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速記形式───譜面の話



私の創作は1次2次問わず全部共通なのだけど、唐突に頭の中で完成品が脳内放送始めたものを1つずつ発掘し分析して拾い上げながら、現実世界でも同じ質量になるように形にしていく、いわゆる『下りてきた』『降ってきた』と言われるタイプだ。
ただし記録として残せない、録画して撮っておけない鬼仕様なので、この脳内放送について都度何かしら記録が残せなかったらそれで終わりになる。
2度と再現できない一期一会状態が常である。

しかも「完成品」なので、降ってきたのが歌モノだったりすると歌詞とメロディー両方を書き残せなければアウトになってしまう。
現実世界では終に形になることはなくなるのだ。

元々私は詞先か曲先かと問われると少し返答に困るやつで、あえて言うならばおそらく詞先の方になる。
私の中では基本、歌詞とメロディーは同時に降ってくるものなのでそれ以外のパターンがそもそも珍しいことなのだ。
詞先でも曲先でも一応はまあうん、できなくはない。
できなくはないのだけれど、自分からやるのはあまり気が進まないのはたしかだ。


話が逸れた。
先述の通り、私の創作は常に脳内放送をどれだけその場で書き取れるかの1発勝負なので、歌詞とメロディーラインを同時進行のまま追いかけなければいけない。
完成品の脳内放送はどれだけ訴えても待ってはくれない。
ついていけずに手が追っ付けなければそれまでである。
ただでさえ私は書くのが結構遅いので、きちきちっと書いていたら脳内放送に追いつくことなどまずできない。

最初はちゃんと五線譜に書いていた、と思う。
うん、多分、そのはず…。
歌詞も同じく五線譜に、音符に沿って書いていた。
ただまあ、想像するまでもなく音符書いてる間にすぐ置いてかれた。

そのうち五線譜は清書に回して、ノートに歌詞と一緒に書くようになった。
歌詞を左半分に、音階を右半分に。
この頃はド↑とかファ#とか、音名をカナ表記で写していたのだけど、それでもやっぱり追いつくにはちょっと速度が足りなかった。

それから音名をアルファベットで書くようになった。
C↑とかF#とか、高さと黒鍵の表現はそのままで。
ようやくまだ追っかけていられる状態まできたけれど、今度はめちゃくちゃ表記の場所を取るようになった。
歌詞は基本日本語なので圧縮可能だけど、それをしても同じ行内に収まらなくなりとても見づらくなってしまった。
困ってる間に脳内放送に置いてかれた。

そうして10年ほどかけて試行錯誤した結果、高低や長さの概念は表記から切り捨てて、

GCDeDC GCDeDC GGGFFFeFDeDb

という、五線譜なしでも#や♭表示なしでも書き殴れる今の楽譜のメモり方が爆誕した。
現在は歌詞の右側に( )で続けて書きつけている。
パソコンで書き殴る場合は歌詞は全角、メロディーラインは半角である。
こうしてどうにか書き殴った末にできあがったページを見た方から、これは一体なんの暗号かと言われることが非常に多いのだけど、構成としてはとっても簡単なものでして。

ピアノの鍵盤を眺めてみてほしい。

大文字で書いてあるところ=白鍵
小文字で書かれているところ=黒鍵

なだけである。
なので上述のメロディーをカタカナに直すと

ソドレミ♭レド ソドレミ♭レド ソソソファファファミ♭ファレミ♭レシ♭

になる。(※キーはCmです)


この記譜法に辿り着いたことで、私は自分の脳内放送をどうにか追っかけていられるケースがだいぶ増えた。
#か ♭かに迷うことも、同じ行内に収まらなくて困ることも、どちらもごそっと減ったからである。
ただただ脳内放送追っかけながら書き写していくことだけに集中できるようになった。
それでもやっぱり置いてかれることはままあるけども。
メモを取れなかったらそれで終わりなので。
脳内放送は私自身のTPOなど知ったことかといわんばかりに授業中だろうが仕事中だろうが構わず本当に突然降ってきて始まり勝手に去っていくので、100均時代はレシートの裏に、ホール接客時代はポケットにメモ帳を1つ余分に常備して書き起こしていた。



ところでこの大文字小文字の混入する記譜法、てっきり音楽齧った方ならすぐ通じると思ってたし、なんならこの書き方自体私が知らなかっただけで既に使い古されてるものだと思ってたというのに、今のとこ使ってる方と出会えたことが1度もない。
なんで???
嘘でしょ?????
この形に辿り着いてもうかれこれ10年は経っているはずなのだけれど……知り合った音関係の方には見せる度に結構びっくりされる。
長年私と音のやりとりをしている方からは、ありがたいことに見慣れてきたやらだんだん分かるようになってきたやらほっとするコメントを戴くけれど、最初から読めた方はまだいない。
仕組みを説明して「ああ、なるほど!」と返ってきたのが最短である。
まさか私が開発した、なんてことはないはずなのだけれど。


誰か同じメモ表記してる方いませんか。
発想自体は単純なので、私以外にもやってる方がいると信じたい。

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