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詩誌「光」巻頭詩②Arim

「種が眠る街 」
Arim

どこに行けばいいのか、出口を探している。
本当は入口を見つけたいのだけれど、
入口ばかり見つけていたら、周り中が入口となり
希望の鐘が聞こえる平穏が失われていきはじめた。
壁という壁にある扉は、
ソレハウラトオモテガフメイ
となるように並びだし、
めびうすの輪が時々答えのように顔をみせた。
出口なのか入口なのか、
こうなると寓話的な出口の意味も
入口の意味も消えていくのだった。
いやいや、いつからだろう、
入ることが、未知の遠い希望の道のりが
始まる扉とするならば、
出ることは、覆い被さる窒息寸前の重圧から
開放される扉。

私の中の、
入口と出口のもたらす自由という
近代の憧れを抱いてきた看板が交差し、
互い違いに入れ替わっていくのだった。
あぁそれは、積み重ねてきた時間の既成の善悪が
崩壊していく現代の意味のように。
昨日も今日も押しつぶされ続ける心が、
空の太陽を見上げている。
溶けていく入口という幻想の弓矢を見上げるように。
種が眠る街。

Arim

山梨県在住。 詩人、シンガーソングライター。
・詩集『月がまるみをおびる地点まで』『ひかり』『永遠のポンプ』『青空のかけら』
・絵本『猫のペコリ』
・CD『きみのもとへ』、EP『Love For You, For Gaza, For the Children Arim』。ーFor Gaza, For the Childrenーの収益をJVCさんに寄付しガザの子供達への支援に役立てて頂くチャリティープロジェクトを継続中です。
・天童大人プロデュースProjet Voix des Poetes(詩人の聲)にて、都内にて自作詩の朗読“聲を撃ち込む“参加中。

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