季節はもう次の春を迎えようとしているのに、私だけが冬に置いてけぼり。
歳をとったせいなのか、人と会わない生活が続いているせいなのか。
つい、若かりし頃のを話したくなる今日この頃。
先週に引き続き、今週もおじさんの昔話にお付き合いください。
▼ 自己紹介
伊藤孝 / シロクロ製靴
バイクの開発をサポートしていた頃の話です。
当時配属は、主にバイクのハンドル位置やシート形状、フェンダー形状などを実走テストにて検証を重ね、操作性、機能性を高める部署にいました。
(偉そうに説明していますが、私はサポート。大層なことはしていません)
当然、テストの結果によっては
元々デザイナーさんが決めた形状に対して変更を要求することもあるわけです。
(私が要求するわけではない。私はあくまでテストのお手伝い。担当者同士の会話を聞いているだけ)
それを受けたデザイナーさんの中には
「ハイそうですか。直しましょう」とはならない方もいらっしゃいます。
「イヤ、そこ変わってしまうとデザインの流れが」とか「全体のバランスが」などなど。
こだわりの強いデザイナーさんは、すぐに折れることはありません。
(こういった話し合いと検証を重ね、デザイン性と機能性の高次な両立を目指しているわけですが)
「何もバイクのデザイン全部変えろって話しじゃなくて、先っちょ変えるだけだし。時速100kmとか200kmで人を乗せ走る乗り物で、こだわりのデザインより、操作性のほうが正義でしょ」
会話を聞いている私は内心、思っていました。
時が経ち、ひとりで靴を作っている今は、
自分の中にデザイナーの自分と、機能性を考える自分と(あと生産性を考える自分と)がいます。
それぞれの自分(リトル伊藤)たちとの脳内会議を重ね靴作りを進めるのですがなかなかどうしてデザイナー伊藤孝の我が強いです。
「そんなところ、誰も見てないよ。細かすぎて違いなんて分からないよ」
機能性伊藤孝のツッコミがあっても
「せめて試しを作ってみてよ。」の一点張り。
「機能性が大切だよね。デザイン性はある程度で妥協しようね」と素直に引き下がることは滅多にありません。
靴を作り始めてから今日まで変わらず、
違いがあるのか、ないのか分からないようなアッパーを机の上に並べては、頭を悩ませています。
(数年前からやっていることは変わらない)
いつも同じ様なところで悩むのだから
経験に基づいて、スパっと取捨選択できればいいのですが、
「やっぱり、ベースのデザインが変わるたびに、細部も繰り返し確認しないと全体のバランスが…」
(回想に出できたデザイナーさんと同じセリフ。今なら痛いほど気持ちが分かります。)
バイクの開発当時を今一度、思い返してみると、
ベテランのデザイナーさんほど、機能性の高いデザインを最初から提示されていたし、こちらの提案にも柔軟であった気がします。
反面、今の私…まだまだ修行が足りないよう。
リトル伊藤達の脳内会議は今後も当分続きそう。
(ダメな会社ほど会議が多いと言いますが)
暖かな日も日ごと増え始め、季節はもう次の春を迎えようとしているのに、
私だけが冬に置いてけぼり。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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伊藤孝|シロクロ製靴(奈良の小さな靴製作所)
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