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#12 ショートショートらしきもの「事故」


カズキはいいやつだった。


キャンプ場に高く積まれた薪が崩れてその下敷きになった。すぐに病院へ搬送された。


カズキはいいやつだった。



面倒な事を自らやってくれていた。
あの時も焚き火用の薪を取りに行ってくれた。
キャンプ場の受付で入場料の支払いをする時に。


カズキはいいやつだった。


誰にでもフランクに接していた。
初めていく居酒屋の店員にも「とりあえず生。早く持ってきて。」と。


カズキはいいやつだった。


空気を読むのがうまかった。
キャンプの集合時間に2時間遅刻してきて第一声、「タバコ行ってくるわ。」と喫煙所に消えて行った。


カズキはいいやつだった。


みんなの好みを把握していた。
遅刻してきたお詫びにとパティスリージュールの少し高いシュークリームを6個持ってきた。待っていた4人はひとつずつ幸せを頬張った。


カズキはいいやつだった。


職場では頼られていたらしい。
「あいつら俺がいないと何もできないからなー。」と言って、大学を中退してから約10年働いているバイト先のコンビニの話をよくしていた。


カズキはいいやつだった。


とにかく揉め事が嫌いだった。
キャンプの買い出しで1人2000円ずつ出して買い物をしたお釣り、648円を何も言わずに、財布にしまっていた。


カズキはいいやつだった。


場を盛り上げるのがうまかった。
キャンプ場に向かう車内でアルコール度数の高いお酒を一気飲みしていた。運転する順番が自然と決まった。


カズキはいいやつだった。


身体が丈夫だった。
たくさんの薪に下敷きにされても2日後には意識がもどっていた。


カズキはいいやつだった。


運がとにかく良かった。
薪に下敷きにされていなければ、その日の夜に崖から落とされていた。

〜おわり〜

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