眉間のしわ
認知症の母は
時々眉間にしわを寄せ
口を一文字にして
うつむき加減に
難しそうな
寂しそうな
困ったような顔をすることがあった
認知症の母のそんな表情は
深刻さを感じさせるものではなく
まるで小さな子供が何かに悩んでいるようで
母が眉間にしわを寄せているのにか気がつくと
あらあらまたこの顔をしてるなと思いながら
時々、どうしたの?と
尋ねてみることもあったが
私がたずねても
母は何も言わず
ただうなずくだけのことが多かった
母が何を思っていたのか
認知症の母が心の中のどんな世界で
何を悩んでいるのかは
分からなかったが
認知症で理性や虚栄心が薄れ
感情そのままのような
純粋さを感じさせるような表情が現れると
いつもその空気感に
ひきこまれて
いつのまにか
ほんわかとした
あたたかい気持ちになっていた