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詩集:『詩と風景 その谺』

『2つのチェロのための前奏曲』

スラーは崩れた
スタッカァト
ピツィカァト

不規則なフーガは短2度
変拍子は同じところをぐるぐる回り
歪な転調は灰を飲んだ椋鳥の群れ

1フレーズの
美しい
美しい
オブリガートが響き

そして座り込む
ゲネラル・パウゼ


『見上げる』
翼を羽ばたかせて飛ぶ鳥も
翼のない私には
どこまでも広く
どこまでも高い宙に
溺れて藻掻いているように見えた

『ないものねだり』
夏には冬が欲しい
冬には夏が欲しい
闇の中では光が欲しい
光の中では闇が欲しい
生きている今は死が欲しい
きっと死んでいる時は生が欲しい


『私の言葉に送る』
私の言葉は怖がりだから
本当の私に気づいて
ひどく小さな声で教えてくれる

私の言葉よ
君がか弱い私の隣にいる限り
私はか弱い君を抱きとめよう


『愛情』
無くさないように首輪をつけたら
そのまま窒息死してしまった


『会うために』
チョコレートを買ったから
気になる映画があるから
雨が降っているから
街で怪獣が暴れているから

理由はなんだって良かった



『日々』
今日もいい一日だった。
そして今日も最悪な明日を迎えるだろう。
私はただただ怯えているだけ。



『つまらない』
溺れたプールの底からみたのは
小さな太陽しかない
ただの宇宙だった


『春陽』
沈丁花の香りから
メジロのアンサンブルから
あなたの微笑みから
私を優しく抱きしめる


『Águas De Março』
3月の雨を得意げに吹いた君
苺の延びた庭に暖かな雨


『迷路』
私は迷路に入ろうとしている
2年3組窓側一番前の席がスタート
2年1組教卓の前の席がゴール
迷路だから真っ直ぐ行けない
迷路だからすぐには着かない

あなたが迎えに来てくれるなら
あなたが一緒に居てくれるなら
一生迷ったままでいいけど


『パステルカラー』
私のめと
私のみみと
私のこころで色付けた布を
雑巾みたく強くしぼった

水と一緒に流れ出す赤、青、黄
水と一緒に溢れ出す緑、空、桃
白、茶、黄緑、紫、橙
綺麗な色、淡い色、たくさんの色

最後の一滴は
黒くて、苦い


『待ち合わせ』
遠くを見つめる
ずっと、ずっと遠くを見つめる
君と出会う午前10 時まで

遠くを見つめる
ずっと、ずっと遠くを見つめる
角から現れる君を映していたくて


『五時間目』
教科書の
余白に書いた
君の名は
私が一番綺麗に書いた字
私が何度も綺麗に書いた字


『例の約束』
一緒にいたい
二人きりで
散々引き離されたけど

呼んでも来ない貴方との
いつかの約束の通り
ろくでもない約束の通り

七夕の夜に
やっと会える
急でごめん。

天のラブストーリー

『雨、或いは涙』
夜の雨には迷惑してる
私の雨を隠してしまうから
私のかなしみを返して

貴方の雨には迷惑してる
私の雨を奪っていくから
私のかなしみを返して

私の雨には迷惑してる
私の雨を連れ去っていくから
私のかなしみを返して

『きらい』
すき⇔きらい
すき≠きらい
すき≒きらい
すき=きらい
ベランダでしゃがんだ花占いは
プランタのデイジーの花占いは
結局あなたがすきだった

『宇宙旅行』
眠らない夜は
宇宙にさまよう
もう戻って来ないように
もう戻って来れないように

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