4年漫画が描けなかった筆者が勘違いしていたこと

筆者は4年以上に渡り、漫画を本気で描こうとしてきた。
漫画を描ければ他に何もいらないというくらいの覚悟をもって。

しかし、描けなかった。正確には、1作も完成させることはできなかった。

なにが間違っていたのか?そして本当はどうすればよかったのか?それについて現段階で気づいたことをまとめていこうと思う。
結論から言えばもっと「描きたいもの」を追究していけばよかった。そう思う。なぜその結論に至ったかを書いていく。ずいぶん紆余曲折があった。

本当に最初の頃は自分の漫画の才能を信じていた。
よくある勘違い野郎だ。
自分が駄作を描くことなんて許せなかった。だから、描かなかった。セルフ没というやつだ。それを繰り返していた。
ネームやプロットの段階で、面白くならないことは透けて見えていた。そんな作品を描く気にはなれなかった。
「なんでもいいからなにか描いてみたら良い。」そういうアドバイスがよく言われるが、それは叶わなかった。途中でやめてしまう。
なぜやめてしまうか?自分が描く最初の作品は良いものであってほしい。それが才能ある人間の証明になる。そう思っていたからだ。「描くの初めてなのにこんなに出来がいいなんて!」と言われたかったんだ。

でも現実はそうはいかない。どんな有名作家でも、最初は大した事ない作品しか生み出せない。その事に気付けず、それ故にセルフ没ばかりだった。

漫画を描きたいといって描けない人にはよくある話だ。
とはいえそれは長くは続かない。結局描けなければなにも始まらないからだ。いつまでも描けないままでいるわけにはいかないので、漫画を描いている人に教えを乞おうと思った。

Discord

筆者にはクリエイターの知り合いなどおらず、周りに漫画をかくひとはいなかったので、discordの創作者が集まるサーバーに参加してみた。
実際そこには多くの実力者がいた。とても大きな助けになったことは間違いない。
だがやはり、すぐに漫画をかけるようになるとはいかなかった。
筆者はとりあえず、読切作品がかけるようになりたかった。せめて31p以上、描けるなら64p程度の作品をだ。
なぜかというと、尾田栄一郎先生だったか岸本先生だったかのお話で、連載準備期間に毎日のようにネームを編集に上げていたというのを聞いたからだ。そしてこれが実力向上に大きな助けになったとも。(まあ大抵の作家さんが経験することのようだが)
よく言う話で「漫画の面白さを分けるのはネーム」という話がある。漫画はネームまでの出来でほぼ9割以上良いものかどうかが決まってしまう。だからネーム力を高めることが大事なので、たくさんネームを描こう!ということのようだ。筆者はこれを真理だと思っている。以前デスノートのAキラ編がネーム状態で掲載されているのを読んだことがあるが、めちゃくちゃ面白くてひっくり返った。それからは漫画の本質はネームなんだとより思うようになっていった。

そういう事情もあり筆者は早いこと漫画の、ネームをたくさん描くフェーズに至りたいと思った。
そう、ここで今更打ち明けることになってしまったが、筆者はそれまでネームをまともに完成させることができなかったのだ。
まあテキトーに描いて1,2作完成させたことはある。でもそれは完成したとカウントすることはできないようなひどいものだ。クオリティが低いとか、面白くないとかいう話ではない。真剣に、本気で描いていないのだ。
つまり、わけもわからず、何も考えず、描きたいものも描けず、ただページを埋めるためだけに手を動かし、コマになにか漫画に似たシミを刻んでいっただけのただの紙切れを、僕は漫画だとは認められなかった。今も同じ考えだ。それはネームを完成させたことにはならない。

まずはまともに1作完成させたかった。ネームでいいから。
この段階ではすでに、漫画を完成させられない理由はプライドではなくなっていた。自分の才能を証明したいから完成させられないわけではなかった。(実際駄作と思えるものでもいくつか自作を公開していた。)
下手くそでも、つまんなくてもいい。自分の頭で話を考え、創意工夫し、好きなものを好きなように。自分の出せるものを出し切って、胸を張ってこれは自分の作品だといえるような作品を作りたかった。
そういうものを描けないと成長できないとも感じていた。実際、人に作品を見せて、貰った指摘部分は「特になにも考えていないからそう描いた」というものがばかりだった。というか全体がそうだから当然だが

もう少し魂こめて描かなければ意味がない。
そう思っていた時にもらったアドバイスとしては、「短いものを描くといいのでは」ということだった。いきなり50p60pのものは難しい。だからまずは4p、8p、12p・・・と増やしていくのがいいんじゃないかという話を頂いた。
確かに、それはそうかもしれない。50pとかを超えると体力が持たないと感じていた。まずは4p程度なら情熱が保つ。頭の中のイメージも失われない。
そしてもう一つは期限を設けるのがいいんじゃないかという話があった。締め切りを設定し、それを守って描けば完成させられるんじゃないかと。そしてなんと、その締切を設定してくれるということだ。確かにひとにせっつかれたほうがやりやすい。約束したなら守らなければいけないという意識も働くし。そういうわけで実際に4pの作品を2.3日程度の期限を設定してもらい描くことにした。
結果としては、描くこと自体はできた。とはいえ、描ききったあとの達成感はほぼ皆無だった。描きたいものが描けていない。そう感じた。読んでもらった感想は良い評価も悪い評価もあったが、特に耳には入らなかった。とにかく、自分がまたテキトーにコマを埋めるために絵を描いたという感覚への失望感だけが残っていた。
正直言えば自分が思ったより絵も一生懸命描いてていい感じだし(もちろん下手くそだ。その辺の美術部の高校生を捕まえたほうが確実に上手い絵を描く。自分にしては良く頑張ったというだけの話)話もそんなに悪いとも思えない。いや、悪いは悪いんだけど。成立はしてるというか。とにかく、クオリティに満足していないからモヤモヤしていたわけではない。「それ、描いてもしょうがない」という感じがあった。
これについてしばらく考えたが、結論としてはやはり、描きたいものが描けていないということが原因だと気付いた。

でもどうすればいい・・・?描きたいものってなんだ?
この時になってやっと、「それについて今一度考える必要がある。それを再確認しよう」、と思い立った。

表現の幅

漫画を描くうえで、様々な表現技法がある。演出においても、構図(カメラワーク)コマ割り、表情、エフェクト、セリフ等々。これらは漫画を魅力的に魅せる上で重要だ。そして、単に絵が上手いからこれらも上手くできるということはイコールにならないと思った。
これらの表現の幅を広げることが必要だ。まず構図。自分には様々なカメラワークを描く力が足りない。故に表現できる幅が狭まり、描けるジャンルも狭いんだという考えにたどり着く。自分の選ぶ構図はどれも似たりよったりで面白みがなかった。やはりプロの作品は構図が魅力的だ。見せ場をよりドラマチックに演出してくれている。これを身につける必要がある。
そのためにまずクロッキーをした。これにより人体のポーズとバリエーションを増やした。
また、構図の勉強として、「映画のポスターをネーム模写する」という練習法を教えてもらった。これにより画面構成を自分の手に覚え込ませることができた。
これらの練習はなかなか役に立った。以前よりも様々な構図が描ける様になったと思う。
とはいえ、だからといって急に漫画が描けるようにはならない。それはそうだろう。描きたいものがすぐ見つかるような方法ではないのだから。
力にはなったが、描きたいものを描けるようにするというのはそういうことではない気がした。もっと自分のなかの、好きなことをとかを深堀りすべきなのでは・・・?


好きなもの

これについても色々アドバイスを頂いた。モチベーションになるものがいい。性癖を描くといいという話もあった。好きなキャラとか・・・
性癖。。よくわからないな。男の娘とか?好きだが・・・ちょっと描いてみた。でも描きたいものか?微妙だな。見るのは好きだが。
好きなキャラを羅列して特徴の共通点を考えてみたがどうもイメージが膨らむわけではなかった。とはいえ発見も多く、幸せな気持ちになった。いずれこのルートで描くのも良さそうだ。今ではなさそうだが。

ジャンルはなにが描きたいだろう?改めて、好きなジャンルを考えてみた。
サイバーパンク、スポーツ(特にサッカー)、能力バトル、ミステリー、ホラー。。。この辺だろうか。サイバーパンクは世界観だから違うか?
ではそれらのジャンルで一本描いてみよう。一番思いつくのはサッカーだな。海外サッカーをよく観戦するのでこれを主題にしてみよう・・・

そしてプロットを考えてみた。すると150pはほしい長編よりのものになってしまった。別に悪くはないし、考えるのも楽しかった。描けるならこの長編でもいい気がしたが、まだ無理だ。
というか、好きなものイコール描きたいものなのか?この時点でそこにも疑問が生じてくる。確かに男の娘は好きだ。サッカーも、サイバーパンクも。見るのは楽しいが、それって描きたいものなんだろうか・・・
正直好きなものについてはここまでにかなり考えてみた。でも描きたい作品につながるわけではなかった。もしかしたらまだ深堀りが足りないのかもしれないが、やはり別の切り口が必要だと思えた。
もうこの時点でほぼ今の状態だ。描きたいものってなんだ?それ自体を追究しなければいけない。
でもそれはどうやるんだ?描きたいことの追究ってみんなどうやっているんだろうか・・・
今更だが、自分の好きな作品について、どこがどう気に入っているのか。それを確かめる必要があると思った。何に心を惹かれ、自分も描きたいと思えたのか。改めて考えてみると、筆者は自分が読みたい作品がそこまで世の中に多くないから自分で描かなければいけないという理由で漫画を描こうと思ったんだった。でも、「自分が読みたい漫画」についてあまり解像度高く理解していないんじゃないか・・・?改めて考える必要がある。今日、そう思った。

好きな作品について

まず好きな漫画を上げると
一番好きなのは スラムダンク、ハンターハンター、進撃の巨人、ドラゴンボール このあたり。上3つはトップタイといって良い
続くのは デスノート、左ききのエレン、ワンパンマン、ジョジョ このあたり
映画についても考えてみようということで列挙してみると
グッド・ウィル・ハンティング、ジョーカー、セッション、テネット
特に好きなのはこういう作品だ。
また、それ以外だと雨穴さんの作品や、SCP、クトゥルフ神話なんかも好きなコンテンツとして挙げられる。

色々な共通点が見えてくる。ハンターハンターや進撃、デスノでは「心理戦」や「頭脳戦、駆け引き」なんかが魅力的だ。
また、それにテネットやSCP,雨穴さんも加えると「ミステリー」や「謎解き」要素が特徴の作品群であるのが見て取れる。伏線回収や不可解な点が解消される爽快感、複数の事象がつながる気持ちよさが素晴らしい作品だ。

他にもハンタとワンパンマン、ジョジョは「能力バトル」という共通点があったり
セッション、スラダン、左ききのエレンは「スポ根」「ストイック」「情熱的」という共通点があったりする。
セッション、左ききのエレン、SCP、クトゥルフには「狂気的」という共通点もある。(方向性は違うが)

とりあえずミステリー要素について考察していこうか。
謎というものはひとを惹きつけるものだ。不可解なことが現象が起きたり真実が伏せられたりすると、その答えを知りたくなる。
これについて最も巧みなのはやはり雨穴さんだと思われる。数々の不可解な要素。細かな違和感。それが最後にすべてつながり謎が解ける爽快感。たまらない。これを構築するにはどうすればいいか。

頭脳戦や心理戦も美しい。デスノやハンタはまさにこれがメインの魅力だ。
どういう戦いの構図で生まれうるのか?特にクラピカが主人公として立ち回っているとこの心理戦は生まれやすいと感じる。果たしてどういう要素がそれを起こすのか。
2つの要因がある。クラピカのキャラクター性と能力。これについて考えたい。
まずクラピカのキャラクター性の背景を考えると、クルタ族で故郷を滅ぼされたということがある。故に復讐を目的にしている。
また性格は冷静で思慮深い。そして目的のためなら割と手段を選ばず、清濁を併せ持てる。知的なキャラだ。これらの要素は心理戦をさせるのに重要だと思える。
次に能力。五本の指に具現化された鎖はそれぞれ別の能力を持っている。ジャッジメントチェーンは特に面白く、使い道が色々考えられる。他の能力もかなり応用の幅が広いものがある。
この「能力の行使への強い動機」と「能力の応用の幅の広さ」は頭脳戦、心理戦をさせるのに重要な要素だ。デスノでも同じことが言える。
結構見えてきたな。このルートで深堀りするのが良さそうだ。
最近もらったアドバイスで「自分が漫画に何を求めているのか」を考えるのが大事という話があったけど、あれは正しかったな。
つまり描きたいものの追究だな。それをやり続ける必要がある。
もっと続けたいところだけれども、眠くなってきたしヤニも切れた。この辺で終わりにしとこう。


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