追悼:楳図かずお先生〜感謝を込めて
はじめに
昨日、SNSで、敬愛する楳図かずお先生の訃報を知った。私は天邪鬼なほうで、普段あまり「ニュースに乗っかる」みたいなことをしない。が、そうではなく、純粋に「書いてみたい」と思ったので、そうさせて頂きたい。
※ 「乗っかる」というちょっと意地悪な表現は、昨今、「バズる」目的であればなりふり構わない風潮が気になっているから。あるnoterさんが「障害年金をライフハック呼ばわりしないで」って書いておられ、強く共感したのもある。
ギョエー!恐怖の出会い
今でこそ、グロ耐性が付いてしまっているが、幼い頃から私は小心者でビビリだった。書いてて、数十年前のことをありありと思い出すので、それほどインパクトあったってことですね。
私には姉と、幼馴染の姉妹がおり、皆で楽しく遊んでいた。たしか幼馴染の姉さん側が、特に漫画好きで、ついでに言うと音楽も好きで「おませさん」だった気がする。うろ覚えだが、幼馴染が引っ越した後に遊びに行った時だろう。
「漂流教室」を貸してもらった。車の中で少し見た。小学生の私は、描写が恐ろしすぎて、(心身とも)気持ち悪くなってしまったのだ。いまどき情報が溢れる時代なので、子供さんもホラー慣れしてるかもしれんが、どうなんだろう?
言い方に迷うが「こんな恐ろしいモノは子供が見てはイカンでしょ」と、おっさんになった今も感じるほど、楳図先生の描かれる恐怖描写は恐ろしい。。。おそらく、怖いもの見たさで、漂流教室の続きは帰宅後に読んだはずだが。
凄まじい発想力・表現力
楳図先生の、何もかもが凄まじすぎて、どう表現したものか迷うが。
とくに私が、キョーレツで「唯一無二」と呼びたいのは、怪物たちの造形だ。他を下げたい意図はないので、言葉を選びたい。例えば情報溢れる現代、怪物イラストもおよそ「どこかで見た組み合わせ」という感じがする。
しかし、楳図先生の怪物(妖怪、異形、人間)の姿は、「この人にしか絶対に思い付けない」という独特さがある。失礼ながら正気では描けないような造形をしている。のに、先生ご自身はとても優しく、ユーモラスで素敵な方なのだ。ギョエー!
たとえば猫目小僧に出てくる「定番」みたいな妖怪ですら、既存のソレより恐ろしかったり独創性が溢れている。まじでどうなってんの!?頭で思いついて実体化なさるのか、描きながらデザインされてるのか、ともかく姿が尋常でない。
緻密な設計
手元に「恐怖への招待」という本がある。それによれば、先生は作品を作られる際、ノートにアイデアメモをされ、緻密な計画をされている印象だ。(全作品でそうされてるかは私には不明)
私の感覚では、大作については、事前にかなり丁寧に計画なさってからの気がする。長編もけっこうあるのに、どうやって創作なさっているのか、また「14歳」など、中断せず「完成なさっている」のが素晴らしい。
※ 余談だが、大好きな「バガボンド(作:井上雄彦先生)」がいつまでも完結しないことが残念だと思っている。
また、私も自作の漫画もどきや、文章、音楽など「完成させるほど難しいことはない」と思っており、最近ちょっと「何はともあれ完成させよう」を目指している。
話を戻すと、あれだけ多作かつ、完結なさっていて、しかも内容がいずれも緻密で独創的なので、やはり「天才」と呼ぶしかない。
作風のバリエーション
ご自身が「笑いと恐怖は紙一重」とよく言っておられたようだが、そもそも初期の先生は、少女漫画的な漫画から始められたようだ。ヘンな言い方になったが、少女漫画から、ギャグ、ホラーまで幅広く描ける作者もなかなか居ないのでは?
また、社会に対する洞察力も、やはり「異才」と呼んで良いほどの凄まじさを感じる。先に挙げた「恐怖への招待」では、Rôjin(老人)という作品が掲載されているが、これは現代日本の少子化問題を先取りしている。
…なんかちょっと私の文体が固くなってきたな。リラックス。。。
他にも、「アナログでPCのドット絵を描く」とか「AIをテーマに」といった、先見性など、もう挙げたらキリが無いほど何もかもがすごい!
ユーモラスかつ多才な先生
天才というのは、何もかもに秀でているのだろうか?楳図先生は、作中にも(たぶん)歌詞みたいなものを書かれることがあった気がする。作外でも音楽活動をなさってて、「闇のアルバム」というCDが出ている。
私はプロ崩れの音楽家だが、「漫画家が作る音楽なんて…」と多少、うがった見方で聴いてみたら、歌は上手いし曲も面白い。もう、お手上げだ。。。
また、もしかするとwebに動画が残ってるかもしれんが、マイケル・ジャクソンの「スリラー」をダンス付きでカバーされているものを観た。その時点で既にそれなりのご高齢だったが、ダンスまでキレがある。
先生は英語もご堪能であり、MVをパロっているんだが、これがまためちゃくちゃ面白い。ダンスはマジで上手なんだけど、先生が素敵すぎて、怖い夜道の同伴女性が笑顔を堪えきれなくなってしまっているのだ。
(動画は今も観られましたが、著作権法のことがあるのでリンクは致しません)
また、散歩がお好きだそうで、細身でスラリとして、優しい雰囲気をお持ちだ。バラエティに出てこられると、愉快な方なので、存在だけで笑えてきてしまう。こんな温かい方から、あんな恐ろしい漫画が出てくるのもヤバイ。
私への影響
いくつか考えてみたい。まず、楳図先生の描く美女は本当に可愛らしく、美しい。私は「おろち」が美人すぎて、現実世界でも、身の丈に合わない面食いになってしまい困るほどだ。(楳図作品に限らないが、漫画ヒロインに憧れる悪癖がある)
ついでに、おろちで好きな回は「血」だが、これは、もはや文学ともいえる人間の悲哀や、そこに巻き込まれる?おろちの切なさなど、最高の作だ。
ほか、私は年に数回ほど絵を描く欲求が起きて、やはり原点として楳図先生の美女を模写したりの影響がある。作風に関しては、天才には足元にも及ばないが、作り方のスタイルなどは大いに参考にさせて頂いている。
また、無意識に何らかの影響を受けていることは間違いないだろう。
おまけに、今回の訃報を受け、高齢の母に訊いてみたところ、羨ましいことに「猫目小僧」を貸本漫画で読んでいたようだ。いわく「なんか知らんけど、わたしもああいうのに興味があったみたい」とのこと。血は争えんなあ。
他にも書きたいことは山盛りだが、あまり長いのもアレなので、このあたりで。
楳図かずお先生、本当にありがとうございます。
レスト・イン・ピース
グワシ