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アイアンマンジャパン みなみ北海道
大会の紹介からトレーニング、本番までの過ごし方やレースレポ、費用関係にいたるまで一挙公開!
はじめに
非常に長いですが(笑)、アイアンマンに少しでも興味のある方のご参考になればと思い、徒然なるままにそこはかとなく書きつくってみました。
アイアンマンとは
トライアスロンのロングディスタンスの代表選手のような大会で、スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2kmを走り抜く過酷なレースです。
ワールドトライアスロンコーポレーションという団体が主催しており、「アイアンマン」はこのWTCの登録商標のため、世界各地で行われている「アイアンマンレース」を完走しないとアイアンマンを名乗れない、という大人の事情があります。
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佐渡トライアスロンAタイプ(アイアンマンより長い)を完走しても、私はアイアンマンです、と名乗れないのはこのためです。
そしてこのアイアンマン、とにかくエントリーフィーが高い。バカ高い。笑
私がアイアンマンジャパンを申し込んだ日のドル円レートで、エントリー費が約13万円。ひぇっ。
でもその1,500人の枠がまさに「一瞬」で埋まってしまったんですね。トライアスリートの財力って恐ろしいですね。
選手登録や競技説明会も2日前までに済ませるのが必須なので、長めのお休みを勝ち取る仕事調整力も必要です。
そして、その第一関門を突破したトライアスリートが次にやることは、練習です。
ロングディスタンスの練習
自分なりに約半年間準備してきました。
スイム以外、コーチはいません。全部自己流です。
大まかなリズムですが、平日は週2で朝スイム、週1~2でラン(主にジョグ10km)、週末はロングライドや、TTバイクでポジションに慣れるためにサイクリングロードを走るというやり方。
◎スイム
大きな変化は、早朝スイムを始めたこと。アスロニアさん主催のスイムスクールの門戸を叩き、トライアスリートに囲まれて、トライアスリートによるトライアスロンのための練習内容に必死でついていく。ここで泳力が上がった気がします。
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なお、スクールの中で私が一番遅い。
朝6:30~というのも、本番スタート時間とだいたい同じなので、それも良かったです。さらに伊豆に海合宿しに行ったり、OWSの大会でみんなともみくちゃになりながら泳ぐのに慣れたりもしました。
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ウェットスーツもアスロニアのを新調。
◎バイク
しろさとTT50km、ひたちなかTT180kmに出場し、同じ体勢でずっと走り続ける過酷さを身をもって体感。180kmに至っては、気が触れる寸前の距離と時間だということがわかり、それもいい経験になりました。
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◎ラン30km走を2回やった他は、10kmジョグで繋ぎました。ロング走は絶対にやっておいた方がいいです。
そんなこんなで自分なりに体を作っていきました。
大会前の試練
大変なこともありました。
私、喘息持ちなのですが、大会2か月前から咳が止まらなくなり、軽い運動でもしんどくなったんです。大きく息を吸うと、呼吸がひゅーひゅーする。肺に空気がうまく入らない。
吸入薬を増やし、強めの咳止めの錠剤も処方してもらい、やっと治まったのが大会前3週間…。
また、頑張り続けてきたことにメンタルが少し疲れ、友達に弱音を吐露したりもしました。いろんなアドバイスをもらえました。水をよく飲むこと、岩塩を普段から摂取すること、少しフルレストして心身をフレッシュに整えること。
さらに、プロの選手をされてる方からの「焦る→何かをしなくちゃと思い無理に練習をする→さらに疲れる、という悪循環より、メンタルが安定してる状態で練習量が少ない方が強い」「パフォーマンスはメンタルにとても左右される」とのアドバイスも刺さりました。
また、運動量が多すぎたのか、体重がどんどん減少し、半年で5kg減り、49kgへ。50を切ったのは小学生以来。
文字通りガリガリで腕の血管が浮き、普段の生活でも力が出ず、食事量を頑張って増やしてやっと50まで戻して大会を迎えました。
その影響か、生理が2ヶ月ほど止まり、生物としても生存の危機。
ぶっちゃけアイアンマンは、健康に良くないです。健康のためにトライアスロンをやるならミドルまで。これ覚えといて。笑
バイクの運び方、移動手段
これは、本当に悩みました。
参加者の中には何パターンかいらっしゃったと思います。
①シーコン(か、バイク用の箱)と共に飛行機
②シーコンと共に新幹線
③バイクを完成車のまま送ってもらうサービスを利用(梱包組み立て必要なし、約4万円の富豪プラン)
④バイクをダンボールに詰めて先に函館に送る
私は④。これ、とてもオススメです。
女が一人で、家からシーコンとスーツケースをゴロゴロ引いて電車移動するのは不可能と判断。重すぎるのと荷物が大きすぎて。男性ならまだ行けるのかな。さらに、北海道新幹線は特大荷物スペースが予約できないため、もし先客がいたらオワリ、という理由もありました。
TTバイクを分解し、200サイズのダンボールに詰めて、最寄りのヤマト運輸の営業所に持ち込み→函館のヤマト営業所で受け取り→宿で組み立て。
送料はなんと片道5,000円。安!
ちゃんと「ワレモノ注意」「横倒し厳禁」で丁寧に運んでくれました。
ダンボールの中にヘルメット、ウェットスーツ、シューズ2足、ウェア、小物類など入れられるだけ入れ、当日の荷物も少なく済みました。
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分解・組立ては、バイクに詳しいトライアスロン友達の木村さんに手伝ってもらい、ほとんどやってもらい、無事に組み直せました。本当に感謝してもしきれないです。
自分自身の移動は北海道新幹線。4時間は意外とあっという間でした。
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(当初、シーコンを貸してくれる約束をしていたTさん、その節はありがとうございました)
宿について
この方式を取った人、今回どれくらいいるんだろうか。
『Airbnbで民泊』。
私ミンパクなんてしたことなかったのでそんなアイデア思いつきもしなかったのですが、一緒に行った修平さんが最高の宿をとってくれました。
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普通のアパートの一室を借りて、好きな時間に出入りし、料理や洗濯・乾燥もやりたい放題。お風呂もキレイでアメニティ・タオルもほぼ全部揃ってる。
キッチン周りが、我が家かな?くらい充実していたので、皆でジンギスカン鍋を作ったり魚を焼いたり、鰤のあら汁を作ったり、もうやりたい放題。
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(臭みもなく、柔らかくて美味しい)
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手際良すぎか!!笑
寝室も3つ(ベッドは各部屋2つずつ)あり、人数の関係で私一人で一部屋使わせてもらいました。
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Airbnbいいかもしれない。
あと、レンタカーを借りたので函館での移動は全て車。かんぺき。
函館上陸から当日までの過ごし方
イカ釣ったりサイクリングしたりアスリートチェックインしたりしましたが、細かいことは割愛します。
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お友達にも何人も会えました。
あ、ここで書くのが妥当かはわかりませんが、今回のエントリーは約1,500人(200人が外国勢)だったそうです。完走者は1,310人、女性完走者は142人でした。一割強も女性がいたんですね。てゆか完走率高い!
ではさっそくレース内容へ。
スイム3.8km
スイム3.8km
1時間26分31秒
2′17″/100m
12位/年代別、56位/女性全体、574位/全体
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函館の気温は涼しく、朝の気温は19°C。水温は21°C。暑くも寒くもなくお天気は曇り。こんな最高のコンディション、もう二度とない気がする。
コースは1.9kmを2周回。1周終わったら、一度陸に上がれます。
5人ごとにローリングスタートでバトルが起きにくく、安心安全のスタート方法でした。
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クラゲいたら多分こんな笑顔ではいられない。
100mほどの遠浅なのでしばらく歩き、実際泳いだのは3.4kmくらいではないですかね。
前日の雨で砂が撒き上がり、浜に近いとこほど濁って何も見えませんでした。
視界はほぼゼロでしたが、波は低く流れもそんなになく泳ぎやすかったです。
参加者は百戦錬磨の経験豊富な方たちだったので、接触したらお互いをうまくいなし、よけ合い、平泳ぎもおらず、ターンブイでも混んでるのにも関わらずストレスなくずーっとマイペースでいけました。
周りをよく見れて、他の選手を尊重してくれる方ばかりでした。
私はタイムを狙うほど速くないので、一番重要なことは「バトルで神経をすり減らさず、マイペースにほぼノーキックで泳ぎ抜くこと」。
無事に達成出来ました。
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トランジション(T1)
ここは個人的に大事にしたいところ。
ウェットスーツを脱いでアームカバー(日焼け対策)を着け、ふくらはぎのカーフカバー(日焼け対策&攣り対策)を着け、靴下を履き、シャモアクリームをたっぷり塗り、日焼け止めもしーーーっかり塗って、約14分。
長いと言えば長いけど、その次の180km6時間半をいかに快適にストレスフリーで走るかを考えると、ここで万全の準備をしておくべきですね。
日焼け対策を怠った場合、もし太陽光が燦々と降り注ぐと暑さにやられるし、シャモアクリームを塗らないとお股が痛いし、忘れ物でもしたら致命傷です。
バイク180km
バイク180km
6時間30分10秒
27.7km/h
7位/年代別、35位/女性全体、476位/全体
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これは皆さんご存知かと思いますが、トライアスロンはドラフティング禁止。誰のことも風よけに使えず、自分の力で走らなくてはいけません。ノンドラって本当につらい。誰か牽いて。(だめ)
バイクパートでも、皆さん紳士&淑女なんですよね。さすがアイアンマン。
ドラフティングしてる人は皆無でしたし、怒鳴ったりオラつく人もいませんでした。(そもそもちゃんと皆さんキープレフトしていた)
コースはアップダウンがちょいちょいある高速道路で、最大斜度は6%くらい。そこだけヒルクライム大会でしたが、とにかく走りやすい。路面がきれい。高速道路最高。
パワーゴリゴリ系の選手たちは登りで苦戦しているように見えました。
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斜度2%以上は上体を起こしてブルホーンポジションでくるくる回し、平地だけDHポジション。
当初の目論見が外れて補給食が足りなくなる危機にも見舞われましたが、エイドでアミノバイタル(赤)を見つけ、歓喜の涙を流し、3つ(300kcal)追加摂取。ぶっ倒れるところだった。ありがたい…。
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ここまでわざわざ移動して応援してくれた。
私のイチオシ補給食は、ライスピュレです。ジェル以上固形物未満の補給食を探していたところ、奇跡の邂逅。
お粥を少し固くした版みたいな。味も豊富で満足感ありです。
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路面はでこぼこ区間もありましたが、すべすべ区間がほとんど。主催者曰く、「大会前にバイクコースの部分だけ、道路の補修工事が突然行われたんです。大きな声では言えませんが、そういうことです。」と。
うぅ…ありがたい…。
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エイドのボランティアスタッフの方々が笑顔で元気よく声をたくさんかけてくれて、何度救われたか。スタッフさんに心から感謝申し上げます。
ひたちなかTTで気が狂いかけた時と比べ、正気のままゴールできました。
補給足りなかったけど。
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あ、そうそう、エイドではボトルごとドリンクを受け取れます。水とスポドリ。スタート時は捨てボトルを2本装着していき、ゴミ箱にシュートしてから新しいのを受け取る方式です。ここでアイアンマンボトルをゲットできたのは実に狙い通り。大事にしよ!
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宝物にするー。(写真:公式)
T2
ラックにバイクをかけ、ヘルメットを脱ぎ、シューズを履き替え、ランギアバッグに全部突っ込んでスタッフに預け、8分25秒。
この時確信したのが「バイクとランは使う筋肉がやっぱり違う」
バイク終わりかけの頃痛みが出てきた膝裏は、何もなかったかのように完治。(完治ではない)
ラン42.2km
ラン42.2km
4時間34分27秒
6′31″/km
10位/年代別、39位/女性全体、364位/全体
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さぁ、ラストです。
ラストと言ってもフルマラソンですが。
木古内の市街地や、街灯のない田んぼの横を走る14km×3周コース。
市街地での応援が本当に温かい。地元の方々が、みんなに「がんばれー」て手を振ってくれるの。
嬉しすぎるのと、曇り空で涼しくて心に余裕があったので、ほぼ全員に手を振り返せました。
嬉しかったのが、これ!!↓
同宿だったGreenmanさんみずきさん夫妻が、夜なべして作ってくれました。
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エイドと御手洗は2kmごとにあります。
水分は、水、スポドリ、コーラ。
食べ物は、バナナ(1本丸ごと)、アミノバイタル赤・青、塩タブ、じゃがりこ、オレオ、リッツ。塩っ気と甘いの・固形物と流動食が揃っててとてもバランスが良かったです。
バイク終了時点でエネルギーが足りてなさすぎて、ハンガーノック寸前。最初のエイドでバナナ1本丸呑みし、2つ目のエイドでもさらにもう1本丸呑み。コーラと塩飴もぶち込んで、やっと戦える体に。
キロ6を目指したつもりが、ひどいガチャガチャのペース。エイド寄ったり御手洗(2回行った)に寄ると、そこで1~2分ロスするからですね。
そして周回の終盤にえぐい登り降り&ヘアピンがありますが、そこ以外はどフラット。わがままを言えば、あの登り降りとヘアピンカーブがないコースがいいかもしれない。いや、絶対ない方がいい。来年に期待。
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また、体調不良者や歩いてる人が少なかった印象ですね。やはり一日中涼しく曇り空だったのがよかったのかも。熱中症で倒れた人はいなかったのでは?(35°Cの佐渡ではバタバタそこら辺でぶっ倒れてた)
さて、3周目に入る6時頃から本格的に日が落ち、闇の中へ。
「パーソナルニーズバッグ」がとても助かりました。(当日預けるバッグで、中には補給食や追加するウェア、頭に着けるヘッドライトなどを入れられます。走ってる最中に自分専用の補給や装備の見直し、要らない物の預け直しなども可能)
田んぼコースは文字通り真っ暗闇。どこが田んぼと道の境目なのかわからないレベルです。だって街灯がないんだもん。そこで役立つのがヘッドライト。
トレイルランナーたちがよく着けてますよね。あれを着けている他のランナーさんの光に助けられました。(私のは電源が上手く点かず、頭に重りを乗っけてるだけになったぴえん)
トライアスロンは最後まで何が起こるか分からないから、最後の5kmくらいまでは「これ、いけるぞ」という確信がどうしても持てなくて。
足が痛くなって走れなくなるかもしれない、お腹痛くなるかもしれない、暗くて道の凸凹が見えなくてコケるかもしれない。
そんな長い長い4時間超を終え、37kmくらいの地点に差し掛かって、やっと確信に変わりました。
『わたし、、、アイアンマンになれる!!…(かも)』
ここからは幸せホルモン・ドーパミン、セロトニン、エンドルフィン、さらにアドレナリンも総動員で大量分泌され、脳内をドバーン!と駆け巡り、興奮と感激と満足感と自己肯定感、これまでの苦労と練習が報われた自信とで感情がごっちゃごちゃ。
ゴールする時どんなポーズしようかなぁとイメトレを行い、足の痛みも忘れてウッキウキで走り抜けました。
そして前の人がゴールして、横にはけたのをしっかり見届けて(写真は自分一人で写りたいじゃん??(笑)そこだけ冷静)、感動のゴール。
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タイムは12時間54分21秒でした。
年代別9位、女性全体40位、男女全体407位。
いちお、全部上位約3分の1に入れたからいいんじゃない?!
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この考え方も素敵じゃない?
佐渡でさえ、ゴールした時泣くことはなかったんですが、さすがにアイアンマンはうるっときました。アイアンマンの称号ってこんなに嬉しいものなんだなって。一人で黙々練習したこと、喘息にやられたこと、メンタルが一瞬疲れて折れかけたこと、いろんなことが記憶に蘇り、
「アイアンマンは人生だな…」と。
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T3
ハッピーな気分もそこそこに、バイクをその日にピックアップし、近くに停めてあった車に積み、着替えもせず、30km1時間かけて木古内から函館まで帰宿。
4種目目・バイクパッキング
次の日バタバタすることが分かっていたのでその日のうちにまたバイクを分解して、ダンボールに詰めるところまでみんなで協力して行い、本当の意味でレースが終わったのは、この日の夜中2時でした。(就寝)
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そして次の日も無事にヤマトに持ち込み発送し、新幹線で帰京。
宿や移動を御一緒させて頂いた木村さん、修平さん、Greenmanさん、みずきさん、本当にありがとうございました!
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アイアンマン完走の感想
トライアスロンを始めた頃は、このレースの存在を聞いた時、どうしてそんなに生き急ぐのか全く理解できなくて、みんな頭のネジが全部外れちゃったんじゃないかと心底心配してたんです。
自分がそれに憧れて、チャンスを掴んで、目指して、ほんとにアイアンマンになっちゃうなんて、人生はわからない。
達成感は想像以上でした。
トライアスロンやアイアンマンに少しでも興味があるなら、今からチャレンジした方がいいです。
「これからの人生の中で、一番若いのは今日!」
て誰かが言ってた!
頭おかしいとか変態とかイカれてるとか強いとか、これ以上の褒め言葉はないので、私に会った際はぜひそのようにお声がけください。
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費用関係
みんな気になる予算関係だよ!一挙公開!
エントリー費 123,000円($863)
写真代(先払い)9,000円($64)
新幹線 往復45,000円
バイク郵送費 往復10,000円
宿代 4泊 32,000円
レンタカー1人あたり 15,000円
現地での食事代 合計10,000円
あとはお土産とか公式グッズなど。
全部で30万円いかないくらいでした。
ご参考になれば。
アイアンマンは富豪のスポーツと揶揄されてますが、否定はしません。金はかかります。
上記に加え、機材、スイムの月会費もバカになりません。年に数回の出番しかないのに、TTバイク1台に100万近く捧げられるのか、財布の紐の緩さも問われます。
出場者の平均年齢も平均年収もどちらも高いと言われているのはそういう背景があるんですね。
価値観は人それぞれですが、私には、それだけの価値がある経験になったと感じました。
あと、女性ならではの質問とかあったら、個別にお答えもできますので遠慮なく聞いてくださいね!
おしまい!ご清聴ありがとうございました!
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何度夢に見たか…。