ちる子

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最近の記事

一本の歯をめぐる思考

私には生まれつき1本の歯がない。 正確に言うと、右下の奥歯の永久歯が生えてこないことになっている。 先天的欠如というやつらしい。遺伝子の気まぐれ、1/10の外れくじだ。 無い歯を作ろうとすると、歯茎にネジを埋め込んで被せ物をする「インプラント」か、隣の歯を削って蓋をする「ブリッジ」、それか入れ歯があるのだが、保険適用が出来るのは入れ歯だけだ。その選択を目の前に提示された私は当時26歳であり、日常生活や仕事での見た目の清潔感を考えた上で自然に見え、白くて丈夫なインプラントを選

    • 戦国時代とAIと今

      最近、AI Chat Botにとある質問をした。 「1600年から2024年を生きる私に至るまで、何人の遺伝子が関わっていますか?」 1世代30年と仮定して、私が15世代目と割り出した後に、私に関わった遺伝子の人数を、1代ずつ遡って両親に関わる遺伝子の人数は2のn乗で増えていく。15世代分の計算をしてもらって、出た人数は6万5千536人。始めてちゃんと計算をしたので、膨大な人数に打ちのめされた。 天下分け目の戦いと言われる「関ヶ原の戦い」で徳川家康が勝利した戦いが起きた

      • インスタが日常を軽くする

        文明開化直後の日本では、AI革命が起きた去年のように、新進気鋭の若者達が成功しようと町へ繰り出し、商業を起こしたらしい。新しい可能性が目の前に茫洋と広がり、自分の限界を試してみたくなる高揚感と爆発力のある自己肯定感。その時の風を感じてみたかったなと、時々思う。最も、その後日本は富国強兵が敷かれ、敗戦へと道を辿ることになったのだけれど。2023年12月にサム・アルトマンがGPT-4を発表し、AI革命が起きた時、私は外資系企業に勤めていながら確かにその、コロナも明けたばかりのどん

        • イカの幸せ、私の幸せ

          ** 真夏の昼下がり、私は都内某所、個人経営のレストランへ同僚達と向かっていた。週に1回必ず私達が訪れる、味も盛り付けもボリュームもレベルの高い、知る人ぞ知るイタリアンレストランだ。 私が毎回注文するのは「ローストビーフ丼」。昼のメニューの中では一番値段が高いのだが、ハンバーグ定食では午後に胃がもたれてしまうし、何より旨味が何層にも重なって絶品であることは間違いない。それから、個人的な理由で8種類以上はあるかと思われるパスタは選べない。理由はちょっと特殊な事情*だが長くな

          誰も知らない素晴らしい明日

          私の終着点はメキシコだ。 今年に入ってから幾度となく思い描く私の未来。 全てを失ったら、私はメキシコへ行く。そう決めている。 理由は本当に単純だ。大好きな人達がそこにいるから。 それと、このメキシコで国民的に有名な曲、ルイス・エンリケの " Yo no se manana" (明日は誰も知らない) に、全てが語られている。 今を生きる。将来を考えずに、今この瞬間を楽しむ。 大切なあなたと一緒に。"Mi casa es tu casa" (私の家はあなたの家)と良くミームで

          誰も知らない素晴らしい明日

          マルセルと人の善性

          最近、ちょっと嬉しいことが続いていた。 本が読めるようになった。感動する映画で泣けるようになった。夜に押し寄せてくる不安からくる不眠症に、自分で見つけた漢方で対処できるようになった。家族の代わりに一晩だけ、ご飯を作った。メキシコの料理、Carnitas(カル二タス、豚ロースを長時間煮込んだ料理)が作れるようになった。父親が美味しい美味しいと言って、私の分まで食べた。 そして私は全部に「感謝」した。 上記の商品の受け売りではないが、「感謝ノート」または「自分を褒めるノート」

          マルセルと人の善性

          さあ、行こう

          最近、頭から離れない曲がある。 自転車を漕いでいる時、イヤホンで耳を塞いではいけないという法律が日本にはあるが、寧ろ自転車を漕いでいる時にこそ(しかも両足をペダルから解放してワーッと坂道でも降りながら)聴きたくなる、とある異世界ファンタジーアニメの主題歌だ。 その名も、 「息を吸う、ここで吸う、生きてく」。 歌い出しはこうだ。 ここ数年の異世界ものの主題歌をいくつも担当している、「ゆいにしお」の曲。彼女は言うなれば、「澄み切った青空の下、洗濯物を干して、あまりに気持ちいい

          さあ、行こう

          お久しぶりです

          セルシン 2mg、セルトラリン 25mg、芍薬湯エキス。聞いたこともない薬が私の脳に作用し、昂る気持ちを落ち着かせる。考えることをやめさせ、ただ体をベッドに横たえさせる。思い出して泣く暇もないほどに、私は眠り続けた。眠気に耐えられなくなって起きると、また悲しみの波が襲ってくる。そんな時は両腕を被せるようにして目を覆い、強引に両目ごと涙を押さえつける。そうやって私は、毎夜を過ごしてきた。今年が明けてから2ヶ月近くも。目が覚めている時、何か雑用をしていられるのは数時間だけだ。後は

          お久しぶりです

          「生まれかわるつもりがあるならむしろカラッポのほうがええ」という台詞に救われた話

          今年の10月、26歳の秋、これまでの自分の価値観を覆されるような事件、いや転換点を経験してから、私は文章がすっかり書けなくなっていた。noteに文章を書く時、おそらく執筆者のほとんどが、「無名の不特定多数に少しでもいいから読んで貰って共感を得たい」と考えていると思う。そしてその裏にあるのはおそらく、自身や自負、教養や知識、誰もしたことのない経験だ。おそらく一番大事なのは、「自信」。 私は最近まで、文豪ストレイドッグス第一シーズンの主人公・中島敦の決め台詞、 多くの人に刺さ

          「生まれかわるつもりがあるならむしろカラッポのほうがええ」という台詞に救われた話

          自分の人生が誰かの模倣だっていい。

          近頃、あれ?と思うことがあった。 仕事を辞めた後、1か月の休職期間、私は旅行を企画していた。 コロナ明けの夏を迎え、駅中に現れる国内旅行のポスターを眺める。 人気の観光地は、伊豆か。軽井沢か。はたまた、世界遺産巡りか。 皆が「行って良かった」と言っていたところへ、TVロケで芸人が食べ歩きをしている街へ、行ってみようか。 だが、計画を進めている最中に、私は気づいた。 あれ、これはあのポスターの、友人の、芸人がしたことをしたいと思っているだけなのかな……? 「良さそう」、そう思

          自分の人生が誰かの模倣だっていい。

          社会人になってからでも、日記を書くことを是非おすすめしたい(5か月続けて現れた効果)

           最近noteを更新していなかったが、その間も文章を書いていなかったというわけではなく、実は日記は毎日続け、そのほかもちまちま小説等を書いたりしていた。とはいえ、日記も5か月分溜まったので、そろそろ整理のつもりで久しぶりに投稿する決心がついた。手元にあるのは、約150日分の記録である。読み返すと、非常に面白い。(自分では気づくことが出来ないので、もし文章に何らかの変化が表れていたら多めに見て頂きたい……)  有名な話だが、何かを習慣化するためには、平均66日の継続を要すると

          社会人になってからでも、日記を書くことを是非おすすめしたい(5か月続けて現れた効果)

          「ファスト教養」の時代だからこそ、「心から好きなもの」を集めていくこと

          前回、文章を書いてから、しばらく時間が空いてしまった。 その間、文章を書こう、という気が起きなかった。というより、内から湧き出てくる爆発的な感情が、生まれなかった。 転職活動がようやく終了し、心も落ち着いてきたところで、旧友に会いに行ったり、普段は読まないような厚い文庫本や上下巻のある長編小説を読んだりしているうちに、あっという間に時が経ってしまった。私は、至極健康的で真っ当な日常という"Whrilwind"(旋風)に巻き込まれ、内省的思考を失いかけていた。そんな自分に、焦り

          「ファスト教養」の時代だからこそ、「心から好きなもの」を集めていくこと

          大企業を捨てるという決断。中川家礼二の言葉で、転職への決心がついた話。

          オンライン会議越しに、私は話し終えた。 私の語尾は震えていた。 ややあって、人事が言った。 「そうですか…」 「会社としても大きな損失ですし、非常に残念ですが、そう決められたなら良かったですね」 「まだ迷いがあるように聞こえるんですが、何か今相談しておきたいことはありますか?」 止めてくれ。 今日の日を迎えるまでに、どれだけの時を費やしてきたと思ってる。180日。180日だ。180日の逡巡と足踏みと無気力。そして幾夜も耳元に訪れ私の枕を濡らした「これで良いのか?」「残っ

          大企業を捨てるという決断。中川家礼二の言葉で、転職への決心がついた話。

          日記:12歳の私とチョコモナカジャンボ

          片手にチョコモナカジャンボを大事に抱えながら、月600円だったお小遣いを握りしめ、毎日1km離れたコンビニまで帰宅するや否や自転車で飛び出していった12歳の頃の自分を思い出した。600円等、まだ今よりは数十円ほど安かったジャンボでも5日で底を尽きるはずであるのに、祖母から貰ったお年玉を大事に分割してちまちまと使っていたのか器用にやっていたらしい。あの頃はいつも、無性に腹が減っていた。 小学6年生まで、ろくに友達も作らず「一匹狼」と呼ばれる始末。物語の空想ばかりして、昼休みは

          日記:12歳の私とチョコモナカジャンボ

          一度もvTuberモデルを作ったことがない超初心者が、独学で一日戦ってみた話。

          射幸心と好奇心が強すぎるのは、時に困りものである。 それらは硬い殻を破る原動力にもなるが、時間や労力やお金を必要以上に投資してしまう原因にもなる。 だが、人生にはどうしても「今がその時だ!今しかない!」と突然心に火がつく時が訪れる。 これはそんな瞬間を、GW2日目に迎えてしまった私の奮闘記である。 出会い数週間前、私は勤めている会社の仕事の関係で講演者を探すべく、ココナラを開いていた。単価数万円から高いものは数十万まで、大変魅力的なスキルと提供者がずらりと並んでいる。そ

          一度もvTuberモデルを作ったことがない超初心者が、独学で一日戦ってみた話。

          焦らせるな、社会よ

          社会に「憤りを感じ」ている暇はない。 その間にも、私の大事な時間は流れていくからだ。 転職サービスで、「圧倒的成長」を標榜するヘッドハンター達に、「怒り」を覚えたりはしない。 なぜなら、私自身そのサービスに21歳の時から登録しているからだ。 だが、どうしても「自己責任化」が止まらない日本社会に、日々勝手に「焦り」を感じさせられてしまっている自分がここにいる。 これは「自然発生する焦り」ではなく「社会的に醸成された受動型焦り」なのだ。何もしていないことに対する焦りではない。何か

          焦らせるな、社会よ