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『82年生まれ、キム・ジヨン』#15〈最終回〉:解説

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語注

육아 우울증 [育兒 憂鬱症] : 育児うつ/育児ノイローゼ

解説

下線部1はすでに #4 に出てきたので、そちらも参考にしてください。「そうでなくても」「ただでさえ」「やはり」など訳しようがありますが、ここは「ただでさえ」と意味をとっておけば問題ないでしょう。

下線部2はその直前から下線にすればよかったですね。すみません。まず -나/-ㄴ가 싶다(〜なのかと思う)がベースです。動詞の場合は -나、形容詞、指定詞の場合は -ㄴ가 が基本ですが、形容詞はどちらも使われ、話しことばではむしろ -나 の方が多いくらいです。싶다(〜したい)ではありませんので気を付けてください。 それで、-ㄴ가 싶다 に -다며 が付いていますが、これは -다고 하며(〜と言い)の縮約形です。引用にはこのように書きことばでよく -며 が使われます。

2, 3行目の 상의 [相議] と 상담 [相談] について。日本語で「相談」と言うとき、韓国語はなんと言うかという話です。韓国語では 상담 [相談] は専門家に相談することを言います。ただ、「恋愛相談」は 연애 상담 で大丈夫です。単に話し合いをする場合は 상의 [相議] や 의논 [議論] を使います。じゃあ「議論する」はなにかというと 논의하다 [論議-] ですね。ややこしい。

日本語訳

(以下はオリジナル訳です。多少ぎこちないところもありますが、原文を活かした訳文にしています。ぜひ翻訳版とも比較してみてください。)

まず、チョン・デヒョンさんがひとりで精神科に訪ねていき、妻の状態を話し、治療方法を相談した。自ら症状を自覚できないキム・ジヨンさんにはとりあえず、よく眠れなくてつらそうだからカウンセリングを勧めているんだと話した。キム・ジヨンさんはただでさえ最近気分が落ち込んで、何事にも意欲が湧かないから育児ノイローゼかと思っていた、ありがとう、と言った。

◎ 最後の 고마워했다 が意外にくせ者ですよね。わたしはキム・ジヨンさんの引用部分に組み入れてしまいました。

◎ 実はここの部分は翻訳版では、ある理由でちょっと違う訳になっています。訳者の工夫ですが、わたしはちょっとやりすぎかなとも思いました。みなさんはどのように読むでしょうか。

さいごに

 これまで15回にわたって "82년생 김지영" を解説してきました。最初に書いたように、この小説は内容も素晴らしいのですが、わりと淡々と書かれ読みやすいため、韓国語の勉強にも向いていると思います。文法を中心に解説したので割愛したところもありますが、特に第1章は親族名称や親族呼称、韓国の伝統文化や料理に対する理解も必要なため、ぜひじっくり原書を味わってもらえればと思います。この短い連載がそのきっかけになったら幸いです。


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