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基礎ハンチをなくしてシンプルな基礎で強度を出すには?

 日本人はコストダウンが好きです。住宅の設計施工でもそうです。特に基礎はかなりコストダウンされています。ベタ基礎とかで一見強くなっているように見えますが、実際構造計算してみると??なものが多いです。

 さて、そんななか、構造的に妥協せずに、コストを下げて水害にも地震にも強い住宅を・・・ということで、2014年に実験住宅を設計しました(実際に建っています)。

 その住宅は、一般的な施工者設計者が嫌がる「ハンチ」がまったくないベタ基礎です。つまり基礎の底盤は、真っ平らです。そして人通口など面倒臭い施工もまったくなし!それでいて構造計算でOKが出る・・・という夢の基礎です(自分でいうな)。

 

形状はメチャクチャ単純です。配筋だけでコントロールしています。

 細かい部分は企業秘密(・・・)ですが、概ね上のような設計です。外周部は左側の形、内周部は右側の形です。ハンチなどは配筋しにくいだけでなく、コンクリート充填も面倒です。そのような人為的ミスを減らし、建築基準法に照らして、やれるだけやってみよう、という感じです。根入れ120は建築基準法上の最低の根入れです。スラブがGL+50なので、170のスラブです。このスラブで安全になるように構造計算を行い、区画と配筋を決定しました。120の根入れだと地盤が心配では?と思うかもしれません。これを実現するためには、地盤改良などがある場合とか、精緻な地盤調査などで地盤に不安要素がないとか、上部構造が軽いとか、いくつかの条件が出てきます。ちなみに実験住宅は8年くらい経ちますが、地盤沈下もヒビ割れもなく、いたって健康状態です。

 これを実現するためには、内周部の基礎にハンチを発生させない設計が必要です。一番簡単なのは人通口を作らないこと。実験住宅では基礎に人通口を設けていません。各基礎の区画毎に、床下点検口兼床下収納を設けています。収納が増えるだけでなく点検しやすくなります。基礎高を高くしているため湿気もほとんどなく水の浸入もありません。キッチンから遠いこともあり、いろんな物の保存に使っているようですが、問題ありません。基礎に人通口を作らないと、配筋が異常に楽になります。人通口補強筋も不要です。非常にシンプルな配筋となります。

 もう一つの工夫が、基礎は必ず十字に直行させています(外周部はT)。しかもその部分は基礎幅を太めにしています。そのため、配筋が非常にシンプルになります。もちろんこれらの努力により鉄筋量も激減します。

 現場からの評判は非常に高いです。施工しやすいからです。配筋しやすいだけでなく、コンクリート打設も楽でした。なので時間の節約にもなります。正直、ここまで時短になるとは思いませんでした。

 その他のメリットは、基礎高を高くしたので、若干ですが水害に遭いにくいです。全域GL+450で切れ目がないので、普通の住宅に比べてかなり水が入りにくいです。

 まあ、欠点は玄関の高さの融通性がなくなること(高い部分に玄関が来てしまう)や、根入れ120を実現するための条件が厳しいことでしょうか?またプランが、シンプルでないと逆に難しくなります。ハンチがないことで、地盤への定着が甘くなり、大洪水のとき流されやすいのでは?とか意見もあります。今後も改良しながら、個別に、よりよい基礎の設計を考えて行きたいと思っております。

 4号特例で基礎の設計が変だとか、ケチを付けたり、必ず構造計算しなければならないとか、ハンチが絶対必要とか言う前に、構造設計者として、何らかの企画提案が必要だと思います。これは1つの例で絶対ではありませんし、欠点もありますが、構造設計者の皆様、是非、知恵を出し合って、配筋が少なく施工しやすく、コスト減で強い基礎を考えて行きましょうね。

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