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メル友のアカネちゃん 2

メル友ができたと言っても、一体毎日何をやりとりすればいいかわからない。本音を言うと早く好きとか付き合ってとかそういう話をしたいけれど、いきなりそんな話をしたってアカネちゃんは困惑するに決まっている。

タイラは色々考えた末、まずはアカネちゃんについて質問してみることにした。部活は?中学は?好きな音楽は?好きな本は?身長は?誰に似てる?

あんまりしつこいのも嫌がられるかと思って、質問は一日に二つか三つまで。どれも素っ気ない返事が来てイマイチ会話は盛り上がらない。

唯一音楽の話はきっかけになりそうだったけど、アカネちゃんが好きだと言うHi-STANDARDというバンドも名前は聞いたことがあっても、曲は聞いたことがなかった。ニュータウンから高校までの間を行き来するだけの生活だと、CDを買ったり借りたりする場所も無いから、聞く手掛かりは野球部の友達くらいだったけど、そんなしゃれた音楽を聴くやつはいなくて、そうなるとタイラにはもう手詰まりだった。

直情型でいい加減で女好きなタイラはでも、というより、だからこそ、と言った方が正しいかもしれないけれど、おおらかさという美徳も兼ね備えていた。

毎晩ベッドに寝転んでメールを送って、ゴロゴロしながら返事を待つ。来たら来たで喜んで返信を打ったし、来ないなら来ないで、まあバスケ部の練習が忙しいのかもしれないと、ショートカットを揺らして体育館をかけるきれいな女の子を思い浮かべながら、返事がないのを気にせずそのまま眠りについた。

高校生になってからも、タイラの身長は伸び続けていた。入学当初は175cmだった身長は、多分もう180cmを超えている。小さい頃から使っている部屋のベッドは少々窮屈ではあったけれど、タイラはそのベッドの上で過ごすのが好きだった。

身長の伸びに慌てて追いつこうとするように、筋肉も増えてきている。力を持て余し気味なのも、タイラは言葉にはできないまでも自覚していた。じっとしているとムズムズしてくる体を、部活の疲れがほどよくほぐしてくれるのが心地よい。これでもかというくらい疲れて、風呂に入って、目を閉じたらそのまま吸い込まれるように眠るような日が好きだった。

タイラのその大らかさは、今も昔もある種の異性を惹きつける力がある。アカネちゃんも、あんまり性急なことを言わないタイラを信頼してなのか、少しずつメールのやりとりは増えていって、時にはアカネちゃんの方からメールが来るようにもなった。

学校は携帯電話が禁止だったから、部活が終わって家に帰ってメールが来ているのを見つけると、文字通りベッドから飛び上がってタイラは喜んだ。

そんな中でアカネちゃんなら思わぬ誘いがあったのは、夏休みのある日のことだった。

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