#41 久しぶりに元夫に連絡してみた
もしかすると皆さん、わたしが残りのチベットをうやむやにして中国一周の旅をこのまま終わらせようとしているのではないかと思っているかもしれないが、そんなことはない。
確かに旅行会社に聞いたら、飛行機代入れて最低二十万かかることがわかり、さまざまなギャラが入るのがずいぶんと先なので、もうちょっと蓋をしておこうかと思ったが、一応6/27-6/30でパーミットを申請中である。
やっぱり高いなと思って、少しでも値切ろうとしたけど無理で、特殊地域に入らせてもらう立場だというのにすっかりカッコ悪い外国人になっているが、それもこれも、金がないのだから仕方がない。
金がない…? その割に美味いものばかり食べてぶくぶく太っているというツッコミは、甘んじて受けよう。
そういえば子どもの頃、「人魚姫」を読む度に、好きな王子に会いたいからと、自分の声と引き換えに人間になって、結局他の女性に王子を取られ、海の泡になってしまった人魚姫について、わたしは憐れむよりは呆れていた。
好きなものを追い求める時には、代償が許容可能かどうかについても少しばかりは考慮しなければならないのではないだろうか。
そんなわたしは今、好きな食べ物と引き換えに金と美を犠牲にしている。
でも、失うばかりの人魚姫よりは、いっときの快楽を得ているのだからマシなんじゃないかと自分を慰めてみる…みる。
しかしまあ、間違いなくわたしは今、自分の物語の中で、人魚姫のように誰かさんから短剣を渡されて、「食べなければ太りませんし、金も貯まりますよ! しかし、尚も食べればあなたは貧乏な上🐖になります!」と忠告されているのである。
果たしてわたしはこの忠告に従って節制できるのか、それとも最後はやはり人間社会の海の藻屑となるのだろうか……。
さて。
中国一周と趣味のグルメで家計が圧迫されているわたしには、実はこのあとまだ、娘・ベビ子大学二年の夏休みの中国インターンシップという最大級の出費が待っている。
チャラ男の彼氏・まさおに弄ばれているベビ子は、なおも東北の地でくさくさしているのだ。
なので、おそらくは最後の過干渉で、自分が仕事をもらっている中国系ベンチャー企業へ、ベビ子を夏休み送り込むことにしたのである。
ちなみにこの会社は2017年創業だが、中国のコーヒーマシン業界で現在ナンバーツー(間もなくナンバーワン)に成長している。
中国国内はもちろん、日本を含む世界中の国にマシンを輸出しており、技術的に高い評価を得ているのだ。
法学部に在籍し、広告代理店を志望しているベビ子をなぜここへと?と思うかもしれないが、このメーカーが短期間で急成長した裏にはSNSやイベントをフルに使った巧みな広告戦略がある。
なので、その現場をベビ子に見せてあげたいのだ。
ついでに、しばらくは自己研鑽に励んで、まさおのことを忘れたら良いと思う。
ベビ子本人も久しぶりの中国に乗り気で、中国語を再開したようだ。
うん、よき夏になりますように…。
なむ🙏
えっと。でも、金ないな…。
そう思ったわたしは、「言うのはタダ」の発想によって、元夫(ベビ子の父)に久しぶりに連絡をしてみた。
わたし「ベビ子のインターンシップで三十万くらいかかるので、半分出して欲しいです…」
元夫「金ない、やだよ」
ベビ子の父は現在、東南アジアに潜伏中。
仕事はたぶん芸能関連である。
わたし「そこをなんとか! よっ、ハイスペのイケメン!」
恨みつらみも十年経つとどうでも良くなるのだ。
元夫「俺はもうすぐ引退なんだ。そしたら貯金を切り崩して生きていくしかない」
ベビ子の父は現在58才である。
わたし「パパみたいに優秀な人ならいくつになっても仕事あるよ。ということでよろしく!」
結局、「今年は景気が悪く、仕事が全然ないのでよろしく頼みます」と伝えて、半分は出してくれることになった。
三人で食事をするといつも会計時に「エアー電話」で消えて支払いをわたしに押し付ける元夫も、娘のことにだけは甘いようだ。
ちなみに今年に関していえば、実際には仕事はまあまあ忙しく、金がないのは単に中国を一周したからである。
よって、この「白丸みそ子の日記」は、仕事関係者ではなく、誰よりも元夫に見られたらマズイということに今さら気づいたわたしであった。
おわり
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