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私は統合失調症と再会してみる,自分なりに,安全な方法で。その②「べてるまつりに行ってみた:あなたに恋して編」

統合失調症と再会する方法として、
まず私が思いついたのは、べてるまつりに行くことだった。
ただ、行かなきゃと思うとどこか抵抗があり重く感じられるので
夏前ごろから宿だけ予約して、
行くか行かないかは1週間くらい前まで
自分の気持ちを眺めて決めればいいと思うことにした。

せっかくだから行ってみたいという気持ちと、
やっぱり統合失調症とは再会せず関係なく生きようよめんどくさいよ
という気持ちの間を、
直前まで思う存分、行ったり来たりした。

べてるまつりチケットの事前予約サイトもずっと見てたけど、
チケットはなかなか買わなかった。

そしたら10月に入ってすぐチケットは完売になった。
それを発見して、私は突然すごく焦った。
そのサイトに小さく「当日券もあります」という知らせを見つけて、
まだ行けるという選択肢が残ってることにほっとした。

ああ私、行きたかったんだなとわかった。

金曜までしごとだったから2日目の朝からの参加になる。
当日券がどのくらいあるのか分からないから遅れないように、
朝5時に起きておにぎり食べながら出かけた。

2時間くらい車に乗ってたら、景色の右側に海が出てきた。
それからはもうずっとずっとその海が続いた。
空は昨日までの寒さがなんだったんだと思うくらい晴れてた。

あなたに恋して

印象に残ったことは山ほどあって、
話したくてうずうずしてるかたまりみたいなのが喉のあたりに整列してる。
1番前に詰まってるやつから、順番に書いていこうと思う。

まずはべてるまつりDay2、
午後にみた劇団ぱぴぷぺぽのドラマのこと。

過去の幻覚&妄想大会グランプリ受賞者のエピソードを映像化したドラマが3本も上映された。1本目のタイトルは「あなたに恋してー千高のぞみ物語」、2本目は「なんちゃって宇宙人ー山根耕平物語」、3本目は「俺は生きているー岡本勝物語」というのだった。

他人事と思えない、
ワクワクして同時に泣きそうになる名作揃いだった。
実際、2本目の最後ではたくさん涙が出たけど、
まずは1本目の話から感想文を書いてみる。
(一応言っておきますけど、ネタバレ含みます。)

「あなたに恋して」は、主人公ののぞみさんが総理大臣に恋をして、
その思いの強さから身体の半分が飛行機に乗り、東京に会いにいってしまうドタバタラブコメディーである。
登場人物にはのぞみさん、総理大臣、向谷地さんの他、
にぎやかな妄想幻覚たち、それから東京タワーもいる。

この物語にわたしは最初からぐんぐん引き込まれた。
わかる、わかるよぉ。こういう物語を待ってたよぉ。

半分になったのぞみさんは東京タワーに会って(会うんです),国会議事堂まで行き,本当に総理大臣に会う(会うんです)。総理大臣から直々に,のぞみさんよく来たねと歓迎してもらう。よかったなぁー。そしてほっと一息ついてから気がつく。どうやって帰ろうか。

その頃,半分の身でべてるに残っているのぞみさんは,もう半分の自分が東京なんて遠くの大都会にいるもんだから,歩きにくくて困っていた。(私はここで語られた、歩きにくいという自覚症状が好き)
そこで,ちょうど東京に行っていた向谷地さんに電話をかけた。
「私の半分が国会議事堂にいるんだけど,飛行機に乗せて浦河まで送り返してもらえませんか」。向谷地さんが東京にいて,本当にちょうどよかった。

向谷地さんは「分かったよ。午後の便に乗せるから,夕方にはバスで浦河に着くよ。」ああよかった。向谷地さんの言ったとおり,のぞみさん(半分)は帰ってくる。さすが向谷地さん。ちゃんと送り返してくれたんだ。

総理大臣は任期切れの前に気持ちが一段落して,次にのぞみさんが恋をしたのは医師だった。自分の担当ではなく,別の利用者さんがみてもらっていた内科医。うらやましくて自分もみてもらいたくて,毎日風邪をひいたとか,熱が出たとかいって診察してもらうけど,なんせ本当は熱もないし風邪もひいてないもんだから,そのうち行く理由が見つからなくなってきた。

のぞみさんはまた向谷地さんに電話で相談する。
「内科の先生と会いたいんだけど,風邪もひいてないし会いに行けないんだ。どうすればいい?」
向谷地さんは一緒に考えてくれて,のぞみさんに言う。
「糖尿病になるのはどうかな?」そしてのぞみさんを励ます。
「のぞみさんは素質があると思う。その先生のところに,糖尿の検査を受けに行ってみたら,ひょっとしたら通えるようになるかも。」
そしてのぞみさんは受診する。その結果,なんと見事に糖尿病であることが分かり,その後定期的に,大手を振って大好きな先生に会いにいけることになった。

あなたに恋してー千高のぞみさんの物語,あらすじ

いままで観たどんな恋愛映画より深く、この物語は私の心にぶっ刺さった。

私も昨年のがん治療をきっかけに、
主治医のことをインプリンティングのように原初的に好きになり、
主治医に強くこだわるあまり、がん治療の苦しさから視点がずれていき、恋の苦しさがメインになるという「だまし船」をつかんだような体験をしていたためだ。

けれども主治医が推しと化し自分が狂った効能で、
私は私自身をがん治療に同意させ、手遅れになる前に治療ラインに乗せ、
がん治療の言語を学び、自分自身にいきいきと治療を続けさせることができた。 それは苦しくも楽しく、不便だが役立つ体験だった。

私は自分が主治医を大好きになってしまった理由について、
自分の幼い自我状態が主治医に懐くことにより、
新しい状況への恐怖心、治療への抵抗をやわらげ、
がん治療のつらさを克服しようとした、という理屈をつけた。

周囲の人に相談するときも、わざわざ心理学を持ち出し、
この感情はこのような理由で許容できるものなのであるという前置きを付けて話していた。どうしてそんなことをする必要があったのか。
本当は、私は私のことをまともではない人間であるとジャッジしており、
がん+恋心+恥の感覚という三重に苦しい思いをしていたのだ。

けれど、このべてるまつりで特別上映された、
のぞみさんのエピソード再現ドラマ「あなたに恋して」を観ていると、
自分がまともではないというようなじめっとした感情は、
爽やかに蒸発していき、本当に心からどうでもよくなっていった。

のぞみさんが総理大臣に恋をしたら、
身体の半分が東京に行ってしまうほど気持ちがはなやぎ、
行動が活性化した。
総理に会えた幸福感と、身体が半分別のところに行ってしまっているような、不便な身体感覚が混在した。

次に内科医に恋をしたら、糖尿病があとからみつかった。
それは大好きな推しに会うための5年確約パスポートを手に入れたようなものでもあった。

病気って本当に面倒で、治療してもしなくても、
今までの自分の生活がどんどん変わっていってしまう。
のぞみさんの恋も、向谷内さんの恋愛相談もその結末も、
なんか知らんけど結局、理屈を超えたところでのぞみさんを守ってた。
それは、私の恋もおんなじだった。

恋は不便で不安定で、私たちをどこかに連れていく。
変化をもたらす原動力、ワクワクして苦しい、痛みの伴う痛み止め。
恋っていいよな、本当に妙だし大変だけど。
そのことをしみじみと再体験させてくれる、素晴らしい物語だった。

帰り道でのぞみさんに会えて、物語のお礼を伝えることができた。
夜の懇親会では、のぞみさんの役を演じた女性と、
東京タワーを演じた男性にも会えた。

「素晴らしかったです。私も主治医が好きで好きで困っていたのです」
と伝えると、のぞみさん役の女性は
「私は実は、主治医とか総理大臣は好きにならないんです。
どっちかって言うと身近な人のことすぐ好きになっちゃう」と言ってた。

くぅー。そうですかぁ。と私はまた喜んだ。

この次に上映された作品、宇宙船の話
(「なんちゃって宇宙人ー山根耕平物語」)も素晴らしかったので、
忘れないうちに書いておきたい。
しかし今日は眠いのでハイライトをちょっとだけ書いて切り上げる。

身体に大きなUFOを装着した山根さんは,舞台から飛び出してきて,
客席の端から端まで横歩きで歩き,
そのぴかぴかした銀色の流線型のボディを,
みんなに見せつけてくれた。

なんちゃって宇宙人ー山根耕平物語の記憶あらすじ

私はこの場面でぼろぼろ泣いちゃった。
山根さんの頭の中にいたUFOは、
いまこうして劇でみんなの前で共有され、
ニコニコ横歩きで堂々と披露されている。
みんながみてくれている、ぎらぎらかっこいいUFO。
ほんとにある、ほんとになった。その存在感が嬉しかった。

急だけど今日のレポートはここまで。
べてるのみんなが発表してた自己病名についても考えている。
自分にも病名はいくつかあるけど、こうして書くことを通して、
もっと自分にぴったりくる、自己病名を見つけたい。

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