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『奇数の歯を持つ嬰児(前)3/3』-a

神の調査員として
赤ん坊は生まれてくるのだが
しかしきみもしだいに
人間じみてきてしまう
その証拠としてふたたびぼくは
泣き声における変化をあげよう
最初きみは泣く器官として機能しているにすぎない
あるいはまったくの眠る動物だ
ぜんたい
ぼくらが二十四時間の約三分の一を
集中的に睡眠時間にするのに対し
きみがあんなにも頻繁に眠り、
また授乳されては眠り
ぼくらの安定した生活方法を脅かすというのは
きみの一日とぼくらの一日が
まったくことなった期間であることを示す
カレールーのような
固形物だったのがぼくらの作用をうけて
とろとろに溶かされて
のばされて散文の気安さに染まってくる
素焼きの笛のようなきみの泣き方には
しゃくりあげるフェルマータや
力みの節回しが加えられ
人為的なアクセントの増加とともに
ぼくらの仲間の嫌なそぶりがついてくる
不機嫌と不満と不安の
それぞれがきみを泣かせ
自分の身体不能性へのいらだちが
ふたたびきみを泣かせる
これが授乳によって
生命を維持しているころの
爬虫類時代のことなのだ

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