🇨🇳#12 飛行機デビューのモンゴル族のおじいさんをサポートする
河北省・石家庄から内モンゴル自治区・フフホトを目指すわたしは、石家庄保定空港から飛行機でフフホトへ向かった。
頑張れば新幹線でも行ける距離だが、チケットが4000円と安かったのと、ちょうどお昼どきの1時間でフフホトに到着するフライトがあったので、飛行機を選んだのだ。
昼なら、万が一連絡がつかなくても、「(食事に行っていて)気づきませんでした」でごまかせる。
そして今のところ、わたしはこうした姑息な嘘をつくことなく、うまいこと誰にも気づかれずに中国を一周しながら仕事をこなしている。
席に着くと、隣のおじいさんが聞き慣れない言葉で電話をしている。
モンゴル族のようだ。
するとこのおじいさん、電話を切ってすぐに苦しみ出したのである。
搭乗5分でまさかのエコノミー症候群?
わたし「どうしました?」
おじいさん「ベルトが苦しい…」
わたし「緩めてください」
おじいさんはベルトの緩め方がわからなかったようだ。
わたしはおじいさんのベルトを緩めてあげた。
何もおかしな話ではない。
わたしだって初めて中国の新幹線のファーストクラスに乗ったとき、いつも使っているような顔で席に座ってから、背もたれの倒し方がわからず、人に助けてもらったことがある。
六本木のクラブに行って、何をしたらいいかわからず自腹で飯だけ食って帰ったこともある。
「はじめて」は誰にだってある。
おじいさんは、飛行機に乗るのが初めてなのかもしれない。
おじいさんは緊張した面持ちで窓の外を見つめている。
そして離陸と同時に、椅子のアームをしっかりと握って固く目をつぶった。
おじいさんの緊張が伝染し、ただの飛行機に乗っているだけのはずなのに、わたしもだんだんとジェットコースターかなんかに乗っている気分になってきた。
おじいさん「堕ちないだろうか…」
おじいさんが雲を見下ろして不安そうに呟いた。
わかる、それ、わかるよ。
飛行機初心者がよく陥る思考である。
その時、わたしの右隣のおじさんが余計なことを言った。
おじさん「おちるときはおちるよ」
おじいさんの顔はみるみる青ざめた。
わたしは、この見知らぬ無神経なおじさんにはげしい怒りを覚えた。
無事、内モンゴル自治区・フフホトに着くと、おじいさんは逃げるように飛行機を降りた。
しかし何やら独り言を言っているので、気になってついて行くことにした。
おじいさんは、人の流れに乗って女子トイレに向かって進んでいく。
あ、違う、そっちじゃない!
慌てておじいさんが女子トイレから出てきた。
おじいさん「出口はどこなんだ…」
わたし「あっちですよ」
確かに、フフホト空港の出口の標識は分かりにくかった。
こうしておじいさんの(おそらくは)初フライトを見届けたわたしは、ホテルへと向かった。
さて、ここ内モンゴル自治区だが、料理が今までで一番おいしい。
というより、日本人の口に合う。
肉は硬めだが、完全に肉じゃがである。
久しぶりの主食・ご飯なので、モリモリ食べた。
夜は、近場で買ったラム肉のシュウマイとヨーグルトパンケーキを食べた。
シュウマイは皮が薄く、中は肉汁たっぷりだ。
上部の皮が特に薄くなっていて、包み方が優しく、お花を食べているような気分になる。
もう日本のシュウマイが食べられなくなるんじゃないかというほどおいしかった。
完全なるホットケーキである。
メープルシロップをかけて食べたいところだ。
このほか、中国では砂糖入りが当たり前のヨーグルトが、内モンゴルでは別包装になっていたり、日本の食文化に通じる点が多い。
久しぶりに日本らしいものを食べて大満足。
今日は朝から草原へと向かう。
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