『82年生まれ、キム・ジヨン』#13:解説
語注
찰싹:ぴしゃっと
서방 [書房] :「婿や義理の弟の姓+서방」で呼称として使う。(キム・ジヨンさんのお母さんは 방 のところを長く発音するという癖があったのでしたね)
처가 [妻家]:妻の実家
찡긋하다:顔をややしかめる(キム・ジヨンさんのお母さんは右目をしかめる癖もあるのでした )
解説
1行目の "잡아 끌었지만"「つかんで引っ張ったが」ですが、日本語で表現すると、「つかむ」と「引っ張る」の間に切れ目があるような印象ですが、韓国語は "잡아 끌다" で一語のようになっています。このように動詞と動詞をつなげて複合語を作るパターンは「〜して食べる」にもよく見られます。(ソースなどを)찍어 먹다「つけて食べる」とか(サンチュとかに)싸 먹다「包んで食べる」とかいろいろありますが、大抵 찍어서 먹다 のように -어서 は使わないことが多いです。
2行目の "찰싹 쳐 떼 냈다" ですが、連用形 (-아/어) が並んでいてわかりにくかったかもしれません。쳐 のところは 쳐서(叩いて)と考えればいいでしょう。떼다 は「離す、はずす、除く」でそれに -어 내다(〜しきる)が付いています。떼 내다 は「離しきった」ということですけど、日本語にするなら全体で「払いのけた」でしょうか。
3行目と4行目に接続語尾の -다가 が出てきます。3行目は過去の -ㅆ- が入っていないので「〜ている途中で」という意味です。ちなみに "부산에만" の -만 は「〜ばかり」と解釈した方がいいですね。4行目は -었다 というように短い形になっていますが、-었다가 のことですね。 -ㅆ- があるので、過去というより完了で「〜してから…」という意味です。4行目は直訳すれば「お尻を一回つけてからそのまま行くし」ですが「ちょっと腰をついただけで行っちゃうし」のように訳したらどうでしょうか。그냥 は訳さなくてもいいようなときもありますが、「〜だけで」とするとうまくいくときがあります。
5行目の "그러고는" ですが、그러자「そうすると」などのように、1つの接続副詞と考えることもできますが、意味的には 그러다「そうする」と -고는 を合わせれば難しいことはありません。-고는 にはいくつか意味があるんですが、主に3人称の主語が「〜すると」という意味を表すことがあります。例を挙げておきましょう。
例)그들은 가게 불을 끄고는 밖으로 나간다.
「彼らは店の明かりを消すと、外へ出る。」
ということで、그러고는 は「そうすると」と解釈すればいいわけですね。
最後の解説はsayuさんが解釈に挑戦してくださった記事(https://note.com/sayu_wintersweet/n/na840263d4541) を参考にしました。ありがとうございます。
日本語訳
(以下はオリジナル訳です。多少ぎこちないところもありますが、原文を活かした訳文にしています。ぜひ翻訳版とも比較してみてください。)
チョン・デヒョンさんが急いで妻の手をつかんで引っ張ったが、キム・ジヨンさんはその手をぱっと払いのけた。
「チョンさーん、あなたもよ。毎回祝日の連休の間ずっと釜山にばっかりいて、うちにはちょっと腰を下ろしただけで行っちゃうし。今回はもうちょっとはやく来なさいよ。」
そうすると、また右目をしかめた。