見出し画像

しおれてしぼんだ

生気を全くなくした
土気色の顔の母が
「火にかけてたのを忘れた」と
仕事から帰ってきた私に
助けを求めるように言いに来た

母は鍋だか、やかんを火にかけて
そのまま忘れてしまったようで
部屋がちょっと焦げ臭かった

そのことを一緒に家にいた父に
ひどく叱られでもしたのか
母の顔は生気を吸い取られて
すっかりしおれて、しぼんで
ぼそぼそと吐くことばも弱々しい

母のこんな姿は
初めて見た

というか
今までこんな無防備な
弱さをさらけ出すような姿は
自身の子供である私には
親としての立場からは
見せられなかったのだろう

私の横で、力なく
テーブルに両手をつき身体を支えて
立ちすくんでいる母を

私は、大丈夫だから心配はいらないと
幼い子供にするように優しく慰めて
母をベッドに連れて行き
寝かしつけた

いいなと思ったら応援しよう!