社内でAIやChatGPTについての勉強会をしてきました。
こんにちは。3月末に社内でAIやChatGPTについての勉強会をしてきたので、その内容を記事にしてみます。
発端は経営層から「最近 ChatGPT とか AI とか出てきてすごいことはわかるんだけど、何ができるのかわからないから解説してほしい」とのお達しがあり、社内に対して勉強会を開くこととなりました。
経営層やビジネスサイドの人たちをターゲットにしているため、技術的な説明はだいぶ端折っていることを事前にお断りしておきます。
AI とは?
ChatGPT や画像生成AI などのAI製品が立て続けに出てきたこともあり、なんだか AI という言葉が具体的な形を持っているものとして取り扱われることが増えたと感じています。
しかし、AI というのは分野の名称であって特定の技術を指す言葉ではないので、「AIを使ってなにかいい感じのもの作れないかな?」みたいなことを言われて困惑したITエンジニアも少なくないのではないでしょうか。
15年くらい前にクラウドが出てきたときも「これからはクラウドだ」みたいな具体的なことは何も言っていないやつがありましたが、そのときと似たバズワードになっている感は否めません。
もちろん、今のAIの進化は凄まじいものがあり、自分たちのビジネスに AI が活かせるのであれば AI を活用しなければ生き残れないと言って差し支えがなく、そういう意味で経営層が「AI を活用せよ!」と号令をかけるのは正しいムーブです。
だからこそ、今盛り上がっている AI がなんなのか、それで何ができるのかの認識を揃え、AI という大きな主語のまま扱わないようにすることが大事だと考えています。
AI の歴史
AI がひとつの分野であるとお伝えしたところで、AIの歴史の話です。余談ですが、このスライドを作ってるときが一番楽しかったです。
1940〜1950年代
1943〜1956年に人工知能の可能性が議論され、学問分野として確立されます。時代背景としては1949年に今のコンピューターと同じ仕組みであるノイマン型コンピューターが開発されています。
第1次AIブーム
AIが学問分野として確立された後、第1次AIブームが1970年半ばまで続きますが、当時の AI 研究は人工知能というよりも「アルゴリズム」や「プログラム言語」といった表現の方が適切なように思います。
それまではコンピューターがなかったわけで(自動算盤などの計算機はありましたが…)現代に続くアルゴリズムやプログラム言語はこの頃に生まれています。
一方で、現実社会の複雑な問題を解くにはこの頃の AI では難しいということも判明し、1970年代後半になると AI は冬の時代を迎えます。
第2次AIブーム、エキスパートシステムの時代
1980年代に入りエキスパートシステムが登場したことによって、AI は2回目のブームを迎えます。
エキスパートシステムとは、「もしAならばBである」といった知識を大量にコンピューターに与えることで、専門家に相談しているかのように回答を得られる仕組みです。
後述しますが、エキスパートシステムは今流行っている ChatGPT とは全く異なった技術となっています。
おそらく今40代以上の方は、第2次AIブームに何かしらの形で触れていると思いますが、「昔流行ったあの AI がもっと進化して帰ってきた」という感覚で ChatGPT などを見ているとしたら、まずそこから理解していく必要があります。全く違うものなので、エキスパートシステムならできたことが今流行ってる AI だと苦手だったりすることがあります。
誰もがコンピューターを扱える時代へ
第2次AIブームと並行して、パーソナルコンピューターが発売され、世界初のGUI OS であるマッキントシュが登場し(それまでのコンピューターは黒い画面に白い文字だけが出るやつでした)、インターネットが一般の人も使えるようになり…
それまで研究者や一部のコンピューターオタクのものだったコンピューターが一気に市民権を得るようになります。
一方で、研究分野としての AI は長い冬の時代を迎えました。エキスパートシステムは局所的な専門領域での問題を解くことはできましたが、広く現実社会の問題を解くにはコンピューターに知識を教える手間も、コンピューターそのもののスペックも足りていませんでした。
AI が長い冬を迎えている間に、コンピューターのスペックやインターネット環境などが凄まじい勢いで進化していきます。
第3次AIブーム、機械学習の時代
ここまで2000字ほど書いてきましたが、ようやく現代の話になります。
今のAIブームは2000年代中頃から始まりました。機械学習の登場です。
今流行っている ChatGPT だったり画像生成AI などの AI 技術は大雑把に言えばどれも機械学習によってできています。
機械学習には大量のデータとそれを扱えるコンピューターが必要ということもあり、コンピューターのスペックの向上、データ保存ストレージの拡大、そして大量のデータを収集できるインターネット環境の整備といったものが揃ってようやく実現することができたと言っていいでしょう。
なお、AIの進化の評価指標としてゲームAIの精度が扱われたりするのですが、オセロ・チェスには1997年に人間の世界王者に勝利していますが、将棋・囲碁で人間のトッププロに勝利したのは第3次AIブームの後だったりします。
エキスパートシステムと機械学習
AIの歴史のところではさらっと流しましたが、エキスパートシステムと機械学習について改めて説明していきます。
エキスパートシステムとは
エキスパートシステムについては活用事例を挙げた方がおそらくイメージしやすいかと思います。活用事例としては下記のようなものが挙げられます。
自動音声応答装置
医療診断
対話型マニュアルなどでの意思決定支援
レコメンドエンジン
エキスパートシステムは専門家の知識をルール化しなければなりませんが、知識を定式化したり、定式化したルール間での矛盾が発生するなどの欠点もありました。
人間の行動原理・判断基準を論理的に破綻しないように言語化するのはものすごく難しかったということですね。
機械学習とは
機械学習はエキスパートシステムのように人間が知識を与えるのではなく、コンピューターが勝手に知識を学んでいきます。
と言うとなかなかピンとこないかと思いますが、イメージとしては人間の赤ちゃんが言葉を覚えていく過程に近いです。
エキスパートシステムと機械学習の違い
ChatGPTについて
ようやくChatGPTの話です。もともとの経営層のオーダーとしては「ChatGPTで何ができるのか知りたい」ということだったので、ここまでの話は長い前置きみたいになってますが、社内勉強会から1ヶ月ほど経ってみて、AI について話しておいて知識を揃えられたのは良かったなぁと思っています。
ちなみに ChatGPT についてはリアルタイムでめちゃくちゃ話題になっているので、それをしっかり追っている人はこの先読まなくて大丈夫です。
ChatGPTの仕組み
ChatGPT は大規模言語モデルというもので、超ざっくり言うと
「入力したテキストの続きを予測するシステム」
です。
あくまで確率的に次に続きそうな単語を出力しているに過ぎないところがポイントで、以下のような特徴があります。
論理的に正しい答えを返すわけではない
嘘をつく、知ったかぶりをする
性別・人種など、社会に存在するバイアスを学習してしまっている可能性
こちらが入力した文章に存在する隠れた前提を鵜呑みにしてしまう
このあたりは下記の記事が勉強会の資料を作っているときタイムリーに参考になりました。
ChatGPTができること・苦手なこと
ようやく本題になりましたが、ChatGPT で何ができるのかは ChatGPT に聞くと答えてくれます。
これだけだとあんまりな感じはしますが、よくまとまっていますね。
強いて言えば、翻訳は自然言語だけでなくプログラム言語も扱えたりしますし、会話についてもロールを設定することでよりそれらしい会話ができたりします。
一方で、ChatGPT はあくまでアシスタントとして使うべきであり、自分の専門外の領域のタスクを ChatGPT に任せるのは真偽が確認できないという点で危険でもあります。
ChatGPT の利用規約でも、法律・政治活動・医療行為などに専門家のチェックなしでの利用を禁止していたりしますね。
さいごに
社内勉強会をやってからの1ヶ月でもAI界隈は色々出てきていてめまぐるしいですね。個人的にも GitHub Copilot を使ってみて改めて AI の凄さを感じています。
個人的にはエンジニアなどの専門職の仕事が即座になくなることはないと思ってますが、必要とされる頭数は減る可能性がありそうですね。
ITエンジニアに関しては開発環境の進化やらフレームワークやらクラウドやらで生産性はずっと右肩上がりなのに人手不足も一向に解消されないので全然変わらないだろうなとは思ってますが…。
どちらかというと、これから専門職に就こうとしている人たちのキャリアラダーがどうなっていくのかに関心があります。駆け出しエンジニアより ChatGPT の方が優秀なので、若手にどうやってキャリアを積ませるのかが課題になりそうです。
あとは、スタートアップとかで非エンジニアが AI を使ってプロダクトを作るとか流行りそうですよね。初期プロダクトをノーコードで、というのはもうあるので、さらに一歩進んで AI に作らせるのはありそう。AI が作ったプロダクトをリプレイスする案件とかすごくやりたくない。