HTJ-WORKSで作ってもらった歪みペダル
今回は私が「HTJ-WORKS」にお願いして作って頂いた歪みペダル
「Bird's Foot」についてお話ししていきます。
事の発端は私の長年の友人であり、日本を代表する鍵盤奏者、マルチプレイヤー、音楽家の「松本圭司くん」からHTJ-WORKSをご紹介してもらったのが始まりです。
スタジオでお会いしていくつかのHTJペダルを試したのですが、どれも素晴らしくて、第一印象で音も外装も含めたクオリティも「個人メーカーっぽくないな」と思ったのを覚えています。
そんな中、私の頭にふと浮かんだのが「以前よく使っていたT-Rex Dr.Swampが壊れてる。あれを修理してもらえるかな?」でした。
HTJさんに聞いてみたところ快諾して頂いたので調子に乗って、気になっていたポイントをモディファイ出来ないかな?と更なるお伺いを。
すると「出来ると思いますけど、それならいっそ新たに作った方が…」という展開で今に至ります。
そこから「自分にとっての歪みペダルに必要な要素」を考える日々。これはとても楽しい!
1・結構ハイゲインであること
私はギター本体のボリューム操作で歪みの量をコントロールするので、超クリーンのアンプ設定でも自分が使う一番深い歪みまでペダル単体で出せるようにしたい。
2・同じペダル2個の2チャンネル
Dr.Swampで最も気に入っていた点でもありますが、全く同じペダルが2個入っている2チャンネル構成。「好きな歪み」というのはある程度方向性が決まっていて、状況によってただ設定を変えたいだけ…という場面が多々あります。
3・一回の動作で切り替え
これもDr.Swampからのアイデアですが、各チャンネルを同時に掛ける事はしないので片方を踏むともう片方が切れる仕組みにしてもらいました。
歪みの二重がけはどうしてもレンジが変わってしまうので、歪みを増やしたり、音量を上げたりしたければ片方をその設定にすれば良いという考えです。
4・バッファードバイパス
私が多く演奏する環境や音楽性ではトゥルーバイパスの恩恵をあまり感じてなくて、良いバッファーならむしろ通っていて欲しいと思っています。
2、3、4の機構に関する部分は難なく実現してもらったのですが、やはり歪みの質感「音色」についてはかなり悩んで、試して…を繰り返しました。
そんな試行錯誤の中、HTJからあるご相談が。
「島村楽器 セブンパークアリオ柏店」からHTJ-WORKSに店舗限定商品の企画を打診されていると。それにこのペダルを納品しても良いか?というお話しでした。
ふむ。。
HTJにはこんなにしてもらっているし、多少でも売り上げになるなら恩返しにもなるし…と思うのですが、一番の懸念は
「売れます??」でした(笑)
そもそも商品として作っている訳ではなく、有名でもない私の超限定的な演奏環境での好みと要望で作ってもらっているニッチなペダルですので、それって…商品として…
どうなの??と(笑)
とはいえ、HTJ-WORKSも個人のメーカーで小回りも効きますし、島村楽器さんもセブンパークアリオ柏店という店舗でのみという小さな範囲での話ですので、誰にも大きな損害のリスクは無いし、もしかしたら多少の利益は生まれるかもしれないなら良いか…と実現に至りました。
そして「音色」の話に戻ります。
当初はDr.SwampのブラッシュアップVer.を作って貰えば済む話だと思っていたのですが、今の自分の好みや他の機材とのマッチング、最近の仕事の傾向等など考えると、歪みの方向性がもう違うなと。
これはそもそもの音から違うタイプにしなきゃいけない。
「歪みペダルの構造」というのは今までの歴史の中でたくさん考えられては淘汰されていって、いくつかの王道パターンが存在します。そのパターンのどれにするか?から考え直さなくてはいけなくなりました。
結果、もうDr.Swampとは全く違うタイプの歪みになりました(笑)
そこから更に各パーツの細かな数値を決めていく作業になります。「これだと大きい。こっちは小さい。あ、小さくなり過ぎた…」そんな事を繰り返していると「あれ?良い音って何だっけ?」と、ある種のゲシュタルト崩壊が起きます。そうこうしてやっと「歪みの方向性」が決定しました。
ゲイン、ヴォリューム、トーンという3つのノブにしたかったので、次にトーンの設定になるのですが、ここで問題が。
デザイン的にオシャレかつ視認性が良いという事でトーンのノブ自体が光るタイプを選んだんですが、これはカーブの選択肢が無いのです…(泣)
具体的に言えばツマミを回していって後半で急に効いてくる印象になります。ですので真上(12時位置)ではまださほど効いてなくて、2時くらいがやっと12時位置のイメージになります。
私が個人的に使うだけならそれが分かっているので全く問題ないのですが、私以外にも使うであろう「商品」となるとこれは使いづらく感じるかな..と思った部分です。
ただ、そこを回避してまで使いやすさを求めるのは当初のこのペダルの意図からブレてしまう気もしてきて、敢えてデザインを優先しました。
ですのでもし、このペダルをご購入された方がいらっしゃったら
「トーンは2時以降から明るくなっていく」とお見知りおきください(笑)
そして大事な「命名」。
これはXでもつぶやいたのですが、ギターからの信号が3つの音色のバリエーションになるので線で表すと「鳥の足」のようになるからなんです(笑)
我ながらなかなか良い名前だなと気に入っております。
こんな経緯で完成したペダル。
すでに演奏する場には必ず持って行って使いまくっています。
製作中に色々とやりとりしている中でペダルに関することはもちろん、それを商品として発売するにあたっての諸々など大変勉強になりました。
こんな貴重な機会を与えてくれた松本圭司くん、HTJ-WORKSに心から感謝しております。