漫画をチラシみたいに配ってみたらポケットティッシュに完敗した話(前編)
というわけで駅前にやって来ました。
自著のマインド・リバーシという漫画をチラシ代わりに配り
ひとりでも多くの方に作品を届けて読んでいただくのが目的です。
(道路使用の許可証はいただいております。)
個人事業主が自身の商品を宣伝する為に
お金や労力をかけることは当然だと思うから
普及活動をしに来たのです。
幸い学生時代にチラシ配りのバイト経験があるので
ポジション取りやお声掛けのタイミングには慣れていました。
そして自身の経験に基ずき
チラシ ≦ ポケットティッシュ ≦ 漫画 ≦ 試供品 ≦ 風船
という、皆が受け取りたいと思う強さの仮説を立てました。
風船の圧倒的な強さや試供品のご婦人方への人気には及びませんが
漫画ならポケットティッシュよりは早く配り終えるだろうと思ったのです。
そして歩行の邪魔にならないベストポジションに立ち
お声掛けを始めました。
「プレゼント中でーす」
「ただいま無料でお配りしておりまーす」
「どうぞお取りになってくださーい」
バイトをしていた当時の記憶が急速に蘇り
発声やイントネーションが整っていくのを感じました。
しかし意外にも歩行者様に素通りされてしまいます。
人の波が2、3度通り過ぎた辺りでようやく1冊目を受け取っていただきました。受取り人様は小学校高学年辺りの年頃の方でした。
「え?漫画??」
とビックリされて、その顔はこのような物をタダで貰っていいの?と困惑している様でした。
実際、側にいた保護者様にも同じようなことを言われました。
「無料でプレゼント中ですので、どうぞお受け取りくださーい」と
試供品を配っていた頃を思い出して言いました。
ただ、バイトをしていた頃と違うのは
心からの笑顔でお答えできたことです。
そしてまた人の波、波…。
なかなか受け取っていただく事が出来ません。
「無料でーす」と差出しながら、どうしてだろうと考えていました。
1時間ほど配ってみた結果、やはり受け取ってくださるのは
家族連れのお子様が多かったです。
しかし中には
「これは何?」と聞かれたので
「漫画です」と答えると「孫に見せるわ」と言って
受け取ってくださるお婆様がいらっしゃいました。
また
「漫画!?描いたの!?」と聞かれたので恥ずかしながら
「はい」と答えると、「続き出たらまたチョーダイ!」と
笑顔で去っていった男性。
数時間後にDMで面白かったとメッセージをくれてとても嬉しかったです。
そして漫画にお詳しく、こんな無名の人間が描いた本にも関わらず
大喜びで受け取ってお話もたくさんしてくれた女性。
後にX(旧Twitter)でご縁が出来ました。
直接のお手渡しは大変ですが
それ以上に素晴らしい出会いと貴重な経験をしています。
その最中で気付いたことは、受け取っていただく瞬間
揃って「これ、漫画?」と確認されたことです。
もしかして、足早に歩かれる歩行者様にとって
漫画ではなくチラシに見えてしまったのでしょうか。
私もバイト時代に漫画を配った経験が無いので
そもそも、そんな物を配っていると思わないのかもしれません。
第三者の目には、自分はチラシ(に見えるモノ)を配りながら
「無料です」とか「プレゼント中です」なんて言っているように
映っていたのではないかと思い至ったのです。
ひとり反省をしていたところ
キリの良いタイミングで雨が降ってきたので
帰宅することにしました。
当初、自分の中にあった、漫画だから
ポケットティッシュより上という幻想はバッキバキに砕かれ
あとに残ったのはこの失敗から得た経験です。
そこから何を学びとり、どう修正すれば良いかを考えました。
今回の漫画配りはなかなか本を受け取って貰えず
炎天下で体力の消耗も激しいこともあり
もっと効率の良い方法が求められたのです。
そこで家路に着く途中、私はダイソーに向かいました。
勝てる相手とタカをくくっていたポケットティッシュを買うために。