家の鍵を落としただけなのに。
先日、家の鍵を落とした。
たったひとつのモノを失うだけで、あんなに労力と恥を注ぎながらロードオブザリングばりのロードオブザキー3部作を繰り広げなければならないのか、と大きな知見を得たので(ロードオブザリングは観たことない)、ここに記しておきたい。
自慢ではないが、モノをよくなくすタイプの人間ではない。財布だって落としたことがないし、鍵をなくすのも人生で初めての経験である。
小学生の頃、当時命の次に大事にしていたブルーアイズホワイトドラゴンの遊戯王カードが友達との決闘(デュエル)のあとに忽然と消えたが、翌日の決闘(デュエル)の際には友達のデッキに昨日まで居なかったブルーアイズが増えていたので、あれは断じて僕の紛失ではない。誇り高き決闘者(デュエリスト)の端くれとして決して騒ぎ立てることはなく、少年はただ旧龍(旧友的な)の活躍を敵として見守るのみで、容疑を指摘することもなかった。
鍵はリュックサックの、不用心ながらチャックの付いていない横ポケットに入れていた。ただ、簡単に落下するような代物ではない。
何故なら僕の鍵にはカービィーのキーホルダーと、板尾創路(お坊さんver.)のストラップをデカデカとに付けているからだ。その日は仕事で新宿~池袋へと乗り継ぎ、そのまま自宅に帰ってくる行程だった。物質が霧のようにこの世から完全に消失することはない。必ず地球上のどこかに依然変わらず存在しているはずである。
自分の中のリトル井上陽水を叩き起こしつつ、鍵のありかを巡る行動に打って出た。
↑公式から上がっているシュールなティザー映像
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■カバンの中身をあらためる**
まずはリュックサックをひっくり返し、誤って他の部分に入ってないか確認する。底から200円と何かのキャップが出てきた。ない。代わりに200円でサンドイッチを買う。
■警察に届け出る
困ったときは、である。新宿東口の交番で紛失の旨を伝えると、「遺失物受理番号」を取得するため、おじさん巡査から手慣れた様子で質問を受ける。
巡:何か、キーホルダーとかは付いてた?
僕:あの、カービィーのキーホルダーで…
巡:かーびー?
僕:はい、「星のカービィー」っていうピンクの丸いキャラクターで…
巡:(星乃珈琲のイントネーションで)「星のカービー」(書類にメモをする)
僕:あと、板尾…お坊さんのストラップが付いてて…
巡:お坊さん?お寺の?
僕:はい。(見つかりそうにないな)
番号が発行され、連絡先を伝える。都内どこで拾われても、共通でこの番号を基にデータ照合してくれるらしい。期待は薄いが、まずは手続きしておいて損はないだろう。
■その日通った道/店を回る
小田急で新宿に向かったあと、新宿のフラッグスに入り、蕎麦屋で昼食を食べ、セブンイレブンに寄り、池袋の得意先へと移動。いずれも店員さんに声をかけ、前日に拾得物がなかったかを尋ねる。セブンではベトナム風の外国人店員さんが対応してくれた。
外:ドンナ鍵デスカ?
僕:あの、カービィーのキーホルダーで…
外:カービー?
僕:ピンクの丸いキャラクターで、お坊さんのストラップが付いてまして…
外:ピンク…マルイ…ボンサン…(落とし物BOXの中を探す)
僕:ありがとうございます。(見つかりそうにないな)
お忙しいところ大変ご迷惑をお掛けするのみである。申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつ、得意先にも確認したが、結局どこにもそれらしき鍵は届けられてなかった。
■Twitterでエゴサーチをする
僕は知っている、日夜SNSでは嘘みたいな奇跡が起きまくりあげていることを。
いつ「カービィーのキーホルダーと板尾創路のストラップが付いた鍵を新宿で拾いました。 ** #拡散希望 **」なんてツイートが2万RTされていてもおかしくない世の中だ。SNSのチカラは計り知れない。
1時間おきにエゴサーチ包囲網を掛けるも、ヒットするのは“キャップを被った板尾創路の目撃談 in新宿”と”「カービィーのエアライド」再評価の声”のみ。
それでも諦めきれず、藁にも縋る思いでカービィーと板尾の最新情報を検索し続けるのであった…。
↑めちゃプレミア価格になってる…!
■ここで大きな過ちに気付く
なんと、カービィの正式名称は「カービィー」でも「カービー」でもなく、「カービィ」だったらしい。おじさん巡査をバカにできない、僕はカービィについて何も知らないに等しかったのだ。しかも2つも年下やんけあいつ。
無駄なエゴサーチに時間を費やしてしまった。万策は尽きた。
いよいよもう、鍵を締めることなくオープンザドア状態でステイホームしよう…。
家を出なければそもそも鍵は要らないのだ…ネクライノーキー(No Key)…などと独り言ち、諦めの色を見せた頃、得意先から「鍵が見つかった」と連絡が来た。ほんとありがとうございます各所すみませんでした。