#9【最後のお散歩デート:1】

朝、5時に飛び起きて
家から自転車で5分のファミレスで
朝食バイト(6:00~9:30)

バイト先から、直接次のバイト先へ
データ打ち込みの事務バイト
(10:00~13:00)

一旦自宅に帰る。
1人家で待つ祖母と、
2人でお昼ご飯を食べる。
この間に家事を終わらせておく。
(13:00~16:00)

妹の帰宅と交代で、
次のバイト先へ。
曜日によって違ったが、
塾講師バイトか居酒屋でバイト。
(17:00~23,24:00ごろまで)
  
帰宅、食事、風呂。
翌日また6時からバイト。
 
 
基本的には、この生活リズムだった。
 
 
今思い返せば、とてつもない体力だったと思う。
 
 
ある日、祖母が
「ちなつ、今日ええ天気やなぁ」
 
 
と、外を見て言った。
 
 
もう、胃が受け付けなくて、
食べられるものは決まっていたので
医者に勧められた
にゅう麺を作っていたところだった。
 
 
「うん、今日めっちゃええ天気やで、
雲もないし、あったかいし」
 
「そうかぁ、、、ええなあ」
 
 
おばあちゃんはにゅう麺を、
私はにゅう麺の残りと、昨晩の残りを食べながら
あと2時間で終わらせないといけない
家事のための時間配分を考えていた。
 
 
もう、その頃は祖母は、
階段を上ることができなくなっていた。
 
 
祖母がきて、まだ1週間。
 
 
まだ祖母が来た生活にも慣れていないのに
できないことが増えていた。
 
 
私は、焦っていた。
祖母の体を蝕むガンに、
祖母が取られてしまう前に
心ゆくまで祖母との時間を過ごせるか
 
 
その時点では、ガンの方が
私より2、3キロ先を走っていた。
 
 
その日の用事の1つに、
郵便局で振り込みがあった。
 
 
郵便局までは、私の足でゆっくり歩いて5分だ。
 
 
母にLINEを入れた。
 
 
「お母さん、ごめん!
洗濯と洗い物と掃除、今日無理!
おばあちゃんと郵便局行ってくる!」
 
 
私はずるい。
 
 
その時間にLINEを入れても
母は気づかないのをわかっていて
LINEをした。
 
 
気付いた時にはもう私がバイトに行っている。
完全犯罪だ。
 
 
「おばあちゃん、振り込みせなあかんねんけど、
一緒に歩かへん?私の足で徒歩5分!」
 
「行く!!!!!」
 
 
外に出る気配を感じて
お散歩大好きな犬が反応していたが
おやつで釣ってケージに入れ、
祖母の着替えを手伝い、
どれだけ時間がかかるか
予想ができないので、
水筒にお茶を入れ、
飴玉とチョコレートを忍ばせ、
 
 
おばあちゃんとの最期の
お散歩デートに出かけた。

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