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とてつもなく希望を持つのをやめようとする


半透明の蒼空は
虹が架かりそうな気配を纏い
じっとしている
冬の夕暮れ待ち

烏の群れに紛れて
薄橙が青にしだいに染みてくる
この不安定な時間に
僅かな期待をもって空を見上げる

走り出す学校帰りの子供たち
自転車のペダルの重さに眉をひそめるおじさん
飼い主の足元に寝そべる仔犬
この時間の公園に
それぞれの夕暮れの支度が始まっている


生きていくことの不安
明日笑っていられるかなんて誰もわからないけれど
期待ばかり
とてつもなく希望を持つばかり
やめよう、そんな明日

なるようにしかならない
いや、
なるようになる


今日の精いっぱいを褒めたたえて
明日に続く今日になびくだけでじゅうぶんだから

寒くて冷えた指先を
擦り合わせてあたためながら
ぼくらの未来に何かが始まることを予言する雲を
信頼しないで待つ


きっと
虹は見えない。

きっと、いつもの夕暮れだ。



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