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『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-a

a
「ゆび、
極端に根本だけがふくらんでいて
急激に細まりながら
すぐに
爪によって完了されているゆびは
たしかに赤ん坊のものです

ほお、びっしりと
繊毛がこびりついているために
かぶりつくのがためらわれる
桃のほおは
たしかに赤ん坊のものです


しかし瞳はちがいます
世界を睥睨するように
ゆるやかに移動させる
あの眼球運動は
わたしたち人間が
行くことのできない
高所の意識物のものです

はじめてその運動を
見てしまったときぼくは
思わずひれ伏しました


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