父の代わりに。【2】
父親が緊急入院。
暦通りの休みでない自分がたまたま休みだった週末のとある日、母親と弟と父のお見舞いへ行った。
ただでさえ病院嫌いなのに、こんな形で総合病院に来るなんて…。
さぞかしションボリしていると思いきや、お世話になっている看護師さんが美人だと喜んでいる…。
たしかにそうなんだけどさ、あなたいつ死んでもおかしくないくらいの重病ですけど…?
娘の気も知らないで!
買い出しで買ってきたものを渡して少し話してその日のお見舞いは終わり。
休みの日の昼間はなるべく会いに来よう、と思ったが、ひと月ほど入院して父は帰ってきた。
入院し続けたとしても手術でガンを切る事は出来ないし、抗がん剤治療の度に入院するという。
病院での日々はまるで刑務所に入れられたようだと父は言っていた。
念の為ことわっておくが、父に前科はないし勿論投獄されたこともない。
とにかく1日暇なのと、同部屋の患者さんが急に亡くなったり、初めての入院で気が滅入っていたんだろうか。
「いびきがうるさいなあ」「奥さんに文句ばっか言ってるよ…」とか、そんなふうに思っていた人が突然この世からいなくなる。
次は自分?
自分の病状を考えたらそうなってもおかしくない。
とにかく家に帰りたい、帰れるなら一日でも早く、毎日そう考えていたらしい。
念願の帰宅、それでも父の生活は入院前とほぼかわらなかった。
食欲はあるし、おなかに作った人工肛門と毎日の薬以外は定年退職後の父と何ら変わらない。
ぽっちゃりな父親がげっそりやせ細ることも無く、髪もこの頃はまだぬけてなかった。
食事も好きなものを食べるだけ食べて、何なら飲酒まで。
おいおい、それが原因で死にかけたのに?
やめないのか?
[続く]