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映画レビュー「ジョゼと虎と魚たち」

この映画で強烈に印象に残ったのは、「愛情と面倒臭さの間で揺れる心情描写」だった。


楽しさと苦しさが入り混じった愛の中で、その気持ちを抱き続ける事は容易ではない。
なぜなら、人を好きになる事よりも愛し続ける事の方が難しいから。
だから「現実はこうだよな」と観ていて考えさせられた。

始まりの写真が流れていくシーンは恒夫の「好き」という感情が溢れているのが伝わってきて良かった。
海岸のシーンはノスタルジーな感じがして好きだった。
言葉だけではなく、表情や仕草で感情を表現できているのは凄く見応えを感じた。役者って凄い。

ラストシーンは切ない最後だった。終盤の旅行は本来なら楽しい場面なのだろうが、恒夫の心の変化が垣間見えるシーンでもあり切なかった。
恒夫とジョゼが触れた2人の美しい時間ととても悲しい最後。
恒夫は本能的にずるいと思ってしまったが、それでもジョゼと恒夫の恋愛に感情移入してしまうのは2人の恋愛を等身大に描いているからだと思う。失恋についても深く考えさせられる。

物語の途中で恒夫がジョゼに「車椅子を買おうよ」と言うシーンがある。けれどジョゼが車椅子を買わない決断をしたのは恒夫に自分をおんずさせて、如何に自分が彼の人生において重荷になるのかを実感させる為だったのではないだろうか。ここもやはり見ていて辛かった。

物語のラストにジョゼが電動車椅子で颯爽と駆けていくシーンがある。
その後ろ姿に彼女の悟りと力強さを感じた。
恒夫がきっかけで外の世界と繋がりを持てるようになったジョゼの人生はまだ始まったばかりだ。きっとこの別れを経て、始まりの1ページ目がようやくめくられる様な気がする。

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