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#800字小説『最後の私の日』/私の日【#シロクマ文芸部】

小牧幸助(シロクマ文芸部・部長)さんの
「私の日」から始まる小説・詩歌を書く企画に初参加

※詳細は本文後に記載

#800字小説 3分程度で読了可能超短編小説ですので、
ぜひご一読ください。

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『最後の私の日』


「私の日! 今日だけは私の日だから」……口から出そうだった言葉を慌てて飲み込んだ。
 弟はよだれをダラダラ垂らしながら、ママにすがりついている。
いつでも抱っこしてもらえるんだから、今日ぐらいは遠慮してほしい。

 久しぶりのママと二人きりのおでかけに、ウキウキしていた。
三人ででかければ、「ごめん、少し待っててね」の連続だから。
弟のオムツ替えや授乳の度に、私はベビールーム脇のベンチで待たされる。
時々「ちょっとお願い!」と呼ばれることがあるから、すぐにお手伝いができるように。
数歩先にかわいいお店があるけど、勝手にお洋服を見に行ったりしない。

「さすがお姉ちゃん!」
「立派な小さなママだね」
 パパやばあばはよく私を褒めるけど、うれしくない。
たまに手伝う人達が、いつも手伝っている私のご機嫌とりに言っているだけに聞こえて。

「パパ達には内緒ね」
 買い物の後、ママとおしゃれなカフェに入った。
普段はファミレスばかりだからちょっとドキドキしたけど、ワクワクした。

「女子会みたいだね」
 フフフと笑うママも、いつものママの顔と違っていた。
隣の席のお姉さん達が食べている、デコレーションされたかわいいスイーツに胸が躍って、似たような物を注文した。
ママも、弟がいると頼めないホットコーヒーをゆっくり味わっている。
「ねぇ、これからもたまには私の日を作ってよ」今なら言えそうかな……とタイミングを見計らっている。
ママが大変なことは私が一番わかっているから、今までわがままを言わないようにしてきたんだ。

「こればっかりは、パパには頼めないからね」
 今日買ってくれたのは、生理用ショーツやスポーツブラだった。
小学校で男子と女子に別れて、【大人になるための準備の授業】をした後だったから。

「こんなに成長したのね……今後は女同士の会話もできるわね」
 これからますます「私の日」がなくなることを察した。
大人ぶって頼んだピスタチオジェラートは、変な味がした。


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#シロクマ文芸部 /7/6発表・7/9〆切のお題
「私の日」から始まる超短編小説(800字小説)でした。

文字数:800字(空白・改行を除く文字数)

◆小牧幸助(シロクマ文芸部・部長)さんの企画に
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