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#70 故郷を捨てた日

我が故郷、埼玉県狭山市が一年で最も賑わう日。
それが今日、「入間航空祭」開催の日である。
市の人口がおよそ15万人なのに、この日は10万人以上の人間がよそから訪れるのだ。

茶畑か入間川くらいしかないこの田舎街に。。

少し埼玉をかじっている人からは、「でも、狭山湖があるでしょう」「狭山スキー場、知ってるよ」と慰められるが、実はあれらは全て隣の市・所沢のものである。

選択肢一択の狭山市役所の自販機

ついでに言うならば、「狭山茶」に地域PRの全てを委ね、あたかもこれが自分たちのものであるかのように振る舞っている狭山市だが、「狭山茶の生産地の拠点は隣の入間市」という、あまり知られたくない事実がある。
実は、狭山茶の生産量の6割は入間市が占めていて、次いで所沢市、狭山市なのだ。
なんなら東京の東村山市でも作られていて、おかげで故・志村けん氏(東村山出身)が狭山茶の名を全国区にしてくれたというわけである。

なんでかわかんないけど、長野の居酒屋で志村けんサイン自慢された

しかし、これは仕方のないことだ。
「狭山」という地名は古くからあり、埼玉県入間市の南部に位置する「狭山丘陵」に由来するそうなのだ。
まず「狭山」と呼ばれる広めの地域があって、後からそれが複数の市に分割されたのである。
なので、狭山茶は旧・狭山エリア全体で作られるお茶であって、狭山市だけで独占的に作られているものではない。
何となく狭山市がたまたま「狭山」の名をもらったので、ラッキーとばかりに茶を街のカラーとして全面に押し出してるのだ(わたしの独自解釈)。

ちなみに、狭山丘陵は、埼玉県と東京都にまたがる武蔵野台地にポツンとある、孤立した丘陵だ。
このだだっ広い平らな武蔵野台地の中で、一際浮いた存在、「狭い山」のように見える場所だから「狭山」と呼ばれたわけだ。
ただ、それはあくまで平地に盛り上がった丘であって、山ではない。
最も高い場所で標高194m、狭山市内に限って言うならば、最高海抜は50.7mしかない。

そんなわけで、何を間違えたか他都市から気まぐれで狭山にやって来た人からは、「なんで山ないの」と、極めて素朴な疑問をぶつけられる。
いや、私はそんなことより、最寄りの駅に「なんでカフェないの」と思って暮らしている。

故郷への愚痴が長くなりすぎた。
とにかく今日は埼玉県狭山市稲荷山の航空自衛隊入間基地で「入間航空祭」が開催される日であり、わたしは早急に、ASAP、家を出ないといけない。

5年ぶりにブルーインパルスの展示飛行が行われるだ、C―1輸送機の31号機のラストフライトなんてことは知ったこっちゃない。

なぜなら、とにかく家が基地に近すぎて、うるさいのだ。

アラレちゃんの「キーン」やジョジョの「ゴゴゴゴゴ…」のような効果音で表すことができない、形容のしようがない騒音である。
振動で家が揺れ、飼い犬が鳴き喚き、爆音によってTVは肝心な内容が聴こえず、湯呑み茶碗を持つ手が震える…戦中ではあるまいかと思われる地獄絵図である。

絶対このあたりのdB(デシベル)、環境基準を超過していると思うのだが、家賃が安いので何も言えない。

ということで。
新宿に逃げ出して時間つぶして帰ります。

し、しんれいしゃしん…

🚃

……帰ってきたら、ふとこさん(母)が、「ブルーインパルスすごかったわ」と楽しそうに話すので、見なかったことちょっと後悔する自分もいたりして…🙄

故郷への愛憎に揺れた一日であった。

おわり


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