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初めて胃カメラを飲んだ話。 (ただし、検査後スルスルっと医師の手元に、カメラは無事戻った)
横になった私の喉の奥に、ズルっズルっと差し込まれるたびにオエッとなる。 医師の手には、まだまだ差し込めそうな長いスコープ。 モニターには、汚いピンク色のトンネル。 そして、背中には天使の掌・・・
〜〜☆☆〜〜
緊急宣言が解除された頃。 私は地方にある当社の静かな営業所にいた。 ここは静かに時間が流れるところで、ゆっくりと仕事に打ち込める。 たまにしか来ないが、事務員さんとも仲良くなった。
事務員(年齢非公開)さん「もう、健康診断って受けましたか?」
そう言えば、メールで案内が届いていたな。 人数を凄く絞って、予約を受け付けているようなので、早目に申し込んどかないと…と思いながら放置していたかも。 できれば、7月中に受けておきたいところ。
私「まだですよ。 何かめんどくさいんですよねー」 メールは多分、未開封のまま。
(たまにお邪魔する営業所の)事務員さん「そうそう。 バリウムとか苦痛だし、ついつい先延ばしにしちゃうよね」
私「あっ、私・・・実はバリウムって飲んだことがないんです。 いっつも断ってて・・・。」
(驚きの)事務員さん「えっ…えー そんなことできるの?」
私「できますよ。 受付の時にいらねーって言うだけ・・・ 簡単でしょ?」
調べてみると、実は微妙な話。 労働安全衛生法では、会社は従業員に対して、健康診断を実施しなければならないと規定されている。 それにバリウムが含まれるかは微妙な感じ。 詳細は、自分でググってみてね。 そして、私の行為が非難されるとしても今日、胃カメラを飲んだから許してね。
(心配性の)事務員さん『えっ、でも検査を受けないと心配じゃないですか?』
私「まあ、最悪何かあった時は・・・そん時はそん時で、諦めると言うことで… ヘラヘラヘラ」
(少しお怒りの)事務員さん「ダメです。 そんなのダメです。 今年は受けなさい。」
何か微妙に豹変した…
私「ハイ、受けます…」
事務員さん(優しいお姉さん)「必ず受けてくださいね。」
斯くして、お腹の弱さと諦めと潔さに定評のある私は、グーグルさんで熱心に調べて、バリウムではなく胃カメラを選択し、健康診断に挑むこととなった。
〜〜☆☆〜〜
ここ何年か健康診断でお世話になっている病院で、受付を朝一に済ませ、順番に検査受ける。
そして、そしてその時が来たーー
(お姉さんな)看護師さん「胃カメラの検査を受けたことってありますか?」
私「いいえ、初めてです。 無いんですけど、やめた方が良いですか?」意外と諦めが悪かった私。 もしかしたら、やらずに帰られるかも・・・とか一瞬考えた。
(断固たる決意の)看護師さん「大丈夫ですよ」と、天使の微笑み。(でも逃げられないやつ)
まずは、検査前に胃の中の空気を消す?薬…をいただいた。
その後、麻酔薬。 コレを喉の奥に溜めておけ…と? なかなか高いレベルの技術が要求される話です。 喉の奥に溜める・・・?? 次第に口の中には麻痺する感覚が… でも、喉の奥までちゃんときいてるの? 意外と諦めの悪い私。 コレ、ホントに大丈夫顔の私。 そんな不安そう顔の私を、断固たる決意顔で案内する検査をスムーズに進めたい看護師。
(逃げ場を塞ぐ)看護師「こちらに横向きになって、寝てください」
丸くなって、横になる私。 防御の姿勢。 「力を抜いてください」とポンポンする看護師。
差し込まれていくカメラ。 これは… 気持ち悪くて、オエッオエッってなるし、喉の奥の異物感がすごい。 そして、目には大量の涙。 号泣状態。 検査中、ずっとモニターを見てました。 まだ誰にも見られた事の無い私の奥の奥。 ヒダヒダだったり、ヌメヌメだったり、何だか官能的だ。(でも、オエッオエッゆーてる、ゆーてもうてる・・・)
その時、背中を優しくさすられていた。 天使の掌。 コレは惚れてまうやん・・・。 顔も見てないけど…(最初の看護師さんと違う人ですね) そして、そんな余裕も無いけど・・・
お顔を拝見できたのは、検査後。 私の顔は、ヨダレと涙で、号泣したあとのよう。 涙を拭きながら、三角座りの私。 多分、失恋した・・・笑
(冷静な)医師「特に問題ありませんでしたよ。」
検査結果は、異常なしでした。
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貴重な経験でした。 検査していただいた方は、どなたもプロ意識が高く親切で良い方ばかりでした。 本当にありがとうございました。
ただ、未だに残る喉の奥とそのさらに奥の異物感・・・ まさか・・・まさかね? 医師の手元に戻ったよね・・・。
(完)