さよなら、自意識

 以前住んでた街で、知人が営んでいるスナックへ行こうとしたが、定休日であった。ついさっきまで目と鼻の先で上司と飲んでいたのだった。彼は、ボーナスが減額になったとポツリと呟いていた。彼の3分の1も働いていない私は微々たる増額しており、それについてかすかに不満を抱いていたのだが、彼の前では不満も昇給も飲み込んだ。酷く呑んだくれたい気分だったが、禁煙してた煙草に火をつけ、深く吸い込む事で気を落ち着けた。家族には内緒だ。

こんな少しのタイミングの悪さで不幸ぶる私を、10年前にこの街で住んでいた20そこそこの自分はどう思うのだろうか。仕事だけでなく、その他条件が幸福になるように整えられているように思う時、逃げたくなり、酷く酩酊したくなる私をどう思うのか。ここからは、選択し努力し継続しなければならない。幸福なのだが、逃げ出したくなる瞬間がある。

ふと、思いついた知人達の声を聞きたくなり電話しようとしたが、思いとどまり自宅へ向かう。
自慢だが、私は都会で生まれ育った。親族もだいたい近所に住んでいたので、そこで住む以外の生活を知らない。今は郊外のベットタウンと呼ばれる地区に住んでいる。地元での日々とは違う、平穏だけど刺激が無い日々。

悪趣味だが、悲しい結末を迎えた、あの子やあの人やあいつの足跡を辿ってしまう。何のためかはわからないけれど。私の知らない地獄の底を覗いてみたくなる。とても悪趣味だ。

これは、酔っ払いの戯言だ。どこにも言えないから書いてみた。
コンビニで好きなアイスを買ってお家に帰ろう。



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