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臨床心理士と公認心理師のちがい

こんにちは。白目みさえと申します。
臨床心理士/公認心理師として精神科で勤務しながら、夜は漫画家化活動などを行っております。

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さて。臨床心理士と公認心理師、またその他の心理士資格についてよくご質問があるので、まとめさせていただきます。

ただ、厳密な違いや人数詳しいシステムなどは、Googleを開いて「臨床心理士 公認心理師 ちがい」と入力いただくと、すごくわかりやすいサイトがたくさん出てきますので、そちらをご覧くださいませ。


1.民間資格と国家資格

■臨床心理士は「民間資格」
公益財団法人の「日本臨床心理士資格認定協会」が認定している民間資格です。「民間資格」ではありますが「カウンセラー」の中では最もメジャーかつ歴史があり、心理士として働く人の多くが取得している資格です。
臨床心理士には5年ごとの更新義務があり、研修や学会に出席、もしくは論文発表などを行い、「ポイント」を溜めて更新申請をしなければなりません。つまり勉強を怠っていると更新ができないという縛りがあります。

■公認心理師は「国家資格」
2015年に成立して2017年に施行された「公認心理師法」にもとづく国家資格です。2018年に第一回目の試験が行われたばかりの新しい資格です。こちらは更新義務はなく、一度合格して登録してしまえば基本的には永久に所持できる資格です。

2.仕事内容

基本的には心理士/心理師の仕事は「心理検査」と「カウンセリング」だと思っておいていいと思いますが、全然違うことをする場合もあります。

■臨床心理士に求められる専門行為
1.種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること
2.一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること
3.地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること
4.自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること

 出典:臨床心理士とは | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 

■公認心理師が行う業務
保健医療、福祉、教育その他の分野において、専門的知識及び技術を持って、次に掲げる行為をする
1.心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
2.心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
3.心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
4.心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

 出典:公認心理師法第2条


どちらも心理検査、カウンセリング、他職種との連携(コンサル)について書かれていますが、【臨床心理士】は「自己研鑽しっかりしろよ」ということが4番目に来ていて、【公認心理師】は「メンタルヘルスの知識ちゃんと広めていけよ」ということが4番目に来ています。

以前は「専門家」が治療していきましょう、そのためにしっかり専門性を高めましょう!というのがメインでしたが、「専門家」だけでは相手できる人数が限られてしまいます。

たとえば30人クラスですと、専門家が30人を一人一人相手にすることは時間的に不可能ですが、先生ひとりに専門的な視点や関わり方についてアドバイスできると、結果として30人へのケアになります。

だからこそ「コンサル(専門家が他の専門家に自分の専門分野の知識や技術を伝授する)」が大事だよという流れがありました。

ただ昨今はそれでも追いつかなくなっているので「予防」の観点が取り入れられるようになりました。

何か症状が出てから「治しましょう」ではなく「症状に至らないように普段から気をつけておきましょう」という流れです。それが【公認心理師】の責務である4番目の「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」に当たります。


3.資格がないと心理業務はできないの?

「心理検査」も「カウンセリング」も資格がなくてもできます。

資格には「業務独占」と「名称独占」という決まりがあって。

例えば「医師」は「名称独占」も「業務独占」も両方あります。
「医師」と名乗っていいのは医師免許を持っているものだけで、医療行為という業務ができるのも医師免許を持っているものだけと決められています。

法的に定められていますので、もちろん破ると罰則があります。

「臨床心理士」は資格の名称なので、持っていないのに名乗ると経歴詐称でしょうね。
ただし「心理士」や「カウンセラー」という名前を名乗る分には、特に法律的な縛りはありません。
「カウンセリングをやってますよ」=「カウンセラー」でOKです。

「公認心理師」の場合は国家資格であり「名称独占」が定められているので、資格を持っていないのに「心理師」「公認心理師」と名乗ると罰則があります。

ただしどちらの資格にも「業務独占」はありません。

心理検査はカウンセリングは、資格の有無に関わらず誰でも行うことができます。

ただし最近は医療現場で診療報酬が改定され、「公認心理師が行った場合のみ○点とする」みたいな項目が追加されつつあります。

「業務独占」とまではいかなくても、公認心理師が行うことに価値が出てくる日も近いかもしれません。(と思いたい)

とはいえ、資格を持っているということは、いらんことしたら罰則があるということでもあります。(資格剥奪とか)

なので企業側、雇う側としては「そら資格持ってる人の方が安心」と思うでしょう。

だから一応心理検査はカウンセリングは資格持ってる人がやろか、という流れにはなっています。


4.他の資格とのちがい

臨床心理士も公認心理師も、基本的には指定の大学4年間+大学院2年間で心理学をはじめとする精神疾患やカウンセリング技法などを学び、修士課程を修めて初めて「受験資格」が得られます。

その後「受験」をして合格して初めて資格保持者であると名乗ることができます。

つまりそれらの資格を持っているということは、大学と大学院に6年間通って心理学に関する知識を修めた(もしくは同等の経験と知識を有しているとみなされた)人であるという証明になります。

だって6年通ってないとそもそも試験が受けられないので。(色々例外がありますが)

もちろんその資格がなくても、ゴリゴリに経験積んで勉強してる人もいるので資格持ってないからと言って舐めてかかると返り討ちにされます。

っていうか大学の6年で勉強したからといって、現場ですぐに役に立つかって言われたら全然役に立たない人の方が多いのでね。

あと「資格あるのにそれかい」って人も中にはいます。

資格があるかないかとか、大学院に行ったかどうかで相手の人の力量はわかりません。


ただその辺にある「セミナー受けたら12時間でなんちゃらカウンセラーの資格を認定します!」と謳っている資格よりは、6年間通っている分最低限の質は保たれていると考えてもいいのではないでしょうか。

だからと言って「良いカウンセラーか」と言ったらわかりませんけどね。


5.今から目指すのなら?

指定の大学、大学院に行って臨床心理士もしくは公認心理師の受験をするのが結局近道です。

例外はたくさんありますが、今から例外を目指すのはほぼほぼ不可能です。というかもっと難しくなります。


お子さんが発達障害だったのでその経験を生かしてカウンセラーとして働きたいのですが…という質問もよくいただくのですが、基本的に「臨床心理士」や「公認心理師」というのは、子どもから老年期まで幅広い知識と対応が求められます。

もちろん心理士への興味を持つ「入り口」としてはそのきっかけで問題ないのですが、「子どもだけ」「発達だけ」というわけにはいきません。

そして「虐待をする親」「発達障害の人を毛嫌いする人」のカウンセリングを実施することもあります。

資格を持ってしまうと、それだけ多くのことを求められます。自分にとって「あまりやりたくないな」と思うジャンルの人にもカウンセリングや心理検査をして、その人のためになるような支援を考えていくことになります。


もちろん民間の資格でも比較的信頼性の高い資格はありますので、子どもや発達障害に特化したものを取得してみてもいいかもしれません。

またご自身でしっかり勉強をしていれば、子どもや発達障害に特化した職場で働く際には役に立つでしょう。

ただし、その職場が無資格の方や別の資格を持っているというだけの人にカウンセリングをさせてくれるかはわかりません。

論文や著書が何本もあったり、講演を開いていたり、何かしらの活動実績があれば職場の人も信頼してくださると思いますが、その偉業を果たすことと大学と大学院に通うのならどっちが楽かと言われれば明白ではないでしょうか。


というわけで、もし今から「カウンセラー」という職業につきたいのであれば、年齢に関わらず「大学や大学院に通ってください」とお返事するしかないのです。

今は通信などの制度もあります。

もっと楽な方法を求められることもありますが、今のところ「カウンセラー」として働きたいのであればそれがもっともオーソドックスかつ近道だというお返事しかできません。


今のところ、臨床心理士の方が歴史が長い分多少信頼性が高いように思います。「公認心理師」だけ持っている人は、試験に受かっただけで「心理士」としてのキャリアが少ないのでは?と見る人も少なからずいるからです。

ただそれは「心理士」としての経験が少ないのでは?というだけで、その方が現場の知識がないとか役に立たないとかそういうことでは決してありません。

スクールカウンセラーや病院の募集では「どちらも持っている人」が推奨されていたり、実際に人事の人に話を聞いても「臨床心理士」を持っているかどうかは重視していると話されていました。

でも多分今の状況が続くのもあと数年ではないでしょうか。公認心理師は国家資格ですし、いずれ「両方持っている」という人もいなくなるかもしれません。

…と私は思ったりします。


心理士がなぜ食えないかの記事はこちらからどうぞ。

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