🇨🇳#22 三国志の舞台・赤壁で二十億光年の孤独に浸る
そろそろみんなこの中国一周記に飽きてきたことに、わたしも薄々気づいてはいるので、ここからはサッカーボールでやるストラックアウトみたいに、たまにパネル2枚(省)抜きとかして足を早めようと企んでいる。
ただ単にズルをしようとしているのが8割なわけだが、仕事の関係で深圳へ26日にいかなければならなくなったのも理由のひとつにある。
取引先である会社の社長から、「ゴールデンウィークの少し前に海外へ行くから、それまでに打ち合わせに来るように」と言われたのだ。
なんなら本当は北京でも訪問した方がよい会社があったのに、北京ダックを食べてそのまま天津に肉まんを食べに行き、うっかりに見せかけて故意的に通り過ぎてしまった。
いや、北ルートは移動がハードだったので、見た目的にボロボロで無理だったのである。
待てよ…このままいくと、来年からは中国での仕事が0になるかもしれない。
なので、とりあえずチベットをのぞいた西南の全ての省を回収して、急ぎ足で深圳へ向かうことにする。
ということで、湖北省編
江西省・廬山から湖北省・武漢を経由して、同省の赤壁にやって来た。
そう、あの三国志の熱いバトル「赤壁の戦い」の「赤壁」である。
実はここ湖北省は三国志ファンの聖地で、10年前にも三国志特集の記事を書くために訪れたことがある。
で、今回は赤壁北駅からタクシーで1時間弱の「三国志赤壁古戦場」を再訪することにした。
ここはまさに、曹操軍と孫権&劉備の連合軍が戦った場所である。
2回目とはいえ、やっぱりこの赤字の「赤壁」を見るとテンションが上がる。
曹操を撃退した後、周瑜が興奮して石で「赤壁」と書いたというエピソードではあるが、実際は唐代に書かれた文字らしい。
(赤壁の戦いは208年)
なんにせよ、この場所で皆が知恵をしぼり、大軍の曹操軍を打ち負かしたのだと思うと、胸が高鳴る。
カフェへ向かう
古戦場を見学したあとは、新幹線の出発まで少し時間があったので、駅から約3キロのカフェへと向かった。
しかし、地図アプリで見るカフェの位置はアパートの敷地内を指している。
こんなとこにあるって、大丈夫かな…と思って入っていくと、突然素敵なカフェが現れた。
小さなお店だが、きちんとコーヒーの淹れ方を学んだと思われる味わいで、コーヒー(ラテとアメリカンを飲んだ)、手作りのクッキーともにレベルが高い。
そして、「いいとこだな」としみじみしながら店の中を眺めていると、壁に手書きの詩を見つけたのである。
こ、これは谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』ではないか。
ついついうれしくなったわたしは、店のオーナーに声をかけてみた。
わたし「…私、日本人なんです」
お姉さん「ええ! ほんと?」
わたし「この壁の詩、谷川俊太郎でしょう。私、谷川俊太郎好きで」
お姉さん「私も大好きで、彼の詩集を持ってるの。ほら、みて」
そう言って、お姉さんが谷川俊太郎の詩集を見せてくれた。
わたし「この『生きる』は、暗記しちゃうくらい好き」
お姉さん「ああ、『生きる』いいよねぇ…。今、生きているということ…」
わたし「それは、喉がかわいてコーヒーが飲みたいということ」
お姉さん「そうだったね(笑)」
白丸みそ子が思う
生きているということ
それは小籠包
それは蘭州拉麺
それは敦煌の莫高窟
それはトルファンの火焔山
すべてのおいしいものとすべての美しいものに出会うということ
…
さすがに疲れてきてはいるけれど、最後まで旅を進めようと思える、徹夜明けのエナジードリンク的な良い出会いだった。
赤壁の「椅子珈琲」、またきっと来ようと思う。
赤壁をあとにし、湖南省・長沙で激辛の臭豆腐を食べて、貴州省・銅仁に到着。
(早速2枚抜きが発動)
明日は「天空の城」があるという梵浄山へと向かう。