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超訳 二水遺稿〜3曲目「翳りゆく部屋」

BGM荒井由実「翳りゆく部屋」

二水と徳富蘇峰の関係を追っていくうちに、凄いことに行きあたった。

昭和10年に辰巳長楽の編で(ちなみにこの辰巳長楽は吉野史ではかなり重要人物らしい)、芳野魂鼓吹吟詩集が編纂されている。

この漢詩集、収録されている漢詩人は古から近代までのスーパー漢詩人たちばかり。

「芳野三絶ノ一」の梁川星巌はじめ、上杉謙信、西郷南洲(隆盛)、吉田松陰、頼山陽、藤田東湖、土井晩翠、犬飼木堂(毅)、明治の三詩人の一人 小野湖山など、まさにぶっ飛んでしまうくらいの有名人ばかりだ。

ここに、徳富蘇峰も作品が選ばれている。

それはわかる。それはさもあらん。しかし、なんとこの重鎮たちの中に大橋二水の名前があるとなるとどうなるか。僕が知らないだけで、当時遠く越中から吉野まで名前が通るほど、二水の詩は評価されていたのか?

だとしたら、現在の評価は解せない。調べを進めると、徳富蘇峰記念館の蘇峰の手紙一覧に辰巳長楽の名前がある。間違いなく辰巳長楽と徳富蘇峰は知縁である。

ここから先は推測だが、大橋二水を高く評価していたのは、徳富蘇峰ではないか!何かドキドキしてきた。辰巳長楽に大橋二水を推薦、あるいは紹介したのは、徳富蘇峰ではないか?

思った以上に二人の関係は深いのかもしれない。思わぬ方向に、この 超訳 二水遺稿は向かって行きそうだが、流れるままに行こう。この「芳野魂鼓吹吟詩集」探してます。なかなか見つからない。

その「芳野魂鼓吹吟詩集」に掲載されているはずの、二水の作品「宗信公二」は残念ながら、二水遺稿には載っていなかった。

しかし、おそらくその詩を書いた同じ時であろう吉野の詩が2篇掲載されている。そのうちの一つ。

雪中遊吉野山

北狩南巡憶旧時 三朝事績総堪悲

我来憑弔天方雪 比似晩花又発時

超訳

覚えているかい?幾多の王がこの吉野にやってきた栄華の時代を。

「さあさあ踊れ、歌え。狩れ。」

覚えているかい?戦いに破れた悲しみの者たちの暗鬱な足音を。

「さあさあ逃げろ。隠れろ。匿え。」

私は、そんな喜びも悲しみも一人弔いにきた。

満天の雪が空から降り注ぐ。

満天の雪が空から降り注ぐ。

遅咲きの花が狂い咲きするかのように、それは狂気に満ちた美しさ。


「窓辺に置いた椅子にもたれあなたは夕陽見てた  投げやりな別れの気配を横顔に漂わせ」(翳りゆく部屋 荒井由実)

ユーミンはやはり荒井由実の時代が良い。

Painter kuro


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