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人生の転機

私が「七奈」として意識を持ち始めた頃から、いい方向に舵を向けてる気がする。

私が生まれた頃は、統括は居たけどほぼ機能してる状態ではなかった。統括の意見なんて聞けなくて、聞きたくても聞くことが出来なかった。
とにかく暴れる、自傷する、見てもらうために動いていて、この身体は馬車馬なんじゃないかと思うレベルで制御が効かなかった。

入院中の問題行動は数え切れない程ある。

統括も悩んでいたし、言うことを聞けない私も悩んでいて、どうして意思に反して身体が動いてしまうのか、ずっと疑問に思っていた。
改善しようと考えていても、どんなに悩みに近づこうとしても、悩みの前には壁があり、根源にたどり着くことが出来なかった。

そのうち、私はこの悩みに近づくことを諦めた。暴れる身体を見ていても、対処することが出来ないのなら何も変わらない。と考えるようになって対処することを諦めた。
この頃には当時住んでたGHの世話人にハサミを振りかざすレベルまで追い込まれていた。

そんな中飛び降りた。

今までゴミを見るような目で見られていて、診察無しで保護室にぶち込まれ放置。というような環境から抜け出すための行動化。これは人生の転機とも言える。

飛び降りて入院した先では「やりたくてやってる訳じゃない」という言葉を信じてくれる人に出会えて、問題行動の中身を見てくれる人に出会うことが出来た。
病院で話を聞いてくれるなんて初めてで、心がほぐれる感覚になった。

嬉しかった。この人たちを裏切らないようにしよう。そう決意していたけれど。

いい方向に向かっていくと同時に、莫大な希死念慮が襲ってきた。落ち着かせようとすればするほど心は荒ぶり、自分の制御が効かなくなっていった。

問題行動が相次ぎ、開放から閉鎖に移棟、退院しGHへ。そこでも問題行動を起こし強制退去、病棟を出禁になるほどの事件を起こした。

回復しようとしたらするほど、行動は悪化した。

退院して一人暮らし、訪問看護を利用するようになってしばらくしたある日、今まで感じたことの無いレベルの感情、寂しさが押し寄せてくる。

「絶対ODでは搬送されない」という考えを私は強く持っていたが、深夜に100t以上の薬を入れて、訪看に「助けてよ!!!」と電話をかけて叫んだ。
訪看も「いつもと違う」と判断した。

この日に灰音という名前の人格が生まれた。
彼は「今まで押し付けられてきて寂しかった。自傷を報告したら見て貰えたから、やってた。ぼくは人に見てもらいたい。安心が欲しい」という旨を主張した。

この「見てもらいたい」という気持ちは、私が今まで押さえつけていた感情のひとつだ。

灰音の後は、月菜が人格となる。

「誰も私の気持ちに気づいてくれないから、知鶴に看護師を殴らせてた。看護師を殴れば止めてくれるから、見てもらうために殴らせてた」

今までの「やりたくないのにやる」行動の辻褄が合った。感情だった頃の月菜が、人格の行動を支配していたのだ。

この2人に共通してるのは「見てもらいたい」という気持ちが強いこと。
この気持ちを「ダメ」として押し殺して、この感情を無いものとして扱い続けた末路だと捉えている。

灰音と月菜が人格となってから、この2人はたくさんの記録を残した。

押し殺されて冷たかったこと、寂しかったこと、苦しかったこと。沢山聞いた。時にはこの気持ちを強制的に見せられることもあった。

でも、その度に助けてくれたのは訪看だ。

訪看は私が「ダメ」と押し殺した気持ちを全て受けいれてくれた。本当に暖かくて、否定をされない安心感を初めて私は知ることが出来た。

この暖かさを貰ってから、私の行動は以前よりも落ち着き、感情的になることはあれど「問題行動」のレベルまで暴走することはなくなった。

灰音と月菜が人格となって会話ができるようになってから、格段に生きやすくなったのだ。

本来、人は持ったらダメな感情なんてなくて、どんな感情も受け入れられるべきなんだと気づくことが出来た。

この4年間、本当にたくさんの経験をした。
人として扱われず、法律違反をしてる病院での生活、飛び降りるまでの絶望的な日々、感情を「ダメだ」と殺してきた日々。これら全てを自分の糧として吸収できたことを誇りに思いたい。

色々あったけれど、乗り越えられたかな。

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