流
天気や季節によって、雲の流れる速さが変動するように。
環境の変化によって、気持ちの芯がブレてしまうように。
日々、生きるってこういうことだな、と
全てを知ったかのように悟ったフリをする。
会社を辞めた。
新卒で入り、たった7ヶ月で。
たった、というのは、あくまでも世間から見た数字として考えたら、前につく言葉として妥当だと思いつけているだけであって、私からしたら、7ヶ月も、と言いたくなる。
何がしたいんだ、自分は。
みんなは、何のために生きているんだろう。
どんな目標を持って、どうやって生きているんだろう。頑張っているんだろう。
正直、自分というものを、人間というものを見失いかけている。
真正面から自分を見ることが怖くて、いつも目を逸らしている。
どうしてこの会社に入ったの?
ここで何を頑張りたいの?
ここでの目標は?そのために実行すべきことは?
次はどんなことがしたいの?
どんな人生設計を立てているの?
きっと、全ての問いにちゃんと丁寧に答えられる。
でも、答えたものが、本当に合っているのかは分からない。
自分の頭で考えて、自分の口から発した言葉だとしても、それは一体誰の言葉だろう、と考えてしまう。
本当の本当にしたいこと、夢見ていることは
ある。確かにある。芯として心の真ん中にずっと居座っている。
でも、それに近づくためには何をしたらいいのか、ほんの少しずつ歩んではいるつもりではいるけれど、正しい道なのかどうかは分からない。
会社を辞めたいと上司に伝えたとき、言われた言葉が未だに記憶の大部分を占めている。
「親は自分よりも早く死んじゃうよ。いつまでも頼っていないで、ひとりでも生きていかないといけないんだよ」
怒るでもなく諭すでもなく、ただそこにある事実として、上司は私にそう言った。
うん、うん、分かってる。その通りだよ。
もう社会人になったのだから、ひとりでも生きていけるように毎日を必死になって生きていかなきゃいけない。
上司の言っていることは正しい。何も間違っていない。
幸せなことに私の親は、うるさいくらい元気で健全で、今でも「やりたいことをやったらいい」と言ってくれる。
恵まれている環境だ、と自分でも強く思う。
あっという間に学生生活が終わって、気づいたら社会に出ていて、急に親を頼らず生きていかないとって、ん〜めちゃくちゃ難しいな。
ひとりでも生きていけるような仕事をしなさい、ってことだと思う。
上司にもやりたい仕事(仕事としてやりたいことなのかすら定まっていない)があるので、と濁して伝えた。
だから、やりたいことをやりたいなんて甘ったるいこと言ってる場合なの?大丈夫なの?って心配と軽蔑と嫉妬が入り混じったような、そんな声で、私に言ったんだと思う。
私は、ひねくれ者で、世の中を達観し、さも自分は他の人とは違うんだ、なんて時々思っちゃう痛いやつだから、
親がピンピンしてて、まだ甘えられるこの瞬間にやりたいことかもしれないことを必死になってやってみる、それが私に与えられた環境と人生だと思う、と上司の話を聞きながら考えていた。
ごめんね、上司。
嫌いとか、そんなんじゃないよ。
むしろ感謝でいっぱいだよ。
これは完全に私の我儘。
まだまだ子どもである私の抗い。
今までは、いいこ、でいたから。
ちゃんと決められたレールの上を、寄り道せずに走ってきたから。
いいな〜ってチラ見しながら、それでも走ることをやめずにやってきたから。
ここでちょっとだけ、自分勝手な行動させて。
何も結果にならないかもしれない。
結局、無駄だったじゃん、ってなるかもしれない。
でもそれも私の人生だよね、って誰も責めたりしないから。
私なりに、私の人生を生きてみる。
どうせ、時間も雲も流れていくのだから。
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