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[本・レビュー] 『ウィズコロナ 日本株にビッグウェーブがやって来る!』


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世界で評価される「ジャパン・クオリティ」。日本株は13倍~15倍も上昇する!?

世界で再評価される「ジャパン・クオリティ」
経済成長至上主義に偏る米中とは一線を画した
「損して得取れの精神」・意識レベルの高さが
日本の株式市場に資金流入を呼び込む。

複眼経済塾 代表取締役 渡部清二さんと
複眼経済塾の取締役・塾頭 エミン・ユルマズさんの対談形式で話が進む本書。
 
 渡部さんはこれまでに、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』、『日経新聞マジ読み投資術』、『「会社四季報」最強のウラ読み術』を執筆されていますが、いずれも拝読し、その影響で私も3カ月毎に会社四季報の全銘柄をチェックする習慣をつけました。
 
 ただし私の場合は、渡部さんのように、全部読むではなく、ある程度の経済指標等をしぼって、その指標にひっかからない銘柄は深く読み解くことなくとばしています。
 
 エミンさんは、トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピックで優勝。1997年に日本に留学し、翌年に東京大学理科Ⅰ類に合格。東大工学部卒。2006年に野村證券入社後、2016年より複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。『日経マネー』『ザイ FX!』『会社四季報オンライン』で連載を持ち、『マーケットアナライズ+』『田村淳の訊きたい放題!』などのテレビ番組にも出演されている、人気アナリストです。
 
帯に

"バブル時代、世界中の投資資金が日本に集まり、
日本は時価総額が世界一だった。
ところが冷戦終結後、資金はアメリカに行ってしまった。
しかし、米中新冷戦で、再び日本に戻りつつある。
新型コロナウイルス禍が、それを加速させる。
日経平均は2023年に史上最高値、2025年に5万円、
2050年に30万円になる!"
 
とあります。
 
 この手の内容の本にはマユツバものが多いのですが、私が読む限り、非常に説得力がありました。13~15倍という数字や、2025年に5万円、2050年には30万円という具体的な数字が実際にあたるかどうかは別として、それなりのポテンシャルが十分あることを納得させられました。
 
株価の推移のグラフを示し、

p.15 "30年前の1989年には日本市場のほうがアメリカより約20倍もアウトパフォームしていたのに、2019年には逆に日本のほうがアメリカより約17倍もアンダーパフォームしてしまいました"
と解説されています。
 
 "2019年末のアメリカ市場は時価総額で言うと、だいたい35兆ドルです。1989年の段階で、世界でもっとも時価総額が大きかった日本の株式市場が4.1兆ドルですから、現在は約8.5倍も大きくなっています。それだけのお金がアメリカの株式市場に行ってしまったということです。"
 
 GDP1位、2位のアメリカと中国の貿易戦争の中で、資金が日本市場に流れれば、13~15倍という数字は不可能ではないし、現実にはもっと上昇してもおかしくないと解説されています。
 
 日本に資金が流れうるのは、かつての栄光だけによるものではありません。ポイントは世界的に再評価されている『ジャパン・クオリティ』です。
 
p.53 "渡部 投資の世界でも同じです。以前は経済成長至上主義みたいな、成長しなければいけないというようなイメージがありました。しかし、これからの世界を見たとき、それは本当なのかということです。今回のコロナ禍で、経済成長が止まらざるを得なくなったのですから、経済成長至上主義にいつまでもしがみついていても何も始まりません。
エミン 特に欧米の物の考え方には、経済成長こそがすべて、というようなところがあります。
渡部 しかし、成長ばかりを求めると必ず破綻するということは、世界を席巻してきた帝国主義国家の歴史を見てもわかります。帝国主義とは自国の利益と領土を拡大しようとして武力を背景に他国を植民地や属国にしていくことです。しかしながら15世紀から17世紀の中頃にかけてのポルトガルやスペイン帝国、その後のイギリスやドイツ帝国などを見ても、すべてが破綻して、結果的に植民地を手放して国力が衰退していきました。"
 
p.82 "エミン 一人ひとりの意識のレベルが高いことは、日本がつくる食べ物や製品を見てもよくわかります。スーパーに行っても、野菜や果物など、一個一個が本当に美味しい。それは一個一個こだわってつくっているからです。それは安心ということにもつながっています。中国の観光客が日本に来て爆買いして帰っていくということがありましたが、それは日本の製品が安心・安全だったからです。例えば、子どもが口にするものとか、肌に直接つける化粧品とか、目に見えない安心が日本製品にはあるからです。"
 
p.85 "渡部 今回のコロナ禍で、メイド・イン・チャイナはいっそうイメージが悪くなってしまいました。逆に日本は欧米に比べて死亡者が少ないことなどからも、世界で注目され、いっそう見直されました。それは日本にとって、非常に良かった。"
 
p.87 "エミン 日本のビジネスそのものや、その方法も現在、世界から見直されています。というのも、日本のビジネスは伝統的に「損して得取れ」というものでした。一度の取引の損得だけを見ないで、長い目で儲かればいいという考えです。先ほど中国は今だけ儲かればいいという発想が強いと言いましたが、アメリカの金融業界などもその傾向が強い。お客さんが損をしても自分がこの会社にずっといるわけじゃないですから、自分が儲かればいいという連中がかなり多い。"
 
 エミンさんはトルコの御出身です。長く日本に住まれているので、当然バイアスは存在するでしょうが、それでもエミンさんが「日本クオリティ」を評価されていることには意味があると考えます。
 
 ただ、本書を読んでいて、大きな違和感を感じました。
 
 それが、『日本政府の意識の低さ』です。
 
 本書では、経済成長至上主義である欧米・中国に対して、日本の『損して得取れの精神』・『国民意識の高さ』・『クオリティの高さ』が世界的に評価をされていると解説されています。
〇Go toや経済回復にこだわりすぎて、状況に応じた判断が全くできない
〇自分達の給与や支出を全く改善することなく、所得控除の中止・医療費負担量増加・税率アップなどは迅速に決定していく
 これは世界に評価される「日本クオリティ」の真逆にある態度です。
 
 日本の製品のクオリティも戦後すぐは決して高いものではなく、海外からも評価が低かったようです。そこから国民や企業が努力を続け、今日の世界的な評価を勝ち取ったのです。
 一般社会人をほとんど経験することなく、ほぼ世襲的に政治の世界だけで育ってきた年配の政治家は「日本クオリティ」とは異質なものといえるのかもしれません。
 
 安倍前首相が自慢げに語った「ジャパンモデル」は日本国民一人一人の意識レベルの高さによったものであり、政府的な要因は皆無です。
 どんなに収入をあげても、高い税収で搾取される。政治家が私腹を肥やすために税金は浪費され、足りなくなった負担は再度国民からしぼりとられる。
 各企業も企業努力をねぎらわれることなく、インフラ整備という名のもとに料金設定を引き下げろと圧力をかけられる。
 こんなことでは、日本のクオリティ、意識レベルの高さは維持できないでしょう。
 
 多額の給付金不正受給や、それに加担した税理士や前国税庁職員逮捕の報道は、腐敗した日本政府を象徴している気がしてなりません。
 
 経済活動にこだわり、感染者数や重症者数、死亡者数をおさえられなければ、結果として「ジャパン・クオリティ」に対する評価に傷をつけかねません。
 
 日本の経済レベルを向上させるためには、時代遅れの政府の存在は大きな足枷となるのは間違いありません。
 
本書は、他にも
『会社四季報』を利用する上でのポイント
『日本経済新聞』を活用するためのポイント
テンバガー銘柄の共通点
なども記載されています。
 
 そして何よりも大切な記載が
"p.149 エミン 私たちは株の専門家ですが、専門家の言うことはあまり聞いてはいけない。
渡部 そう。私たちの意見を鵜呑みにしてはいけない(笑)。
エミン 要は自分の頭で考えろということです。人の意見はあくまでも参考であり、最終的に判断するのは自分。そのとき、どうしてこの会社の株は上がると思うのか、何の魅力があるのか、その理由を説明できなければ、その株は買わないほうがいい。"
 
 私もこの『自分で考える』というのが最も大切だと感じます。
 
 著書のお二人を直接は知らないので評価はできませんが、
少なくとも本書の内容だけに限っていえば、とても誠実な印象を受けます。
 
 株式投資中・上級者にとって得られるものが多いかは判断し難いですが(その方のレベルや考え方で大きく変化すると考えます。私的には得られるものは多かったです)
初心者の方は一読して絶対損がない一冊だと考えます。
 
 ただし、チャートの読み方や、細かい専門用語などの解説はないため、
他の基本的な入門書+本書を読まれることをおススメします。
 
毎度のことながら、投資は自己判断でお願い申し上げます。


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