白目相談室「スケジュールが守れない部下への対処法」
こんにちは。臨床心理士/公認心理師として精神科で勤務しながら、夜な夜なSNS 界隈で漫画家活動やLIVE配信などをしております。白目みさえと申します。活動内容などはこちらでご覧くださいませ。
白目相談室の使い方
スケジュールが守れない部下への対処法
今回のご相談を簡単にまとめると…
・スケジュールを守れない部下がいる
・もう10年ほどあれこれ手を尽くしてきたが変化がない
・仕事を頼んでいても忘れてしまう
・「忘れてしまう」病気なのか?
・できる限りの手助けをしているが相談者以外の周りの人間は諦めている
・本人には努力する気がない(ように見える)
・諦める前になにか手はないか?
ご相談ありがとうございます。
私は医師ではありませんので診断はできませんし、一部の情報だけでは判断できませんが、この部下の方の「忘れてしまう」のはADHDの方の特徴と似ているところがあるように思います。
仮にADHDだった場合。投薬によってある程度気が散りにくくなる可能性はあります。
でも多分問題は「本人が困っていないところ」だと思われます。
問題はなに?
お話を聞く限りでは、相談者様をはじめとした周りの方が相当手厚い対応をしておられるので、なんだかんだで納期は「なんとかなった」という結果に終わっているのではないでしょうか。
「何か良い手は?」とご質問いただきましたが、もうすでにあの手この手を尽くしておられるのではないかと思われます。
今更「このアプリがスケ管に便利ですよ☆」など伝えたところで役には立たないでしょう。
そしてもし仮にADHDだった場合。
診断基準にはこういうものがあります。
これを全て満たした場合にADHDと診断されます。
1.「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
2.症状のいくつかが12歳以前より認められること
3.2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
4.発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
5.その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
DSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)より
問題となるのはこちらです。
3.2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
つまり平たく言うと。
家や職場などふたつ以上の場所で
「困っていますか?」
ってことです。
部下の方はきっと。困っていないですよね。
きっと職場で障害にはなっていないと思います。(本人の感覚では)
だって「なんとかなってしまっている」から。
「まあ多少影響はありますがなんとかできています」
と思っておられるのではないでしょうか。
病院というのは、問題があって困っているからこそ原因を探すために受けに来る…というのが大前提なのです。
困ってもいない部下の方が診断を受けるために病院に来る可能性は極めて低いと考えられます。
「お前発達障害なんじゃないか?」なんて言おうものならパワハラ認定される可能性すらあります。
だって「自分は困っていない」と思っているんですもの。
もし私がここで相談者の方に「おかしいのはあなたです。病院に行きなさい」なんて言ったら怒ると思います。
でも部下の方もきっとそういう感覚なのです。
診断を受けて投薬があれば少し集中ができるようになるかもしれない。
たしかにそれはそうなのです。
でも困っているのは残念ながら「周り」です。
本人が困らないように配慮し続けてくださり、とても負担を感じているのは相談者様や周りの人です。
本人が困っていない以上、病院には来てくださらない。
もし来てくださったとしても、自分が困ってもいないのに薬を飲むでしょうか。
また周りのために飲んでくださるでしょうか?
迷惑をかけている自覚なんてないのに。
以上のことから、部下の方が「病気かどうか」というご質問への答えは「そうかもしれないけど、だとしても今それはあまり解決に結びつきません」という返答になります。
なぜ「障害」や「病気」にならないのか
ものすごく理不尽に感じられると思います。
私はこんなに困っているのにと思われるはずです。
私だってきっとそう思います。
なんで困らせている本人は困っていないんだと。
でも本人が困っていないものを周りが「病気」や「障害」と仕立てあげられる状況になってしまうと、それはそれで困るんです。
あなただって急に明日誰かによって「病気だ!障害だ!」と言われてしまうことになりますよね。
現在それが許されているのは医師のみです。
本人の認知機能が低下していたり、十分に事実や現実を検討できない状況にあると判断された場合に、医師がなんらかの診断をして、それなりの対応をすることがあります。
本人は困っていなくても、周りに多大なる危害を加えている場合はそう判断されることもあるでしょう。
ただ残念ながら部下の方は「多大なる危害」は与えていません。
(多大なる被害は与えているでしょうけれど)
放っておいたら周りの人を刺し始めるかもしれない、大暴れして机を投げるかもしれない…そんな状態ではないわけです。
では部下に対してはどのように対応すればいいのか。
諦めるしかないのか。
最後に何か一手はないのか。
それについてできることを解説させていただきます。
ただ私も御社の状況を全て把握しているわけではないのでその通りには進まないかもしれませんが、あくまでも一意見としてご参考にしていただければ幸いです。
スケジュールを忘れてしまう部下への対応
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