お金が発生しないことは働くことではないと認識される現実を変えたい話
私はこれまでにいろんな働き方をしてきた。
日本の法律によりアルバイトで稼ぐことを許可された15歳のときに、
年賀状の仕分けの仕事をしたのが最初。
多い時には同時に4種類のアルバイトを掛け持ちした。
1日の間で1番目まぐるしいときには、早朝コンビニの開店業務をして、大学に行き、カフェで接客をしたあと、誰もいない映画館で映写技師として新作の試写をして深夜に帰宅した。
大学卒業後は自営業もしたし、契約社員も派遣社員も経験した。
お金を貯めてドイツに来てからも、アルバイト、契約社員、自営業、フリーランスと経験した。長期移住すると決めて来たわけではなく、日本の社会人とドイツの社会人の両方を経験してみて将来を決めるつもりで来た。
「正社員はやってないじゃない」という声が聞こえてきそうだ。
はい。残念ながらボーナスの喜びは未経験です。
一つの会社に縛られる窮屈感も、安心感も、未経験。
そんな私が今、ほとんど働いていない。
今ほそぼそとライターの仕事をいただき、ちまちまこなしているが、時間数でも収入面でも、こんなに働いていないのは14歳以来ということになる。
なぜなら、できなくなったから。
出産の後遺症というと大げさだけど、まあちょっとホルモンバランスがうまく戻らなくて体を壊し、本業である芸術活動ができなくなった。完治する前に2人目を出産して、今も不自由を抱えつつなんとか生活している。
1人目を産む前の私は、産後3ヶ月目ぐらいから徐々に復帰するつもりでいた。
0歳から保育園に預けるつもりでいた。
完全に出産と育児をなめていた。
当たり前だけど、想像と体験は全く別物である
そのことを初めて思い知ったのは23歳のときだった。
それまで生理痛とは無縁だった私は、それが辛くて学校や仕事を休む女性に嫌悪に近い感情をもっていた。
サボりみたいに感じていた。
そんな人がいるから女性がなめられるんだよ、と思ったりしていた。
女性の体をなめていたのは自分だった。
初めて生理痛がひどいと仕事なんて行けるわけないんだと体験した私は驚愕した。
女性同士でも理解できないのに男性に理解できるわけないじゃんと思った。
そして、それを遥かに凌いた衝撃体験が妊娠、出産、育児だった。
これまで経験してきたいろんな仕事みたいに、自分次第でいくらでも、
頑張りさえすればどうにでもなると思っていた。
子育てを理由にあれができないこれができないという人を、
結局は頑張り次第でしょと思っていた。
甘かった。
今日書きたいこととずれるからこれ以上は割愛。
「お金のために働くんじゃない」
でも
「お金になることだけが働くこと」
世の中にはお金のためだけに働いているわけではない人はたくさんいる。
私もいろいろな経験をしたくて、いろいろな働き方をいろいろな業種でしてきた。
仕事は人を成長させるし、お金以外に大事なものも与えてくれる。
それはみんなの共通意識なのに、お金をもらえない活動に対して、
「それは働いていることにはならない」、というのも共通意識ですよね?
だから家事を時給換算したらいくらだとかいう記事が出てくる。
そもそも家事は働くこととみなされていないから。
でも社会奉仕という言葉があるように、どんな活動も奉仕ととらえたらどうだろう。お金を生み出さないことも、働くことと考えてもいいのでは?
私は今、母親業に1番の時間と労力を割いている。
それが素晴らしいことだと納得するまでに3年かかった。
1人目を産んで、願わずして体を壊し、意に反して専業主婦になったとき、
ずっとモヤモヤから抜け出せなかった。
働きたいのに働けない焦燥感。
何も生み出せていない無力感。
絶望的な孤独感。
でもこんなにも難しくて素晴らしい仕事は他にないとやっと気づいた。
対コロナ弱者を見て願うこと
日本で新型コロナウイルスが本格的に流行する前、ドイツは既に大流行していた。
日本だけ広がらないということはまずありえない。
どうか油断しないで気をつけて欲しい、と伝えても
「でも仕事に行かないわけにはいかない。」
という当然の答えが返ってきた。
コロナが怖いから休みます、なんならやめます、と言うことなど
よほどの度胸と貯金がなければ不可能だ。
でも、普段は何食わぬ顔で出社していても、実は病歴があったり、持病があって、コロナに対して健常者より大きなリスクを背負っている人も多い。
自分がそうでなくても、同居親族にリスクを抱える層がいる人も。
もし感染したら致命的なのがわかっていて、”ちょっと休む”を選べない現実
猛烈に、変えたいと思った。
AFTER コロナでも WITH コロナでも
みんながいたい位置に
コロナ後の世界ではみんなもっと急いで生きると言った哲学者がいる。
コロナ後なんてない、ずっと共生するしか道はないと言った医者もいる。
どの説が正しいのかわからないけど人々の生活が続くのは間違いない。
これまで以上に働き方をどうするか考える人が増えると思う。
ベーシックインカムに対する議論が活発化すると思う。
そしたら働くってなんなんだろうって改めて考えることになる。
もちろん自己実現とかいろいろある。
だから働きたい人はいなくならない。
だけど
お金を1円ももらわないけど布マスクをたくさん作ってくれた中学生は、「働いた」と思いませんか?
私はお金が発生しない働きも大切にしていきたい。
現状ではお金が発生しないと食べていけないけれど、みんなが会社に縛られなくてもいい世界を目指したい。
誰かが働けないときは他の人が働いて助ける世界にしたい。
全世界ワークシェアリング。
今回のコロナは肺が弱い人や高齢者が弱者だけど、次のウイルスの標的は、肌が弱い人かも知れない。背が高い人かも知れない。若い人かも知れない。
その時々で動ける人が動けばいい、って世界にしたい。
お金を発生させる働きに出られなくても、
それぞれの立ち位置で最高の「働き」ができるようにしたい。
これが、私の考える新しい働き方
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?