痛が解消されるということです。

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